今週開催されるUEFAの主催試合では今回の震災への黙とうが行われ、日本語でのメッセージが掲げられている。
日本にいるものとして、とてもうれしい気持ちになる。ありがたい。
さて、ようやくジンクスを打ち破ったリヨン戦を振り返ろう。
■マドリーの先発メンバー
GK:カシージャス
MF:ケディラ、シャビ・アロンソ:ディマリア、エジル、ロナウド
FW:ベンゼマ
73分:ロナウド→アデバイヨル、78分ディマリア→グラネロ、83分:ベンゼマ→ラス
定番の11人で4-2-3-1を作ることができた。大一番ではこれが一番信頼できるということだろう。
■リヨンの先発メンバー
GK:ロリス
DF:レベイエール、クリス、ロブレン、シソコ
MF:トゥララン、シェルストレーム;ブリアン、グルキュフ、デルガド
FW:リサンドロ・ロペス
46分:ブリアン→ゴミス、68分:グルキュフ→ピエ、80分:→デルガドピャニッチ
クリス、シソコ、グルキュフ、リサンドロ・ロペスといった負傷者がきっちり復帰してきた。
バストスがいない分、ちょっと楽だが、それでも難しい相手。
■左サイド対決
立ち上がりは、両チームともガチガチ。失点すると難しくなるのはお互いさまなのだが、その意識が強く出すぎて、下らないパスミス、ちょっとしたズレが頻発した。
そんな中、ボールポゼッションを高めたのはリヨン。ただ、それがリヨンの思惑通りだったかは判断が難しいところ。
マドリーに対するリヨンの良さは、良い奪い方をしてからのカウンターの鋭さにあって、ある程度マドリーを引っ張り出しておく方がリヨンにとってはやりやすかったはず。
第1戦での1-1という結果により、リヨンが攻めざるを得ない状況、少なくとも心理的には守ってカウンターをさせづらい試合にさせたことは、とても大きかった。
そして、マドリーもセットプレーの後などでカウンターを受けそうになったら、ケディラや両センターバックを中心にさっさとファール覚悟のつぶしをきっちり実践。
ペペ、カルバーリョが早々にイエローを受けたのは誤算だったが、それでも早めにつぶしていけたことで、リヨンのペースを乱すことはできた。
マドリーの攻撃の中心は左サイド。
とはいっても、ロナウドではなく、マルセロの果たす役割が大きかった。
中へ絞って、ロナウドやエジルと絡むプレーを選択することが多いマルセロは、捕まえられてしまうと、サイドに穴を残すだけになってしまうが、周りとの関係がうまくいき、スルスルとプレーできればなかなか止められない。
一方のリヨンもシソコとデルガドの左サイドがカギになる。
シソコがかなり高い位置を取ってデルガドと連携するため、セルヒオ・ラモス一人では当然守れない。
よって、ディマリアが下がってくることになるが、ここで簡単に飛び込んでしまう場面が前半何度か。
シソコに軽くかわされてからの一連の流れは危険。
互いの左サイドがいかに機能するか、というところがテーマになった前半だが、上回ったのはマドリー。
36分、マルセロがロナウドとのワンツーでリヨン最終ラインを翻弄。ワンタッチ目でクリスをかわし、さらにシュートフェイントを入れる落ち着きを見せて、ゴール。
FW顔負けのゴール前の落ち着きで貴重な先制点をもたらした。
この場面、リヨンの守備陣は人数は揃っていたが、間を縫ってきわどいワンツーを完成させたマルセロ&ロナウドが一枚上手だった。
サンチャゴ・ベルナベウの雰囲気も良く、一気に畳みかけたいような姿勢を見せたマドリー。
前半の終わり頃は、スペースを作っても2点目を取りに行くような形を作っていたが、結局1-0のまま45分終了。
リヨンはカウンターがうまくいかず、かといってポゼッションで中心となるべきグルキュフが試合から消えてしまっているため、効果的に攻撃できていない。
序盤こそドタバタしたが、その後はマドリーが盛り返して先制に成功した45分だった。
■マドリーのための45分
リヨンは後半頭からブリアンに代えてゴミス。右サイドがうまくいっておらず、マルセロに好き勝手やられているので、選手を代えて牽制する意図。第1戦でゴールを決めているゴミスに期待する面も当然あるだろう。
早めに交代策を施して、先手を打ったのはリヨン。
だが、マドリーはリヨンを上手に押し込んだ。今朝は、ポゼッションで相手を下げさせた時に、下手な取られ方をしなかった。そのことで、リヨンはボールを前に運ぶために難しい手段を取らざるを得なくなり、結果、マドリーがセカンドボールを拾う確率が高まった。
拾った後はシャビ・アロンソが的確に展開することで、リヨンの守備陣を揺さぶり、ジャブをどんどん打ちこんでいく感じとなる。
これまでのリヨンならば、ここからカウンターの脅威を示すことでマドリーの攻撃を鈍らせてきたのだが、放送でも言っていたように、今朝はリヨン守備陣が「支援がないまま守っている」状態に追い込んだ。
交代で出場したゴミスも、リサンドロ・ロペスも、デルガドも、有効な攻撃を作ることができないまま、マドリーの時間帯が長く続いた。
前半はほとんど上がらなかった、セルヒオ・ラモスまでオーバーラップできるほどの余裕があった。
そしてミス。
レベイエールの縦パスを前でインターセプトしたマルセロのフィード。エジルがロブレンと競ってつぶれ、こぼれたところにベンゼマ。
抜け出したあと、落ち着いてコントロールし、ロリスの股間を抜くシュートを決めて2-0。
レベイエールの安易な縦パス、エジルがロブレンと競ったあと、すばやく反応したベンゼマに対し、緩慢だったリヨンのセンターバック陣。
いくつものミスが重なり、それを見逃さず決められるベンゼマがいたおかげで追加点を奪うことに成功した。
その後、ふわふわしたリヨンの最終ラインをつき、ロングボールをうまくつないで、最後はディマリアが得意のループを決め、3-0として勝負あり。
後半は完全にマドリーペースのまま45分を過ごし、ようやくベスト16の壁を破ることに成功した。
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後半の2得点はリヨンの守備の悪さによるものではあるが、それを誘発させるまで、特にマドリー相手には抜群の集中力を見せてきたリヨンの守備陣にミスを起こさせるまで、ペースをつかんで離さなかった後半の出来栄えは本当に素晴らしかった。
後半に限ってみれば、グルキュフもリサンドロ・ロペスも、まったく問題にはならなかったのだから。
また、そうしたチャンスをきちんとゴールに結びつけた攻撃陣の良さ。
特にベンゼマの落ち着きぶりは、目を見張るものがある。狭いところでの足元の良さ、難しいボールでも枠に持っていく技術、体を使ってのキープ、どれを取っても、このレベルでやれれば先発は動かしがたい存在になる。
うまい選手が強引にゴールを狙えると、見ていて面白い。自信を持ってボールを扱い、走っている。この後も楽しみな存在に、この数週間で一気に化けた。
マルセロを筆頭に、各選手がそれぞれの役割をきっちり果たした試合だったと言っていい。
こういう試合展開を確実に作ることができれば、なかなか良いところまで行けそうである。
■抽選は18日
準々決勝の組み合わせ抽選会は18日に行われる。
久しぶりのベスト8、しかも良い内容での勝ちあがりなので、より良い試合を期待してしまう。
が、とにかく勝ちあがることが重要な大会だ。どこと当たっても、お祭りムードではなく、勝ちあがるためのチームであってほしい。