移籍期間最終日。
ベイルとの契約以降報道のあった通り、マドリーはエジルについてアーセナルと合意したことを公式に発表した。
エジル本人はマドリーに残留する意向があったとも報じられていたが、アーセナルのドイツ人選手達の説得もあったようで、最終的には移籍に合意した。
移籍金は、アーセナル史上最高額の支出であると同時に、マドリー市場最高の収入となる4500万ユーロから5000万ユーロ。エジル自身は5年契約を結び、800万ユーロほどの年俸を受け取ることになるとのこと。
以前から何度か触れているように、エジルにはゴールを決められそうだという怖さがなかった。もちろん技術はあるし良いパスは出せるのだけれど、自ら決めそうな脅威はディフェンスに与えられていたわけではなく、そのために本来のうまさが十分に発揮できていないと考えていた。パスだろうと思ったらやっぱりパスだった、という場面を何度も見てきたのである。
ただ、イスコが入ってきたことと、監督が変わったこともあって、スタイルを変えようという雰囲気が見られた。降りてきたベンゼマと入れ替わってラインの裏に飛び出すプレーは、モウリーニョ期には決して見られなかったものだ。
その点、この先の彼のプレーが良くなっていくのをマドリーで見られないのは残念ではあるが、ベイルもやってきて、ほぼ間違いなく控えになる状況を考えれば、本人にとっては良い移籍だろう。また、大きな移籍金を残してくれたことはクラブにとってもプラスだ。
この移籍で驚かされたのは、アーセナルが久しぶりに大枚を叩いたことと、最終日にもかかわらずバーゲン価格にならなかったこと。
マドリーが最終日に選手を売却するといえば、多くの場合登録できない余剰戦力で、間違いなく買い手が強い立場になるのだが、このタイミングでの移籍で4500万ユーロも払わせることに成功した交渉は評価されるべきだろう。
■フォワードには手をつけず
最終日とはいえ、大きな移籍金が入るめどが立ったことで、フォワードの補強に向かうかと思われたが、結局何も起こらなかった。
実際に手を伸ばしたかどうかは定かではないが、スアレスの名前は少し報じられただけ。今オフ、各国のリーグで得点王になるレベルの選手達(レバンドフスキ、カバーニ、ルーニー)に移籍の噂が立ち、あるいは実際に移籍したが、マドリーはイグアインを放出し、その穴を完成した選手で埋めることはしなかった。
ベンゼマをファーストチョイスに、ヘセ、モラタが2番手を争う形だが、試合の中でロナウドがトップに上がることもあるといったところ。
ベンゼマが負傷でもしたら実績のない若手2人のみとなり、時期によっては非常に苦しいやりくりを迫られることになる。
ただ、慌てて中途半端に予算を使うメリットもあまりない。
負傷して駒不足となる怖さはあるが、最終日にバタバタと決めるよりは、じっくりと交渉できるタイミングを図るほうが良いかもしれない。
負傷者が出るかどうか、下手に出ざるを得ない交渉に乗り出して獲得した選手がうまくいくかいかないかは結果論であり、後からではどうとでも言える。この最終日の判断が間違いだったと騒がれるようなことにならないことを切に祈っている。