レアルマドリードのある生活

レアルマドリードの応援日記。試合中心にお送りします。

悲観的にならざるを得ない監督後任候補の報道

アンチェロッティの解任が間近だという。こうした話題の常ではあるが、各メディアは解任を前提とした後任候補を連日伝えている。

今シーズンの総括記事の前にではあるが、このことに関して言えば、今シーズンの結果は当然ながら昨夏のオフから地続きのものであって、監督だけの責任に帰するのは余りにも酷だと考えている。

それでも成績不振(今シーズンの結果を不振というならば、だが)を理由に監督を替えたいとフロントが考えるなら、会長選挙となってしかるべきだろう。何しろ、ペジェグリーニモウリーニョアンチェロッティ(現時点で未定ではある)と、現ペレス政権が招聘した監督とはことごとく円満に契約を終えられていない。フロントの無策、場当たり的対応はマドリーの伝統となってしまっている。今回も同様のことをしようというならば、また監督を替えて新シーズンに臨むべきか否かをソシオに問うべきだと考えている。

しかもアンチェロッティの公認候補筆頭がベニテスだというから驚きだ。マドリーにふさわしい理由より、ふさわしくない理由の方が簡単に考えられる、といっても良いような人選という他ない。

まず、確実にタイトルを義務付けられるようなクラブでの実績に乏しい。

リバプールでは’04~’05シーズンにミランとのあのイスタンブールでの決勝を制しCLを制覇したが、その後はぱっとしない。インテルではモウリーニョの後をうまく引き継ぐことができず半年で解任、その後チェルシーと契約したものの暫定で半年のみ。ELを制した後はナポリと契約し、現在に至っている。

タイトルはそこそこ獲得しているが、マドリーのような規模のクラブでは失敗が目立つと言わざるを得ない。期間としても、インテルの半年とチェルシーの半年くらいであり、経験があるというには短すぎる。

かつてビジャレアルから招聘してきたペジェグリーニも、最後にはビッグクラブでの経験不足をフロントから指弾され、解任となっている。監督人事に整合性があるのならば、ベニテスも同様にふさわしくないと考えるべきではないだろうか。

実際のところ、実績があるかないかは重要だ。

チームをまとめていくには、チームを引っ張る材料がなければならない。現役時代の輝かしい経歴で現役のプレーヤーに言葉を届かせる監督もいれば、監督としての実績で信頼を得る監督もいるだろう。

ベニテスにはそのどちらもない。現役時代は2部や3部でプレーしていた彼は、監督としての経験や実績でチームを組織しなければならないが、インテルチェルシーでの経過を考えると無理がある。

他のクラブならばうまくやれるかもしれないが、プライドが高くそれぞれに強い考えがあるマドリーのトップチームの面々を同じ方向に向かせるのに十分なものとはとても思えない。まして、信望の厚いアンチェロッティの後任としてやってくるのであれば、よほどうまくコミュニケーションを取らないと、チームをまとめることはできないだろう。

アンチェロッティの短所であるローテーション不足については、ベニテスならきちんとやるだろうと考える向きもあるが、ペレス会長の下でそれをやれるかというと、控えめに言っても非常に怪しい。

仮にペレス会長以下フロントの同意があり、ローテーションを行うにしても、チームの信頼があってこそ。主力を下げても不満が外に出ないるだけの関係性が求められる。その点についても、すぐにそうできるとは考えられない。

あれだけの実績を引っ提げてきたモウリーニョでさえプレーヤーの取り扱いを間違って破綻するようなチームである。何もない状態から思い通りにチームを動かすのはほとんど不可能だろう。

ベニテスの戦術云々の前に、チームマネージメントの面でこれだけ不安がある状況で、彼に積極的にマドリーを任せたいとは、私はとても思えない。

クロップやレーブ、モウリーニョ(!)といった当代きっての監督が後任として報じられており、経験があり今を代表するような人物を監督におきたいはずのペレス会長が君臨する状況で、このように少し経歴が劣るベニテスがその筆頭と言われることには大きな違和感がある。彼を強く推しているというホセ・アンヘル・サンチェスGMとの間にどういう関係があるのかはわからないが、近年ビッグクラブでの経験や実績が乏しい彼が推されるのに理由があるとすれば、現役時代もマドリーのカンテラでプレーし、マドリーのカンテラから指導者になったというその出自だろうと考える。

バルセロナグアルディオラルイス・エンリケと自前の監督で成功を収め、タイトルを獲得しているのに、マドリーは外部の監督に頼っている。プレーヤーのスペイン化やカンテラーノスの起用はそれなりにできた、次は監督で、そろそろ自前の監督と言える人物でやりたい、とフロントが考えてもおかしくはない。そのために多少問題があっても良いから出自を優先する、というようなことは彼らならやりそうなことだ。

そうした考えだとすれば、先々の動きも推測できる。

ベニテスは1シーズンか長くて2シーズンのつなぎであり、恐らくその先はイエロやジダン・・・現役時代もスターであったマドリディスタが監督としてマドリーのトップチームを率いる、そう、バルセロナにおけるグアルディオラのように。

そうした目論見が成功すれば何も言うことはない。

だが、そのつなぎのシーズンでもマドリーはタイトルを獲得しなければならないのだ。近い将来ロナウドがいなくなるであろうチームをどう世代交代させていくか、といった課題にも取り組みながら、タイトルを取れなければならない難しい仕事が待っている。夢見がちな見通しでやり繰りがつくようなところではない。

誰が来シーズンのマドリーを率いるにせよ、私のこうした悲観的な予測を打ち消すような躍進で、後ろ向きなであったことを詫びなければならないようななシーズンになってくれれば文句はない。その時は外れた予測を喜んで訂正したい。

しかしながら、今盛んに報じられていることからは、そうした嬉しい誤算が生まれそうな雰囲気は何も感じられないのだ。このままでは、辛いシーズンが待っているとしか思えない。