何の驚きもない監督交代だ。
1月4日に招集された役員会でベニテスの解任が決定され、同時にカスティージャの監督を務めていたジダンのトップチーム監督就任が発表された。
ベニテスは、こちらで書いた通り立場が非常にまずくなっており、解任は時間の問題とも思われていたし、後任についても、外部でこのタイミングで引き受けてくれそうな監督がほとんどいなかったこともあって有力視されていたジダンと2年半の契約と、予想されていた通りの動き。
最初に書いた通り何の驚きもない交代劇となった。
驚きがなかったといえば、ベニテスの仕事ぶりについてもそうだ。
アンチェロッティがマドリーを離れてから書いたこちらの記事でも指摘したとおり、彼にはプレーヤーとしても監督としてもマドリーのプレーヤーを統率するだけの実績がなく、(もちろんそれだけが理由ではないだろうが)やりたいことをプレーヤーとともに形にすることはできないまま。
悲観的な予想を覆すことはできず、昨年夏に多くのマドリディスタの悪い予想をそのまま現実のものとしてしまった。
ベニテスのマドリーに対する思いは本物だったと信じているが、現実の仕事としては全くうまくいかないまま、約半年で関係は終わりを迎えることとなった。
今後の監督としてのキャリアはなかなか難しいものになるが、相応の立場での活躍を祈りたい。
後任のジダンについては、プレーヤーとしてのキャリアは説明など必要ないだろう。
マドリーではアドバイザー、SD、アンチェロッティのアシスタント、カスティージャの監督といった立場で仕事を続けてきた。
彼のキャリアを考えれば、ベニテスよりはプレーヤーたちの敬意が払われるだろうと考えられる。意思疎通は容易になるだろうし、ほど良い距離感の関係を築くこともできるだろう。その点はベニテスができなかったことでもあり、彼が就任する大きなメリットの1つだ。
一方で、指導者としてのその他の面での力量は未知数。
どう長く計算しても彼の指導者としてのキャリアは2年半程度とまだまだ新米の域を出ない。誰もがグアルディオラを想像するが、彼は特殊な例であり、「名選手必ずしも名監督にあらず」と言われるように、一般的にはうまくいくことの方が少ない。
プレーヤーとしてのあまりにも輝かしいキャリアがある分、求心力はあると思われ期待が高まっているが、逆に言えばそれだけしかはっきりした良い材料はないとも言える。
ただ、少なくとも夢のある監督就任ではあるので、プレーヤーと良い関係のチームを作りながら、うまく指導していってくれればと祈っている。
最後に、ジダンへの期待と注目でペレス会長の責任について触れておきたい。
アンチェロッティとの契約を解除し、ベニテスと契約した時から監督人事の問題点は指摘されていたし、もっと言えば彼の在職中の多くの監督交代についても同様で、一向に方針に変化が見られない。
今回は後任がジダンであることで、何となく明るい雰囲気となっているが、本来的には半年で監督交代となるなどあってはならないことであり、ロペス・カロの就任といったような事例と同じように扱われておかしくない事態だ。
昨夏アンチェロッティを手放し、マドリーを率いるに足らなかったベニテスと契約した責任は厳しく問われるべきである。まずは会長選挙でソシオの審判を受けるべきであろう。
何はともあれ、シーズンは途中。
不安は尽きないが、ジダンが自身のメリットを生かして良い監督へと進歩していき、マドリーをより高いレベル、最終的にはタイトルへと導いてくれればと切に願う。