話は少しさかのぼるが、今シーズン末で契約満了となるアルベロアが、契約を更新せず退団することを発表、リーガ第37節のバレンシア戦での出場が、マドリーでの最後の公式戦出場となった。
カンテラーノであるアルベロアがリバプールから移籍してきたのは’09~’10シーズンのこと。以来234試合に出場。攻撃面で物足りなさはあったものの、守備面では非常に堅実で、この間に在籍したサイドバックの中では最も安心して見ていることができたプレーヤーの1人だ。
また、セルヒオ・ラモスをはじめ、感情が前面に出るプレーヤーが並ぶ中、熱意は内に秘めながら淡々と仕事をこなす様は異彩を放っており、先発はせずとも存在感は大きかった。
経験豊かで、右サイドバックだけでなく左もでき、緊急時にはセンターバックも務めてくれる彼がいてくれることで、チーム作りは非常に楽になった。彼のように計算が立ち、複数のポジションをこなせるプレーヤーを欲しがらないクラブがあるだろうか。
歳を重ね、徐々に出場時間を減らしていく中、今シーズン途中にも「ベニテス就任時、出場機会をある程度約束してくれたので残ったのに」との話が出たように、これまでも移籍は考えたはず。彼ならば、もっと出番があるクラブはいくらでもあったはずだ。
それでも、これまで不満を漏らすことなく続けてきてくれたことに、感謝は尽きない。
モウリーニョ末期からは、プレーヤーとしてだけではなく、様々な場面での言動が注目されるようになった。
カンテラーノらしくクラブを第一に考えていた彼の言動は、時に原理主義的でもあったように思うが、入れ替わりが激しいチームにあって、マドリディスモを示す良い手本となっていたように思う。招集外となることが珍しくなくなっても、クラブに誇りを持ち、仕事に徹してくれる姿勢がチームメイトに与える影響は大きかっただろう。
本来であれば、カシージャスにはこうした形で、役割を変えつつクラブに関わり続けて欲しかった。カピタンである彼がそうした形を取れず、様々な事情で移籍してしまったことは返す返すも残念だったし、その思いは今も変わらない。
だが、一度移籍しての出戻りであるため、カピタンにはなれないものの、カンテラーノとしてマドリーでの経験が長いアルベロアがその役割を肩代わりしてくれ、そのことで、マドリーは一般に言われるような寄せ集めではないチームになれたのだった。
少ない時間でも出場すれば計算できるプレーヤーであり、ピッチにはおらずともマドリーの何たるかを語ることができる。
こうしたベテランがいることの意義は言うまでもない。クラブにとって、チームにとって、理想的なキャリアの重ね方をしてくれた。
チームのことを考えると引退までいて欲しい。しかし、いつまでも彼に頼ってもいられないし、プレーヤーである以上ピッチに長く立ちたいであろう彼を、クラブのためにといつまでも縛り付けておくのも忍びない。
幸いにもCLを制し、良い形で送ることができるタイミングとなった。スペインからは離れることを明言している彼が、プレーヤーとしてもう一花咲かせられることを願っている。
そして、いつかまた違う立場で、マドリーに帰ってきて欲しい。