遅ればせながら、アラベス戦を振り返る。
■マドリーの先発メンバー
GK:ケイラー・ナバス
DF:ダニーロ、バラン、ペペ、マルセロ
MF:クロース;コバチッチ、イスコ
24分:ペペ→ナチョ、66分:ベンゼマ→モラタ、87分:ベイル→ルーカス・バスケス
インテリオールはコバチッチとイスコの組み合わせ。
■アラベスの先発メンバー
GK:パチェコ
DF:キコ・フェミニア、アレクシス、フェダル、ラウール・ガルシア、テオ
FW:カマラサ、デイベルソン
62分:マヌ・ガルシア→クルスティチッチ、66分:エドガル→カタイ。83分:ダニエル・トーレスクリスティアン・サントス
ここまで勝ち点10。しかし、アトレティコと引き分け、バルセロナに勝っている。しかもともにアウェイ。侮れないチームだ。
■アラベスの理想通りの形からスタート
アラベスは5-3-2。
マドリーからレンタルされているマルコス・ジョレンテは、ここまで8試合に出場と中盤で必要な戦力になっているものの、契約により出場できない。それでも、しっかりブロックを作って2トップを中心としたカウンターを仕掛ける定石通りの形は徹底されていた。
以前書いたように、カゼミロを欠いている中盤は攻撃的なプレーヤーしかおらず、守備の力によって無失点で終えることは難しい。いっそのこと攻撃に力を注ぐことで相手にプレッシャーをかけていく方が望ましい状況であると思っている。
カゼミロの招集リスト復帰もなっていない現状では、その考えは変わっていないが、それでも、同じ失点にしても許容できるものとできないものはある。
この試合での先制点は、もちろん後者。
7分という開始早々の時間帯に、相手の理想通りの形で速攻を受けてしまったことで、アラベスは確信を持ってプランを遂行するようになった。
もともと既にアトレティコとバルセロナから勝ち点を挙げているチームで、マドリーとの試合でも下手に出るようなメンタリティではなかった。それに輪をかける形で先制点を献上することになり、アラベスの精神的な強さを高まらせることとなってしまったのだった。
こうなると面倒なのは当然のこと。そうならないために、早い時間に先制点を与えるようなことは何としてでも避けなければならない。守備の不安はあっても、その程度のリスク管理はしてほしい。
この失点の基点となるボールロストはダニーロ。
最も目立つミスをしてしまうあたりが、彼の不運なところ。もちろんこのプレー自体はいただけないし、対面するテオにはスピードを生かして何度も突破されていたが、全体としてアラベスのプレスに対して不安定な出来だったのも事実。その中で、彼がいかにも叩かれやすいミスをしてしまうことに同情を禁じえない。
昨シーズンでさえ、報道が与える印象よりはずっとまともにプレーできていたし、今シーズンはよりチームに馴染んで、右はもちろん本職ではない左でもまずまずのプレーをしてくれている中で、またこうしたプレーをしてしまったのは惜しい。
マドリーは17分、フリーキックが壁に入っていたデイベルソンに当たった際のハンドを取ってくれ、ペナルティ。ロナウドが決めて追いついた。
手に当たっていたかは怪しく、アラベスとしては何とも不運な失点。ただ、手を上げる行為は厳しく見られがち。当たっているかどうかが微妙であればハンドを取られてもやむを得ないとも言え、不用意なプレーではあった。
24分、ペペが筋肉系の負傷でナチョに交代。せっかく追いつけたところで、不安になる交代となった。
だが33分、左サイドでベンゼマのためからロナウド。エリア外から放ったシュートが相手に当たり、いい高さに変化してゴールに吸い込まれた。ベンゼマのところは危なっかしかったが、良くキープしロナウドに繋いだ。
ロナウドはらしいシュートを枠内へ放った。同じ得点とは言ってもペナルティではすっきりしないが、これでようやく楽になっただろう。
こうしたシュートを何度しても枠外へ飛んでいたが、ちょっとしたことが合えばいい。疲労はあっても、「衰え」という言い方は適当でないことを示した。
■後半も危ないところから
後半開始早々のプレーでアラベスに決定機。完全に抜け出されたが、ここはナバスがいいタイミングで飛び出してセーブ。
またも悪い時間帯に悪いプレー。追いつかれていれば試合の行方はわからなくなっていた。前半同様、こういうところのリスクを抑えるようにプレーしないと、自分達で苦しい状況を作ることになってしまう。
1点差の気が抜けない展開が続く中で、良かったのはコバチッチとナチョ。
コバチッチはモドリッチの離脱以降、よく穴を埋めてくれている。この試合でもするすると持ち上がるプレーで攻撃を作っていた。速さもあって、ディフェンスとすればスペースを作らないような寄せ方を考えなければならない面倒なプレーヤー。良いところに顔を出して、ボールを運んでくれていた。
ナチョは急遽入ることとなったが落ち着いたプレーで、混乱を最小限にとどめた。こうした試合ですんなり試合に入るのは、なかなかできることではない。ベテランのような仕事ぶりだった。
ペペは1か月半程度の離脱となったので、ナチョのこうした落ち着きが、より求められることになりそう。
80分過ぎまで拮抗した試合を作ったアラベスの力は素晴らしく、開始早々の場面も含め、何かあれば一気に流れを変えられそうな雰囲気はずっと続いていた。
84分のモラタのゴールで2点差とし、ここでようやく勝負あり。モラタはまたも途中交代でゴール。マルセロの素晴らしいボールに反応し、パチェコのポジションを良く見てループで決めた。
モラタは途中出場で得点を続けている。得点できるポジションに継続して出て行っているのが大きな要因で、そこでプレーするようになって、しかも冷静でいることが、以前とは異なる点。以前は、そういう局面にあまりいられなかったし、いてもいかにも不安そうだったものだが、変われば変わるものだ。
プレシーズンにはマリアーノと競るような序列になるかと思っていたが、今やベンゼマの立場を脅かし得る存在となっていて頼もしい。シーズン後半に向けて、どうなっていくか楽しみだ。
ベンゼマについてフォローしておくと、ゴール数は少ないが、状態は上向いている。シーズン開始まもない時期は、ボールに関与すること自体が少なかったため、ロナウド、ベイルと絡んでのプレーができていなかった。
この試合の2点目でも見られたように、前線でためて両翼や中盤を生かすプレーは増えている。さすがに今すぐにモラタと序列を入れ替えることはないだろうと思われる。
最後は88分、ロナウドがマルセロのパスを受けてからエリア内で相手をかわしてコースを作って決め、4-1。ロナウドはハットトリック。ペナルティの失敗もあったが、流れの中の2ゴールで、ペナルティよりもずっと良いイメージを残した。
■最後に
決して良い出来とは言えないながらも勝利。ロナウドが決めたことで、彼もチームも落ち着きを取り戻せそうで良かった。
マドリーの4得点という数字は、試合内容を反映したものとは言えず、アラベスの頑張りが強く印象付けられた試合となった。マドリーはこの試合をいい教訓とし、メンバーに不安はあっても、最低限のラインはクリアするようにしたいところ。
良いようにやられてから盛り返すのは、どんなに力の差があっても難しい。同等以上の相手なら尚のことだ。ここはしっかりしたいという場面は抑えていけるよう、チームとして統一を図れるようになってほしい。