レアルマドリードのある生活

レアルマドリードの応援日記。試合中心にお送りします。

リーガ・エスパニョーラ第12節 vアトレティコ

CL等で当たらない限りはビセンテカルデロンでの最後のデルビー。マドリーにとって不安要素が多い状況でどう戦うか、というのが最大のテーマとなった。

■マドリーの先発メンバー

GK:ケイラー・ナバス

DF:カルバハル、バラン、ナチョ、マルセロ

MF:ルーカス・バスケスモドリッチコバチッチ、ベイル

FW:イスコ、ロナウド

80分:イスコ→ベンゼマ、83分:ロナウドハメス・ロドリゲス、86分:ルーカス・バスケス→アセンシオ

ベンゼマは先発せず。イスコを前線に近い位置に置き、両翼をルーカス・バスケスとベイルとする4-4-2とした。

アトレティコの先発メンバー

GK:オブラク

DF:フアンフラン、サビッチ、ゴディン、フィリペ・ルイス

MF:サウール、ガビ、コケ、カラスコ

FW:トーレス、グリースマン

62分:トーレス→ガメイロ、ガビ→コレア

グリースマンは問題なく先発。

■布陣の変更、メリットとデメリット

マドリーはベンゼマに無理をさせなかった。そして、空いたトップの位置にイスコを使い、ルーカス・バスケスとベイルの両サイドという選択。

これには3つ理由がある。

まず、ロナウドとベイルの2トップに良い印象がまったくなく、できれば避けたいということ。彼らのスピードを生かす意図で最前線に置こうという試みは何度かなされているが、ことごとく機能していない。前残りが顕著になって孤立するし、中盤より後ろも縦に速いプレーを意識しすぎて、ロングボール一辺倒になってしまうからだ。

そのため、タメと攻撃の変化を付けるようイスコを高い位置で使い、前線が分断されてしまうことを回避した。

このことで、両翼は本職のルーカス・バスケスとベイルとなった。彼らにサイドのスペースを埋めるよう徹底させることで、両サイドの守備のバランスは磐石なものとできる。

これがBBCの先発となると、BBC以外の4-3で守ることが増え、サイドを突かれて守備にずれを生じることになってしまう。

ベンゼマがいないことを逆手に取り、攻守に走れるルーカス・バスケスロナウドよりは守備に戻ってくれるベイルで両サイドを埋めて、手堅くプレーしようとした、というのが2つ目の理由。

3つめはイスコの守備時の動き。

守備時はロナウドを残し、イスコも下がってプレーするので、4-4-2というよりは4-4-1-1と言うべき形となる。この時、2列のブロックの前のイスコがアトレティコのボールの出所に合わせて守備に参加するので、数的不利となりづらい。

また、ボールを奪った後に運ぶ役目にも移りやすく、場合によってはコバチッチやモドリッチとポジションを入れ替えることも出来るので、カウンターへの移行がスムーズになるし、守備の穴も塞ぎやすくなる。

ただ、問題はこの布陣が付け焼刃であること。

タイミングとしても代表戦明けであり、それほど長く練習時間を取れたわけではない。こうしたメリットが絵に描いた餅となり、噛み合わないままにやられる、というリスクは普段どおりのやり方で臨むよりも高まる。ジダンは難しい状況の中で、こうした変化によるメリットを得るためにリスクを負った。

その意味で、アトレティコにとっては前半がチャンスで、マドリーが慣れない布陣に手こずる間にアトレティコは思うようにプレーする、という展開にできる可能性も十分あったはずだった。

ところが、ここ最近、特にトーナメントで当たった時にやられたような守備の強さはなく、マドリーは良い形で手応えを得て試合に入って行くことができた。

マドリーがサイドのスペースを埋めていたので、サイドから良いクロスを入れる形を多く作れなかったということはあるにせよ、高い位置で組み立てを阻害したり遅らせて撤退したりする守備の速さや判断、セットプレーでの迫力といった部分では、想定していたよりずっと緩かった。

前半に厳しく来られていたら、全く違う試合展開になっていたのではないだろうか。マドリーにとっては、イスコを中心にボールを動かす中盤が良いリズムでプレーでき、調子を上げることができて幸運だった。

■先制

良い流れで試合を進めていたマドリーは23分に先制に成功。

ロナウドフリーキックが割れた壁に当たってコースが変わり、オブラクも届かずゴールに入った。

少し遠めで蹴りやすい距離だったとはいえ、ロナウドフリーキックの確率が低いことは明らか。壁を越えて決まったのはいつ以来だろうか、と思ってしまうほどだ。アトレティコとすれば、ピンチになり得る場面ではあるが、普通に守れば問題にはならないであろう場面だった。

それが、壁が割れたことで、そこにボールが飛び、僅かに当たってちょうど良いコースに変化する、ということになってしまった。

偶然が重なったゴールではある。だが、だからこそ逆に、ここまでの流れを浮き彫りにした。

先制したことで、マドリーは4-4-1-1での守備とそこからのカウンターに自信を持てた。こうなると、俄然やりやすくなってくる。

前半のうちに2点目とはならなかったが、この形で行けると確信できる試合展開。アトレティコに盛り返すような場面を与えない守備と、イスコを基点とした攻撃で主導権を握っていた。

モドリッチコバチッチのクロアチアコンビは秀逸な出来。低い位置での繋ぎにミスはほぼなく、狭い局面でもうまく前を向いて抜けていく。最低でもファールをもらってマイボールを継続できていた。守備でも2人とも集中してプレー。競り合いで負けずに、中盤を支えていた。

アトレティコの改善

後半に入り、アトレティコはプレーの強さの面でかなり改善が見られた。

高い位置の守備や球際といったところで、本来の水準に近いプレーを取り戻し、マドリーは後手に回ることになった。

戦術面では、動き回るグリースマンとサイドの関係が修復された印象。サイドでの攻撃を完結させ、中央で待つべき人が待つ、ということができるようになり、前半は問題ではなかったサイド攻撃とクロスが脅威となりだした。

また、サイドだけでなく、狭いながらも中央もコケが使うようになったことで、マドリーの守備は的を絞りづらくなった。

この時間帯をとにもかくにも無失点で凌げたことが大きかった。

ラインはギリギリ高さを保ち、バイタルを開けずに我慢。4-4-1のブロックでうまく対応した。

最終ラインにはセルヒオ・ラモスもペペもいなかったが、バランとナチョが落ち着いてプレー。特にナチョは体を張った守りで最後のところをやらせなかった。

良い時間帯を作ったアトレティコは、押し切るために攻撃に注力する。

62分、トーレスをガメイロ、ガビをコレアに交代した。フォワード同士の交代である前者はともかく、バランスを取れるガビを下げてコレアを入れた後者は、大きな変化となった。

マドリーは交代枠を使わず耐える。ロナウドもイスコと同じ高さまで下がる場面も出てきて、何とかして守ろうという格好に。

昨シーズンのCL決勝では、同様の展開となって結局同点ゴールを許した。あの時はサイドをあっさり突破されたが、この試合では同じ轍は踏まず、突破されてもカバーが入って、楽なプレーをさせなかった。

我慢を続けるマドリーの光明はカウンター。ガビを下げたアトレティコのバランスは崩れており、良い形でボールを前に運ぶチャンスがあれば、ゴールに迫れる可能性が高まっていた。

そうした中、70分に大きな判定。

オブラクのボールをバランがアトレティコのラインの裏へ跳ね返し、これをロナウドとサビッチが並走して追う。サビッチは先に足を伸ばしクリアしようとしたが空振り、上がった足にロナウドが接触して、ペナルティとなった。

サビッチはボールに触れられず、足が高く上がっていたこともあって印象が悪かった。

ロナウドは向かって左にいつものように蹴り込み、2-0。凌いできた時間帯を過ぎて、カウンターの形を作れてきていた良いタイミングでの追加点となった。

77分には、浮いたボールの跳ね返し合いから、カウンター。全員がマドリー陣内に入っている状況でイスコが裏へ浮き球のパス。ベイルがうまく頭でボールを前に押し出し、エリアまで運んで右サイドのロナウドへ。バウンドしながら足下に入ってくる難しいボールだったが、うまくステップを合わせて合わせた。フリーとはいえ、このあたりの技術の高さはさすが。

これで3-0とし、ロナウドハットトリック

アトレティコの交代後、狙えていたカウンターがはまって、勝負を決めた。

■終盤も

80分以降、マドリーはイスコ、ロナウドルーカス・バスケスを下げ、ベンゼマ、ハメス、アセンシオを投入。功労者を下げて他のプレーヤーに時間を与えるといった意味合いで、戦術的なものではない。こうした交代をビセンテカルデロンでできるとは思いもよらなかった。

終盤、アトレティコは一矢報いようと意地を見せる。この展開で完全に切れないのはさすが。

人はいるものの、さすがに緩くなってきていたマドリーのサイドをカラスコは何度か突破、シュートに持ち込んだが、この日は運がなく、またマドリーの守備陣が最後の最後はやらせなかった。

ロスタイムにはガメイロのパスを受けたカラスコがナバスと1対1になったが、これもナバスが良いタイミングで飛び出してセーブ。こういう時間帯に失点しがちなマドリーだったが、この日は最後まで集中、ツキも呼び込んだ。

■最後に少し

マドリーは望外の結果。主力を多く欠く中、アウェイ、ビセンテカルデロンで完勝した。

イスコはここぞという試合で最高の出来。攻守ともに重要な役割を担ってくれた。ロナウドも大きな試合で健在をアピール。唯一ほぼ守備を免除されたことのメリットを発揮した。

普段は控えのメンバーが多く、しかも慣れない布陣で臨んだマドリー。前半、良い形で試合に入れたことで、不安を払拭し布陣のメリットを得ることが出来た。

アトレティコは、後半のプレーが前半からできていればというところ。アトレティコのプレーの質の落差がおおきかったというのは、近年の対戦では珍しい。

大きな勝利ではあるが、得られる勝ち点は3でしかないことは忘れるべきではない。ここで頑張っても他の試合で緩んで勝ち点を落としては意味がないのだ。同じ集中力でプレーすることは難しいし、マドリーはえてして相手によって雑にプレーするクラブなのだが、この試合を生かすためにも、取りこぼしを少なくして戦っていってほしい。

とはいえ、アトレティコ相手にこうした試合をできたことは、今後に向けてチームの財産となる。こういうことができるのだ、ということを示した意義は何物にも替え難い。それほどの結果を得た試合だった。