レアルマドリードのある生活

レアルマドリードの応援日記。試合中心にお送りします。

ペぺが退団を発表、ここに至る経緯

ペペの退団がCOPEのインタビューで発表された。

6月末日で契約が切れる彼は、正式に退団が決まったプレーヤーとしてはこの夏最初の事例となる。

ここでは、34歳となってもなおトップレベルのセンターバックである彼がなぜフリーで移籍することになったのか、これまでの経緯を含めて考えてみたい。

■条件闘争

マドリーとぺぺとの契約延長交渉は、契約切れ半年前となって、他のクラブと自由に交渉できるようになった今年1月に入って持たれた。

マドリーは彼の年齢を考慮し、1年とインセンティブでの1年延長をオファー。それに対し、ペペは2年の契約を求めたことから、このタイミングでの合意には至らず。

これから現在までにおいて、この条件闘争が下地にあることは頭に入れておく必要がある。

■冷却期間

条件面で折り合わなかったマドリーとペペは、一旦交渉を止める。

短期か長期かの違いはあるが、両者とも残留は基本線であったことから、この時点で完全に決裂とはならず、交渉は別のタイミングを図り改めて行うことになったと推測される。

決裂していれば、直接そうした内容が報じられたり、夏の補強候補が盛んに報じられたりして、「ペペ後」に向けたポジティブなムードが出来ていくもの。クラブとしてはこのようなリークによる手法も可能であったはずだが、1月が過ぎた後にそうした報道は増えなかったし、かといって合意したという話題も増えていかなかったので、合意とも決裂とも決着がついていなかったと考えられる。

結局、ペペの契約についての話題はかなり沈静化し、シーズンが深まっていった。

ここまでは、クラブ側、ペペ側が納得してデザインした筋書きだろう。

■想定外の負傷と現場の判断

想定外だったのはシーズン終盤のペペの負傷。4月8日のアトレティコ戦でクロースと交錯し肋骨を骨折してしまった。

しかも、リーガでもCLでも、ペペ抜きでチームが奮闘。バラン、ナチョがしっかり穴を埋めたために、結局これ以降ペペがピッチに立つことはなかった。

現場でのジダンの判断は理解できる。

まず、もともと長期的にはペペからバランに世代交代を図るという意図があって、昨シーズンくらいからバランに経験を積ませようという流れはあった。

また、今シーズンはナチョも台頭、バランよりも安定感があるプレーをしてくれたので、ペペが万全であっても、世代交代の観点からベンチとする選択には妥当性がある。

それに加え、終盤の大事な時期に好調だったチームをあまりいじらない、という定石もある。バルセロナ戦でベイルを先発させ、すぐに再離脱したという苦い経験もあり、バランとナチョが期待通り世代交代可能なプレーをしてくれている以上、ペペを先発に戻すことに躊躇した部分もあるかもしれず、それも理解できる。

もちろん、ペペもベテランであり、マドリーへの忠誠も固いプレーヤーなので、このあたりの事情を理解しないわけではなかっただろう。

だが、契約交渉が後に回っている中で、負傷から帰って来てもベンチ外が続く状況に疑心暗鬼になった部分、つまり、クラブの意図は契約延長しないことに固まり、退団するプレーヤーに出場機会を与えないことでそのメッセージを送ることになった、と考えたように見受けられる。

だからこそ、「ジダンが終盤に自分を起用しなかったことに理解できない」といった今回の発言になったのだろう。

■すれ違い

ペペはクラブへの忠誠から、表向きチームの好調さに水を差す発言や行為をしなかった。その忍耐力は優れていて、称賛に値する。

しかし、そのことで逆にクラブは、ペペの心証の悪化に気づけなかった。素晴らしいシーズンを終えた後に前向きな条件交渉が出来ると思っていたら、その頃にペペは既に退団の意思を固めてしまっており、最早条件云々といった話ではなくなってしまっていた。

そのため、本来であれば、功労者の退団をクラブからの公式発表で明らかにしたかったところ、先にラジオで話されてしまうという結末になってしまったのだと考えられる。

■残念な結論、マドリーは彼を必要としていた

このように辿ってみると、条件面で折り合えなかったものの、後日協議することとして合意していた交渉が、その後の状況の変化をフォローできずに破綻した経過が見えてくる。

この経緯は1つの非常に残念な結論を示す。

つまり、「マドリーとしては、ペペを不要と正式に判断したわけではないのに、交渉が決裂した。」ということである。

繰り返すが、これは非常に残念で、もったいない結末だ。

クラブは短期的には彼を必要と判断し、またペペ側も条件面で話ができることとなっていたにも拘らず、シーズンの進展とともに変わる情勢、ペペにとっては不利な現場の判断といったことについてフォローするような接触が図られてこなかったために、ペペ側から見放されることになって、優秀なプレーヤーを失うことになった。

最終的な交渉の端緒さえ掴めずに、彼のように長年貢献してくれた優秀なプレーヤーを裏口から出すような格好になってしまったことは、マドリーにとって戦力的にもイメージ的にも痛恨の出来事だ。

最初のような条件闘争ならまだやりようもあっただろうに、今となってはペペの思いがマドリーから離れてしまっていて、交渉が持てるようには考えられない。

何とも無念なことになってしまった。

ペペの今後に幸運があるよう、またこうした形で彼を失うであろうマドリーのダメージが最小限になるよう、願うしかない。