グループステージの山場。まずはベルナベウでの対戦となった。
■マドリーの先発メンバー
GK:ケイラー・ナバス
DF:アクラフ、バラン、セルヒオ・ラモス、マルセロ
MF:カゼミロ;モドリッチ、クロース;イスコ
76分:ベンゼマ→アセンシオ、87分:イスコ→ルーカス・バスケス
右サイドバックはアクラフ。連続して先発の機会を得て、CLデビューとなった。
■トッテナムの先発メンバー
GK:ロリス
DF:オーリエ、アルデルワイレルト、サンチェス、ダイアー、フェルトンゲン
MF:シソコ、ウィンクス;エリクセン
FW:ケイン、ジョレンテ
スパーズもデレ・アリを欠いている。何かと噂のケインがベルナベウに。
■中盤はまずまず、ベンゼマはこれから
マドリーの先発は、現状の戦力ではこれがベストかという組み合わせ。
週末のヘタフェ戦では中盤がうまくいっていなかったが、カゼミロ、モドリッチ、クロースの構成はさすがにやり慣れていて安定感がある。
特に週末我慢して休ませたモドリッチが、古巣との対戦で違いを作った。下手な奪われ方はしないし、預ければ何枚か外してボールを捌いてくれるので周囲は安心して動くことが出来る。マドリーの中でもまだまだ格別な存在であることを再認識させられた。
モドリッチが低い位置での仕事を請け負ってくれるおかげで、イスコは得意な高い位置でプレーできるようになる。
彼まで低い位置に降りてきては起用のメリットが薄くなるから、攻撃的なプレーヤーを高い位置に留めておけるという意味でも、モドリッチの存在は大きかった。
以前よりクロースやモドリッチや高い位置に進出してくることが増えており、中盤の流動性は高まっているが、攻撃時の役割分担としてはヘタフェ戦より明確でスムーズだったといえる。
その一方で、守備時の動きは不安定。といっても、これも最近の傾向ではなく、以前は低い位置に留まっていたクロースやモドリッチが味方を追い越す動きを増やすようになってから顕著になっているもの。
基本的には4-4のブロックを作ることになるが、中盤の4が揃うのに時間がかかるか、攻撃が終わった際の位置で戻るので当初の並び通りにならないことも。相手はそこをついて速攻を狙うことになるが、最終ラインの個人能力の高さで解決できるので、大抵の場合は問題とならないで済んでいる。
ただ、この試合ではトッテナムは高さのある前線に当てて、勝てた場合に押し上げてくることを繰り返していたので、セルヒオ・ラモスやバランが2トップに応対せざるを得なくなり、結果中盤の遅れが数的不利を招くことになっていた。
ポチェッティーノが、ベルナベウでも試合を支配したいと語っていたが、支配がポゼッションを高めて攻撃を作ることを指すのであれば、それが彼らの理想だとしてもマドリーにとってはやりやすくなっていたはず。
中心となれるデレ・アリを欠いたこともあって、現実的な方策で臨んだ結果、マドリーとしては面倒になった。
さて、こと攻撃に限って言えば、中盤はさほど問題はなかった。それでも効果的なものとはならなかったのは、ベンゼマが良い形で受けらレルことが少なかったのが大きな原因のひとつだろう。
サイドに流れて起点をつくってはいたが、うまく追い出されていたとも言える。エリアの幅の内側でのポストプレーが少なかった。
ただ、彼は復帰2試合目。やり方として問題があるわけではなく、彼のコンディションによる部分が大きいので、今後状態が上がってくればこの点は改善が見込まれ、その意味でダメージは大きくない。
ヘタフェ戦同様、同点の場面でも彼を下げるあたりに、ジダンの先への配慮があるように思う。
■アクラフ
右サイドバックで先発となったアクラフは、CLデビューとしては上々の出来。守備に破綻はなく、落ち着いたプレーを出来ていたので、年齢と経験を考えればそれだけでも十分と言っても良い。
それに加えて、出場機会を得るごとに、ボールの受け方が良くなってきている。
左サイドからのサイドチェンジで、高い位置に進出してボールをもらう形はカルバハルのよう。出し手からも、カルバハル同様そこにいてくれることが理解されてきたようで、前半からどんどんボールが来ていた。
その後のボールタッチについてはヘタフェ戦の記事で触れたが、この試合では仕掛けのプレーに工夫がなく、フェルトンゲンに引っ掛けられることが多かった。
右サイドで浮いてボールを受ける以上、単独でエリア内にボールを供給するレベルが求められることもある。その点カルバハルは、様々な種類のクロスを蹴り分けられるのが強みで、それを押さえに来たら縦に出て行けるが、さすがにそこまで大胆にはなれなかった。
ヘタフェ戦でのプレーを見る限り、仕掛けていけるタイプだと思うので、あとは精神的な部分が大きい。次は積極的にラストパスを送るまでの仕事にチャレンジしてほしいと思う。
彼にはそれだけのことができる。トップチーム昇格早々のせっかくのチャンスを掴んでほしい。
■先制、同点
試合は28分、早い展開から左サイドを使われ、ニアに入り込んだケインについていたバランの足にオーリエの低いクロスがあたりオウンゴールでトッテナムが先制。オーリエのボールが良かった。実際ケインが合わせるのはかなり難しかったが、ディフェンスは戻りながらの対応を迫られる。
左サイドのスペースを使われたのはヘタフェ戦同様の形。受けきれない状態で最後の場面まで持ち込まれているのが辛いところ。
まずまずの試合運びかと思われたのに先制を許すという、今シーズンのベルナベウでの試合らしい展開に。その分我慢強くなったというべきか、慌てることなくやれることをやっていたのは印象が良かった。
43分、マドリーが同点に追いつく。
ベンゼマのポストプレーから、エリア内に入っていったクロースが倒されペナルティ。これをロナウドが右に決めた。
ベンゼマの印象が全体として薄かったのは先述の通り。それでも、数少ない良い形でのポストプレーを大きなチャンスに繋げた。彼にはこういうプレーの数を増やしていってほしい。特典は少なくなるが、こういった場面で落ち着いて周囲を使えるのが彼のユニークなところだ。
前半のうちに追いつけたことで、チームの雰囲気はもとより、ベルナベウ全体としても騒がしいことにならずに済んだ。
■攻め合うもジダンは淡々と
後半はエリア付近の場面が互いに多い攻め合う展開に。
前半より多くチャンスを得た一方で、良い形でシュートされることも増えた。勝つチャンスがあったというべきか、負ける一歩手前だったというべきかは微妙なところだ。
マドリーは、チーム全体としてはシーズン当初のような悪い内容ではなかったのだし、ベルナベウで不調とはいえ、ホームで勝ちにいったのだから、同点以降の展開はある程度納得できる。
危なっかしくても最終ラインの個人能力で処理して勝ってしまう試合もちらほらあるのがマドリーでもあるし、それがこの試合はナバスの活躍だったということ。
先に2点目を取った方が畳み掛けていって、意外と大差がつくような試合になっていてもおかしくなかったが、ナバスとロリスのプレーで試合としてはCLにふさわしい個人のレベルの高さを見せてくれた。
今後を考えればもちろんどんな形でも勝ち越し点は欲しかったというのが率直なところ。ベルナベウですっきり勝って雰囲気を変えたかったということもある。
見る側のそういう思いもわかっているだろうが、ジダンの考え方は変わらない。
ベンゼマをフル出場させなかったこともそうだし、交代で出したのがちょっとうまくいっていないアセンシオなのも彼らしい。やろうと思えばアセンシオやルーカス・バスケスも早めに投入して賭けにでることもできたのに、そうはせず、無理のない範囲の起用で結果を求めている。
もちろん、そこまで無理に突っ込む必要がないと言えばそうなのだが、”ベルナベウで不調”という悪い流れや報道を断ち切りたいと逸ってしまってもやむを得ない状況ではある。それでも淡々としていられるのが、ジダンの監督としての強みだ。
それがなければアクラフの先発起用もなかっただろう。やきもきしつつも若手の成長を楽しみに見ていきたい。
■最後に
ドルトムントがAPOELと引き分けたことで、マドリーとトッテナムが勝ち点7、ドルトムントとAPOELが勝ち点1でそれぞれ並ぶことに。3クラブでもっと混戦になるかと思っていたが、ドルトムントが勝てていないことで予想外の差がついている。
次節に勝てば首位通過が大きく近づき、敗れるとドルトムントに再びチャンスを与えることになって直接対決が面倒なことになる。最低でもアウェイで引き分けは確保したい状況となった。
週末のリーガはベルナベウでエイバルと対戦。リーガの試合でベルナベウの悪い流れを変えられるだろうか。