先週末から出かけていたこともあって、1週間遅れですが、エイバル戦の振り返りを。
■マドリーの先発メンバー
GK:ケイラー・ナバス
DF:ナチョ、バラン、セルヒオ・ラモス、テオ
MF:セバージョス;モドリッチ、カゼミロ
FW:アセンシオ、ロナウド、イスコ
64分:アセンシオ→ベンゼマ、71分:セバージョス→マルセロ、イスコ→ルーカス・バスケス
テオ、セバージョスが先発入り。右サイドはナチョとなった。
■エイバルの先発メンバー
GK:ディミトロビッチ
DF:カパ、アルビージャ、ロンバン、パウロ・オリベイラ、ホセ・アンヘル
FW:乾、シャルレス
63分:シャルレス→キケ、73分:カパ→ペーニャ、79分:エスカランテ→セルジ・エンリク
エイバルはここまで2得点12失点とアウェイでは苦しんでいる。
■期待できる4-3-3
マドリーの構成は、最近おなじみだったイスコがトップ下の形のようでいて、左サイドに開いていることがほとんどで、実質的には4-3-3。
ピボーテにはセバージョスが入って、その前にモドリッチとカゼミロ。セバージョスが出ていく時は、カゼミロが通常通り下がったポジションを取っていた。
この形のメリットは、まずアセンシオを前線のサイドで起用できる点。彼は、負傷者の兼ね合いも合って2トップの一角として起用されることが増えていたが、うまく機能していたとは言いがたかった。また、中盤に組み込むと、低い位置での仕事が増えて、ゴールに向かってこそ生きる本来の能力を発揮できず、もったいない。
右サイドから中央に入っていって左足を自由に使えるポジションに置くことで、良い時のプレーを取り戻してほしいという配置になっている。
左サイドに入ったイスコにも良い影響があった。
インテリオールやトップ下では、ボールに触る機会が多い反面、持ち過ぎている場面もしばしばあって、周囲との絡みが上手くいかないこともあった。サイドでは、攻撃の全権委任とはならず、ある程度役割に沿った、定石通りのプレーをすることになるので、程々にボールを持ってプレーできていたように思う。
ロナウドを中央に置いて3トップにする場合、サイドに入るのはまずアセンシオで、その次はベイル、ルーカス・バスケスの序列となる。ベイルが離脱している現状では、ルーカス・バスケスが本職だが、今の彼を先発させるよりイスコを選択するのは、当然と言えば当然の判断だった。
中盤では、セバージョスが徐々にフィットしてきた印象。低い位置で落ち着いてプレーできていた。
この役割はコバチッチがやっていたものに近い。彼が負傷して以来、カゼミロ、モドリッチ、クロースの組み合わせ以外に、中盤に上手く組み込めるプレーヤーが欠けていた。イスコやアセンシオは前述の通りもったいないし、マルコス・ジョレンテは組み合わせによって今ひとつで、明らかなデメリットがありながら何とかやり繰りしていたところだ。
セバージョスにめどが立てば、コバチッチ復帰までのローテーションはしやすくなるし、将来的には、カゼミロ、セバージョス、コバチッチという構成も期待できるようになる。そうなれば、イスコ、アセンシオにより高い位置でのプレーを保障できるようになるので、メリットが大きい。全体として、今後に期待が持てる形となっていた。
■状況の変化
そもそも、ジダンはこれまで4-4-2にこだわりすぎていたのかもしれない。もちろん、ベンゼマとロナウドが併用される場合は、彼らを前に残して4-4で守る形がベターだ。アンチェロッティ以来、攻撃の形は様々でも守備時には4-4にすることが基本路線となってきたのは、ロナウドの守備免除と守備の破綻を防ぐことの両立を図ってきたからで、それは今も変わっていない。
だが、この試合のように、ロナウドのみなのであれば1トップにしても良い、という割り切りはこれまであまりされてこなかった。ロナウドが9番としてのプレーがあまり得意でなかったということもあって、この形が使われるのは負傷などのコンディションの問題からやむを得ない時に限られてきていた。
しかしながら、状況は変化してきている。
ロナウドがフィニッシャーに特化するようになったこと、中盤のプレーヤーが充実してきたことで、「ロナウドと、彼にボールを供給する中盤」という構成に違和感がなくなってきた。ベンゼマのようなポストプレーがあれば素晴らしいが、なくても、この試合であればイスコやアセンシオがラインの間で受ける意識を持つことで、ある程度解決できるようになり、それによって効果的にアタッキングサードに侵入できるようになる。
数シーズン前は上手く行かなかったロナウドのトップ起用が、1トップでもある程度やりようはある、という位置までやってきたのは、これまでの試行錯誤の賜物だ。
課題を挙げるならば、ロナウドのボールを欲しいタイミングと、周囲のプレーが合っていないことだ。この試合でも、ボールが出てこないことに不満を示すジェスチャーが何度か見られた。
ロナウドはシンプルなタイミングでどんどんボールを入れて欲しいタイプ。多少無理な形でも、出してくれればシュートまで行くよ、という考え方だろう。客観的に見ても、一発で仕留めるというよりは数多くシュートしてリズムを作っていくプレーヤーだ。
逆に中盤の面々は、ボールを動かして、こねて、確率を高めて最後のボールを送りたいと考えていた印象。全盛期のバルセロナやスペイン代表のような雰囲気だった。
どちらかのタイミングに合わせないと、受けたい時にボールが来ず、崩した時にはフィニッシャーがいないというチグハグなことになってしまう。今はロナウドのチームなので、彼に適度にボールを出しつつ、時折じっくり崩していくくらいのバランスの取り方が良いかもしれない。
■アセンシオにゴール、ロナウドは得点ならず
オウンゴールで先制した後、28分にアセンシオのゴールで追加点。イスコから中央に入ってきたアセンシオへのクロスが入り、ボレーで決めた。
アセンシオにとっては重要なゴールになるかもしれない。シュート自体のコースは甘かったが、エリア付近でボールを受けられればこういうプレーができる、ということを皆に示すゴールになった。
この日のマドリーは2点リードで十分。落ち着いた試合運びで前半を終え、後半も無理せず。ロナウドが受けたがっていたので、コントロールはしつつも彼を狙っていっても良かったか。
残り30分を切って、このあたりの呼吸がわかっているベンゼマ、マルセロが相次いでピッチへ。いかにもロナウドに点を取らせてあげたい、というプレーが何度も見られた。
それを過度な気遣いと捉えるかどうかは難しいところだが、取るべき人が取って勝つことの重要性は言うまでもない。どういう形でも、1つ入っていればなお良かった。
結局3点目は途中出場のマルセロ。カウンターから左サイドでボールを動かし、うまく前を向いてコントロールしたマルセロが左足でファーサイドに蹴り込んだ。受け方やシュートはさすがという他ない。
ロナウドのゴールはなかったものの、3-0で磐石の勝利。落ち着いて終盤を迎えられたのは良かった。
■最後に
4-3-3の採用も含め、ジダンのローテーションは継続中。テオ、セバージョスが出場機会を得、このところ続けて先発していたアクラフを休ませ、経験のあるナチョを右で使った。
彼らの出場に大きなスポットが当たらないことそのものが、ジダンのチーム運営の継続性を示しているといえるだろう。
その上でベルナベウでも落ち着きを取り戻しつつあることは嬉しい。
結果が出ないと、どうしてもローテーション不要論に傾いてしまうし、そうなると主力依存は深まって、コンディションの低下、固定された控え組のモチベーション悪化が起こるので、良いことは少ない。
後半戦に向けて年内は我慢するとして、この試合くらいのペースで勝つことができていれば、多少内容は悪くとも進んでいける。
下位相手ではあっても、問題なく勝ったという事実が大事だ。
次節はアウェイでジローナと対戦。
カタルーニャの独立宣言により、自治州内の情勢が不安定。今のところ、試合自体は開催されるようだが、それも含めてどうなるか見通しが立たない。ピッチ外の状況によって、難しい試合になってしまいそうだ。