まずは無事試合開催できたことが良かった。この試合の開催に向けては、様々な方面で努力があっただろう。ジローナのサポーターもフットボールに対する熱意のみでスタジアムを盛り上げてくれた。
■マドリーの先発メンバー
GK:カシージャ
DF:アクラフ、バラン、セルヒオ・ラモス、マルセロ
MF:カゼミロ;クロース、モドリッチ;イスコ
46分:バラン→ナチョ、66分:アクラフ→アセンシオ、マルセロ→ルーカス・バスケス
中盤の並びについては後述する。
■ジローナの先発メンバー
GK:ボノ
MF:ポンス、グラネル;ポルトゥ、ボルハ・ガルシア
FW:ストゥアニ
75分:マフェオ→ティモール、82分:ポルトゥ→カヨデ、87分:アダイ→モヒカ
昇格したシーズンでここまで勝ち点9。数字以上に、アトレティコ戦など上位陣との試合での奮闘が目立つ。
■走れない
ジローナは序盤から高い位置でのプレスで守備をスタート。マドリーの最終ラインに対し、中盤のプレーヤーも積極的に出て行ってボールを追っていた。
これはマドリーにとってありがたい展開のはずだった。
技術の高いマルセロやモドリッチが先発しているし、プレスを外せば広いスペースを享受できる。中盤より前のプレーヤーが前を向いて仕掛ければ自ずとチャンスは増えていくだろうと思われた。
しかしながら、マドリーはジローナのプレスに対して四苦八苦。良い形で奪われる回数こそ多くはなかったが、スムーズにボールを運ぶことが出来ず、攻撃を作ることもままならなかった。
ミッドウィークに休んだプレーヤーが多かったにも関わらず、なぜか運動量が少なく、ボールはとまってばかりいて、ジローナのプレッシャーが良くボールホルダーに届いていたのだった。
足下でばかりボールを受けていては、相手をはがすことは難しいのは当然のことだ。往時のバルセロナやドルトムントとの試合のように、マドリーの攻撃はプレスによって阻害されてしまっていた。
低い位置でも相応の人数をかけてボールを動かしていれば、あるいは展開は違ったかもしれない。ジローナも、当然力関係は分かった上でこうしたやり方を選択しているので、プレスに効果がないと判断すれば、早くリトリートするように変わっていた可能性もある。
この点でも、この日のマドリーはまずかった。組み立てには4バックとモドリッチ、クロースが顔を出すくらいで、前残りするプレーヤーが多く、4トップのようになって分断されていることもしばしば。下がってくる運動量を欠いていた。
せっかく陣形を崩してジローナが追い回してくれたのに、良い位置で攻撃を繋げるプレーヤーがおらず、スペースを利用することができていなかった。
これらのことから、マドリーは落ち着いて効率よく攻撃を展開することが出来ないことになった。
戦術的な部分の課題もあったにせよ、走ってくる相手に対しここまで動けなかったということが、根本的な問題として最後まで尾を引いた。
マドリーは12分にカウンターからイスコのゴールで先制。
ここまではジローナのシュートが枠に嫌われるツキがあり、攻めに出てきた裏を取ってカウンターに成功したが、この方針が長続きせず、せっかくのリードを生かすに至らなかった。
マドリーの体たらくとは裏腹に、ジローナの頑張りは称賛に値する。先制を許して以降も、しっかりした守備を放棄せず皆走っていたし、マドリーの散発のプレスをかわす余裕も技術もあった。
昇格組ということが先行してしまうが、問題なくプリメーラでやれるレベルのチームだったと言える。
■イスコはトップ下にあらず
いずれにせよ自由に動くので、彼のポジションは厳密なものではないのだが、前節エイバル戦で左に張り出す形で起用され、まずまず上手く機能していたイスコは、今節また中央に近いポジション取りとなった。
前節の記事で触れたように、今のイスコは役割を絞ることで、ボールの持ち過ぎを抑え、チームの中のプレーヤーとして機能させる期待があった。
トップ下での起用となると、当然彼にボールが集まることになる。その中で、ボールの持ち過ぎや、得点するプレーヤーとのタイミングの合わなさが如実に表面化してしまうことになる。
もちろん、カウンターの場面で最後まで走りきったことで先制点を挙げたことは良かった。また、結果的にこの日唯一のゴールともなったので、この日のマドリーのベストプレーヤーを彼とする向きもあろう。
しかし、この試合で彼がボールを持った回数に比べ、真に決定的なチャンスを作ったと言える場面が多かったと言えるだろうか。相手の守備が粘ったとはいえ、ここぞというパスは多く相手に引っ掛けられていた。
彼のこの試合でのポジションを考えれば、ボールを持ち上がることは出来ても、最後のところでゴールに直結する仕事はできていなかったと言うべきではないかと私は思う。
例えば、マドリディスタが思い出すトップ下としてグティがいるが、最後のところの仕事の凄さは比べるまでもないだろう。
そういうポジションに入った以上、目指すところをそういったレベルに置かれることになるが、イスコの技術はそうした方向に向いていない。
彼の技術がゴールに結びつかないのは、この試合で初めて明らかになったことではない。
最後のパスが短くて相手に引っ掛けられることは何度も見てきた。’14~’15シーズンのベルナベウでのバルセロナ戦での3点目の場面などがそうで、せっかくイニエスタをかわして前に出られたのに、ロナウドへのパスが弱くなり、大仕事をし損ねている。その後ロナウドとハメスのプレーが良かったので結果としてベンゼマのゴールが生まれたが、彼の大きな場面でのパスのまずさが端的に現れた場面と記憶している。
実際のところ、彼の魅力はエリア付近で自分でゴールを狙えるところにあって、系統としてはアセンシオに近いものがある。
足下の技術の高さがあるので、典型的なトップ下で起用したくなるところだが、彼のパスからどんどんチャンスができることは、少なくとも現状では期待できない。
前節のように、サイドである程度役割を限定しつつ、アタッキングサードでディフェンダーから浮いてボールを受けて仕掛けていく方が良い。
その意味で、彼はトップ下ではないのだ。
■前節からの変更も残念
CLを見据えつつも現状でのベストに近いメンバーがコパで休みをもらった上で並びながら、最初に述べたように、基本的な運動量を欠いてやられたのだから、チームとしてよほどコンディショニングを間違っていない限り、まず批判されるべきはプレーヤーだ。
その考え方を踏まえて更に言うと、苦しいやり繰りの中、期待が持てそうな内容を見せた前節から形を変えてこの試合に臨んだジダンの判断は悪かった。
良い感触を残したやり方は維持していってもよかったのに、元に戻してしまったことで、結果として辛い展開を強いられることになった。
ローテーションは続くだろうし、そのこと自体は評価しているのだが、良い時の流れを掴んで維持していくには、ちょっとした無理も必要かもしれない。幸いチームの掌握は問題ないようだから、この点については今後の改善に期待しておく。
■最後に
ジローナの2点目は完全にオフサイドだったが、あまり強く指摘する気にもなれない。前半からゴールに多く迫っていたのはジローナの方だったし、マドリーは怠惰なプレーの報いを受けたと解釈すべきだろう。
勝ち点を得るには、この内容は酷すぎた。
ミッドウィークにはCLトッテナム戦があり、週末の次節はベルナベウでラスパルマスと対戦。
CLではまずまずのプレーができているので、アウェイで弾みになる内容の試合をして、リーガでそれを持続していくような流れになれば。
負傷者も絶えず、苦しい状況は明らかなので、良い材料を少しずつ作って維持していってほしい。