勝てばグループステージ突破が決まる。3強と思われた一角のドルトムントが躓いていることで、アポエルにもチャンスが残されている試合。
■マドリーの先発メンバー
GK:カシージャ
DF:カルバハル、バラン、ナチョ、マルセロ
58分:マルセロ→テオ、クロース→セバージョス、64分:ベンゼマ→マジョラル
カルバハルは週末から続けて先発。バスケスとアセンシオが両翼で、カゼミロはベンチ。
■アポエルの先発メンバー
GK:ナウセト・ペレス
DF:ブロス、ルエダ、カルロン、ラゴ
MF:ヌーノ・モライス、ビニシウス;サライ、ザヒード、アロネフティス
FW:ポテ
59分:ビニシウス→ファリアス、60分:サライ→エフレム、66分:ヌーノ・モライス→エベシリオ
ドルトムントと勝ち点2で並んでいるアポエル。3位でELの可能性は残っている。
■マドリーの切り替えの良さとアポエルの難しい立場
ジダンは力量の差も恐らく考慮してカゼミロを休ませる判断。モドリッチ、クロースの組み合わせでは、守備には問題を抱えるかと思われた。
しかし、マドリーの奪われた後の切り替えが良く、高い位置で奪い返すことが継続して出来ていたため、ディフェンシブサードでピンチを迎えることはほぼなかった。
速い寄せに対してアポエルがかわしきれないという差は、リーガの下位と比べても歴然としていたので、その点は差し引くとしても、前線の切り替えの速さ自体は評価に値する。
アポエルはマドリーのプレスをかわせないので、奪われない場合でもロングボールに頼らざるを得なかった。
国内では強いがヨーロッパでは普通にやると太刀打ちできない位置にいるアポエルのようなクラブは、強豪としての国内向けのやり方と、弱小としてのヨーロッパでのやり方の2パターンを用意しなければならず、振る舞いが難しい。
リトリートして僅かなカウンターのチャンスやセットプレーに賭け、勝ち点1でも拾う機会を狙うのがCLでは妥当だが、こうしたやり方を続けているわけではないチームが、ミッドウィークだけ取り入れても徹底は望めない。
モウリーニョ期のバルセロナ対策が他の試合とは関連のない特殊なもので、返ってやりづらくなっていたことがあったことも思い返すと、準備の困難さがわかる。
実際、アポエルはリトリートするやり方が万全ではなく、時折プレスに出て行ったり、中盤で人数をかけようとしたりする場面がちらほらあった。
ホームでの心意気としては良いが、残念ながらそれ以上にはなり得ない。
低い位置でかわすのはお手の物だし、この試合ではアセンシオやベンゼマが良いタイミングで顔を出していたので、マドリーが低い位置でやられることはなかった。
そうなると、アタッキングサードでスペースをもらえることになるので、マドリーとしては望ましい展開。
グループステージから先の可能性が潰えていて、ホームで誇りをかけるのみというならば、アポエルとしてもこれで良いかもしれないが、彼らにもELの可能性がある中では現実的な選択に徹することができなかったというところだろう。
■前半で勝負あり
押し込みつつ得点はしばらくなかったマドリーだが、23分、右からのクロスのクリアボールをモドリッチがボレーで決めて先制。思い切りが良く、いいコースに飛んだ。
アポエルとしては中途半端なクリアが悔やまれる。難しい体勢ではあったが、押し上げられないクリアでは厳しい。こういう細かなところが差になって現れる。
39分にはロナウドとクロースのパス交換の間にベンゼマが左サイドから出て行って抜け出し、キーパーとの1対1を制して追加点。
ロナウドのポスト、ベンゼマの動き出し、クロースのパスと良い連携だった。
41分にはコーナーからナチョ、44分にはロングカウンターからロナウドがキーパーもディフェンスもひきつけてベンゼマへのプレゼントパスで得点。
前半のうちに4-0として勝負を決めた。
ベンゼマの1点目に見られるように、この日は良くボールを動かしていたし、プレーヤーも連動して良く走っていた。
ロナウドのプレゼントパスのように、個人の得点に固執しないでやる雰囲気もあって、久しぶりに攻撃が良い形で機能した。
■ロナウドも
こうした試合展開で、残るはロナウドに得点が生まれるかどうかというところ。
大差の試合では、得てして後半は全体としてペースダウンして、チャンスの数が減るもの。こんな試合でさえロナウドが取り残されるともったいない。
しかし、そうした不安は杞憂に終わる。
49分、マルセロのクロスに頭で合わせて1点奪うと、54分には相手のバックパスにベンゼマが詰め、こぼれたボールをダイレクトで蹴り込んで5分で2得点を挙げた。
リーガでは不調が続いているが、CLではこれで8得点と十分すぎる結果を出している。だから彼個人の衰えと短絡的に結びつけることには、個人的には反対だ。これまで触れてきたように、チーム全体のやり方が再構築されている中で、彼にボールが届きにくくなっているところが解決されていないと考えている。
リーガでもアシストはしていて、この試合でもベンゼマの2点目のプレーは落ち着いて見えていたし、自身の2得点を見ても、身体的なキレは鈍っていないように見受けられた。
特に2点目のシーンは、無人のゴールへ蹴り込むことになったので簡単に見えるが、ディフェンスもいる中、逆足でかなり体をひねりながら枠に入れなければならない。楽々やっているように見えるのが彼の凄さだ。
課題だった前線の2枚がそれぞれ2得点を挙げてきっかけをつかみつつ6-0と、久々のフィエスタ。
残り30分頃からマルセロ、クロース、ベンゼマを楽々休ませて、2位ながらグループステージ突破を決めた。
■最後に
かなり格下との試合だから勝ちは当然としても、大差で無理することなくプレーでき、しかも前線で得点を挙げられたことは、今後に向けての好材料。
どんな試合でもゴールはゴールだし、そう何点も取れるものではない。取るべきところでしっかり取るのは大事なことだ。
ゴールが決まれば他のプレーも良くなっていくのが前線のプレーヤーなので、これをきっかけに良いパフォーマンスを取り戻していってもらえればと思う。
自身にゴールこそなかったが、アセンシオは先発で良い働き。
低い位置にも顔を出しつつ、そこに留まらずラインの間に出て行ってもう一度受ける動きが出来ていた。良いところでボールを触れていたこともあって、リズム良くボールを前線に届けることに一役買っていたと言える。
彼やイスコは、自分で打開することに拘泥しすぎないで、この試合のように全体としては淡々とボールを前に供給しつつ、所々で勝負していくバランスが望ましい。
取るべき人が取って勝つのは久しぶり。良い雰囲気になれそうなミッドウィークとなった。
今週末はマラガをベルナベウに迎える。