冷たい雨のベルナベウ。リーガは事実上終わっている状況でこの天気とあって、空席が目立った。
■マドリーの先発メンバー
GK:ケイラー・ナバス
DF:カルバハル、バラン、ナチョ、マルセロ
MF:カゼミロ;モドリッチ、クロース;イスコ
FW:ベイル、ロナウド
70分:イスコ→ルーカス・バスケス、ベイル→アセンシオ
またも4-3-1-2。率直に言って良い予感はしなかった。
■ビジャレアルの先発メンバー
GK:アセンホ
DF:ガスパール、アルバロ・ゴンサレス、ボネーラ、ハウメ・コスタ
MF:トリゲロス、ロドリゴ・エルナンデス;フォルナルス、カスティジェホ
FW:バッカ、ラバ
46分:ラバ→チェリシェフ、76分:バッカ→ウナル、83分:カスティジェホ→ルカビナ
CL圏内も視野に入っているビジャレアル。今のマドリーにとっては直接のライバルと言える。
■相変わらずの歪な構成
4-3-1-2の機能不全はそうそう改善されるわけもなく、この試合も今シーズン見てきたような状況となった。
中盤が中央に固まる形でありながら、サイドを攻略してのクロスが主たる攻撃手段となっているために、ボールを持った時の中盤が歪になる。
イスコが両サイドを助けにいくが、サイドバックと彼の2人が基本であるため、4-4-1で守るビジャレアルの守備とは常に同数で、数的優位に立てない。だから、効果的な突破が出来ない。
数的優位を確保するためにロナウドやベイルがサイドに流れると、今度は中央で決める人が少なくなってしまう。
中央はというと、ポジション的にラインの間で受けてほしいイスコが両サイドのヘルプに出て行くし、2トップもそうした気の利いたことはあまりできないので、ブロックの中に侵入できないでいた。
こうして詰まるので、クロースがサイドに出たり、モドリッチが高い位置を取ったり、カゼミロも出て行ったりして何とかしようという判断になって、中盤は更に歪に、薄くなっていく。
サイドにはサイドバックしかいないので、ビジャレアルは奪った後中央に当ててサイドに展開することで、容易に危険なカウンターの機会を得ることが出来ていた。
このように、ピッチ上の実態としてはサイドから攻める形が展開されていた。それは昨シーズンから変わっておらず、サイドで優位に立ち、速いサイドチェンジでスペースを得ることで、つまらないと言われつつもクロス攻勢によりゴールを挙げ続けてきた形だ。
だが、それをしているのが中央が手厚い形であるために、大きな歪みが生じている。
肝心のサイドにはサイドバックしかおらず、中央からポジションを崩して出て行っても数的優位にはないのでしばしば失敗し、ずれたところを使われて速攻を受けてしまう、攻めづらく、しかも守りづらい状況がずっと続いていて、それはこの試合も変わらなかった。
■選手起用
交代でバスケスとアセンシオが入ってからの形の方が、サイドに2枚ずつになってチームがやりやすい形をスムーズに実現できていたが、選手起用もミステリアスである。
こうした交代がお決まりになっているので、この修正で効果があることは分かっているはずなのに、頑なに4-3-1-2に拘っていることもそうだし、カゼミロのように組み立てにおいて穴となっていることが明白なプレーヤーは先発で固定されているのに、同じく技術は高くないがサイドで走り回るタイプになっているバスケスが残り僅かな時間でばかり起用されることもそうだ。
また、本来のトップ下のポジションにほとんどおらず、サイドに張り出すイスコの流動性は容認しつつ、困った時のミドルシュートがあり、中央でかき回せるアセンシオを逆にサイドに固定してクロッサーのように取り扱っていることも、謎めいている。
4-4-2として、両サイドにイスコ、バスケスを置いた形からクロスを量産し、中央の2枚が仕留める形の方が、ピッチ上で起きているプレーに沿った構成のように思うが、ジダンはあえて難しい形と、矛盾する選手起用を続けている。
ジダンは昨シーズン、あれほど得点を挙げ、勝利している時でさえ、頻繁に先発メンバーを入れ替えた。
象徴的なのはダニーロで、ベルナベウでブーイングさえ起きていた彼を定期的に先発起用して、最終的には一定の評価が得られるところまで引き上げた。
テオやセバージョスといった、格はやや落ちるが将来性あるプレーヤーたちとの契約において、そうした起用法が1つのポジティブな要因となったことは明らかだ。「ジダンのチームなら、ローテーションで出場機会は得られる。彼らもそれで伸びる。」という思いは、マドリディスタの多くにあったし、プレーヤー自身もそういう起用法をイメージしていたのではないだろうか。
それにも関わらず、今シーズンは結果の出ないまま特定の構成に固定され、途中交代のメンバーもアセンシオ、バスケス、コバチッチくらいまで固定されている。
負傷などの離脱を除けば14、5人くらいでチームを回している状況で、明らかに昨シーズンとは様子が異なる。
その変化の理由は何なのかは、未だにわからない。最後までわからないかもしれない。
■良かっただけに
こうした状況でありながら、この試合のマドリーの出来はまずまずだった。
シュート数も30弱で、可能性のあるなしは別にして、エリア周辺でのプレーは最近の試合の中では多かった。
前述の通り中盤は無秩序だったものの、前に出てのパスカットが頻繁にあり、アタッキングサードでの攻撃を続けられたのも、いつもに比べれば印象は良かった。
こうした点から言えば、クロースが述べたように、パフォーマンスは悪く なかったし、特に前半はアセンホの活躍がなければ、1、2点入っていてもおかしくはなかった。
ただ、前半頑張るが得点にならず、後半にペースが落ちて終盤に致命的な失点を喫する流れは相変わらずである。
昨シーズンのように劣勢でもゴールが決まる時は決まるし、今シーズンは逆にここぞというところでツキもない。その僅かだが重要な違いを埋められずにいる。
良い場面もあっただけに、今のリズムの悪さを強く感じることになった。
個々のパフォーマンスもさほど悪いものではなく、両サイドバックは奮闘していたし、クロースやモドリッチも低い位置から何とかしようとするプレーは繰り返していた。
だが、繰り返しになるが、形が歪であるため、個々の非常な頑張りがあってはじめて均衡を保つことができる。
カルバハルとマルセロはそれぞれ1.5人分の働きでは足りず、サイドバックとウイングの丸々2人分の仕事をせねばならないし、中盤も出て行っては低い位置の守備ブロックに遅れることなく参加する必要がある。それらをやってようやくバランスが維持されるという状態だ。
これでは頑張りの割に得られるメリットは多くないし、なによりプレーヤーが持たない。
もっと楽に、スムーズにプレーできる4-4-2のような形をスタート時から採用した方が良いように思われる。
それでこの試合くらいのハードワークがあれば、ずっと希望が持てるのではないだろうか。
■最後に
ミッドウィークにはコパ、レガネス戦が控えている。
修正の時間は短いが、試合に臨んで整えていけるチャンスがあると前向きに捉えておきたい。
残されたタイトルは、どちらもトーナメント。しぶとい戦いが出来ることを期待。
週末はデポルティーボをベルナベウに迎える。