CL後でタイトルの可能性のないリーガという精神的に難しい状況ながら、粘り強く勝ち点3を得た。内容は別にして、こういうしぶとさが序盤に出ていればと思わずにはいられない。
■マドリーの先発メンバー
GK:ケイラー・ナバス
DF:カルバハル、バラン、セルヒオ・ラモス、マルセロ
MF:カゼミロ;モドリッチ、クロース;イスコ
FW:ロナウド、ベイル
28分:バラン→ベイル、71分:クロース→ベンゼマ、イスコ→ルーカス・バスケス
イスコが先発。ベンゼマがベンチとなり、ロナウドとベイルの2トップ。
■エイバルの先発メンバー
GK:ドミトロビッチ
DF:カパ、イバン・ラミス、アルビージャ、ホセ・アンヘル
MF:エスカランテ、ダニ・ガルシア;ペドロ・レオン、ジョルダン、乾
FW:キケ
67分:イバン・ラミス→オリベイラ、85分:エスカランテ→ディオプ、87分:乾→シャルレス
中位につけるエイバル。残留は問題なく達成できそうだ。
■うまくいかなくても
狭く、滑りやすいピッチでボールをつなぐのは難しい。
2トップがロナウドとベイルであったこともあり、中盤より後ろの形はポゼッションしたい形だったが、さほどボールを持つことは出来なかった。
試合全体では55%の支配率とはいえ、五分五分かマドリーの方がボールを持てない時間帯もあった。
一方エイバルはホームのピッチを十分に理解し、そこからメリットを得ようとしていた。
中盤のプレスとショートカウンターは、狭いピッチでボールを持とうとするチームにとっては脅威だ。ちょっとしたミスが致命的な場面へと繋がることになりかねない。
まして、この日のような天候はエイバルに有利。個々の能力ではマドリーが上でも、90分間ノーミスはありえず、コントロールが難しい条件ではなおさら。下手なつなぎ方をするとやられてしまいそうだった。
こうしたことを考えると、チームとしてやりたいことを実現していたのは間違いなくエイバルの方だったと言える。
だが、それがマドリーにとって辛かったかというと、必ずしもそうではない。
4-3-1-2の形で過度にポゼッションに偏った攻撃になると、アタッキングサードで手詰まりになるのはお馴染み。ましてこの日はベンゼマがいなかった。
その状況で、しかもこうした悪いコンディションで、シーズン前半戦より良い形を多く生み出せるかというと、率直に言って疑わしい。
前線の2枚だけ考えても、あまり上手くいかないことが多いのに、中盤のやりたいことが噛み合わない恐れもあって、ポゼッションで崩せるというイメージは湧かなかった。
支配率がほどほどに収まったということは、マドリーがボールを持ちっぱなしだったわけではないことを意味する。
ほど良くボールを手放し、2トップの特性を生かして速い攻めも織り交ぜていけたことで、懸念されたような形での手詰まりにはならなかった。
それで危うい失い方も増えてしまっては元も子もないが、その点も最低限のレベルはクリア。大きな問題になる場面はそう多くなかった。
恐らくはやりたいことと違った展開になった結果、返ってやりやすくなった面もあり、メリットとデメリットの収支の差という意味では悪くない試合に。
ただ、だからと言って内容が面白いものになったかというとそういうわけではない。
乾がおり、アジア向けの時間に始まった試合だったが、リーガやマドリーの魅力が広まるような分かりやすい魅力には欠けていたのは確かだ。
■ロナウド復活
このように拮抗した試合で、ロナウドが2得点。
エイバルの僅かな隙を見逃さず、少ない手数でゴールを決めきった。こういう仕事ができるからこそ、未だに彼の価値は高いのだ。
またも試合の流れとは関係のない、ちょっとしたプレーから得点を生み出し、マドリーに勝ち点3をもたらした。
良くも悪くもチームの中でプレーしていたベイルに、特別な勝ちをもたらすプレーとは何かを見せ付けるかのような、短い時間の最高のパフォーマンスだった。
仕事の幅は狭くても、CLでもリーガでも決定的な場面に入ってくるのはいつもロナウドだ。
シーズン終盤になっての巻き返しに期待はしていたが、ここまでのペースでゴールを量産するとは思ってもみなかった。
こういう試合で決定機をしっかりものに出来るFWは、世界に何人いるだろうか。
もうしばらく彼の決定力を生かすチーム作りをしていくのが現実的と思わされてしまう。世代交代の準備はしつつ、うまくチームで生かす形を引き継いでいかなければならないだろう。
■やはり悔やまれる前半戦
チームとしてはやりたいことをできなくても、しぶとく戦って勝ち点3を得るアウェイでの試合を、前半戦でも出来ていればリーガももっと面白く出来たかもしれないという悔いは残る。
マドリーのような戦力のチームが、調子の良い時に勝つのは当然のこと。
求められるのは、長いシーズンの中で必ずある調子の悪い時期に、勝ち点を落とさずにできるだけ早く乗り切るマネージメントだ。
そういった視点で見ると、前半戦の不調は期間が長すぎたし、転換を図るのが遅すぎた。前半戦の失速から立ち直れないこともあるなか、ここにきてCLの効果もあってペースを上げられているのはせめてもの救いではあるが、今シーズンのアップダウンの仕方は、今後に生かさなければならない課題になっている。
つまらなくても結果を繋ぐこうした試合が、代表戦明けなどのコンディションの厳しい時期に出来るかどうか。
今シーズンは、リーガは現実的ではないので、こういう成果をCLへ持続できるようにモチベーションの維持に役立てていってもらえれば。
■最後に
今週はミッドウィークの試合がなく、オフも与えられてチームの面々はリラックスモード。最終盤に向けて、良いタイミングで充電できそうで何より。
週末はジローナとベルナベウで対戦。
またも中位のクラブ。下手な躓きでダメージを受けたりベルナベウを敵に回したりしてしまわないよう、次節は内容も伴う試合が出来ることを期待している。