前節に続いて大勝。ここまでの3節を見ると、リーガの中位以下に対しては安定して戦えそうな印象になっている。
■マドリーの先発メンバー
GK:クルトワ
DF:カルバハル、バラン、セルヒオ・ラモス、マルセロ
MF:カゼミロ;モドリッチ、クロース
FW:ベイル、ベンゼマ、アセンシオ
62分:モドリッチ→イスコ、78分:アセンシオ→セバージョス、85分:ベイル→ルーカス・バスケス
クルトワが先発。バラン、モドリッチのW杯決勝コンビも初めて先発に名を連ねた。
GK:クエジャル
DF:フアンフラン、ブスティンサ、スロバス、ジョナタン・シルバ
MF:エラソ、グンバウ;ルベン・ペレス、サントス、エル・ザール
FW:カリージョ
69分:エラソ→ベスガ、エル・ザール→エンネシリ、81分:サントス→ロラン
前節は引き分け。ここまで2試合とも2失点している。
■守備への切り替えとカゼミロ先発の意義
ポゼッション主体、失ったら前線のプレスでロングボールを蹴らせる、という流れはこれまでの2試合と同じ。
レガネスは早い段階で両サイドへの展開に対しスライドできるよう4-1-4-1に変化、マドリーの揺さぶりがそれを上回れるかどうか、といった様相に。
マドリーの守備への切り替えは、高い位置で奪い切ることを目的としているというよりも、選択肢を限定させてロングボールを蹴らせれば良いという寄せ方。
全体として一気に密集して寄せていくのではなく、ボールに近い2、3人のプレーヤーがサイドに追いやっていく。
事細かに守備の約束を作ってプレーヤーを強く束縛しなくても良い、マドリーのようなチームに向いた方法と言えるだろう。また、ここ数年身についているリトリートしての守備にも切り替えやすく、ロペテギの守備の調整はまずまずうまくいっている印象だった。
蹴らせたボールを競ってマイボールにすることを考えると、ピボーテのファーストチョイスは当面カゼミロになるのではなかろうか。
蹴らせることに成功しても前線の独力で収められては意味がないから、両センターバックとカゼミロが競って周囲が回収する形を確立すべきだろう。
そう考えると、カゼミロが自由に高い位置に進出するのは良くない。この試合、特にスコアレスの時間帯に上がっていく場面が散見されたが、彼は低い位置に留まった方がチームとしては整理しやすい。
逆にそこまで攻撃的に振舞うならセバージョスやイスコを起用した方が良い、という判断になってしまう。カゼミロが先発であるならば、役割に徹するべきだ。
■サイドと中央のバランス
さて、押し込んでからのこうした守備方法だから、ショートカウンターの機会はそう多くはないということになる。ハーフライン近くでボールを回収して、攻撃をやり直す時も、相手は自陣からほとんど出てきていないからだ。
マドリーは延々とポゼッションして攻めることになり、この試合でも支配率は70%を優に超えていた。このボールを持つ展開で、ごく狭いスペースをどう攻略するかが大きな鍵となってくる。
プレーヤーの特性も考えると、サイドでディフェンスを剥がしてクロスを入れる形を中心としながら、折を見て中央からエリア内で勝負、という配分になるだろうか。
この試合でもカルバハル、マルセロにスペースがある時はサイドからチャンスが作れていて、ベイル、ベンゼマのゴールに繋がった。
自分で仕掛けられるアセンシオがエリア内で突っ掛けることで、ペナルティの獲得にも結びついており、この試合でもサイドを基本にしつつ安定した攻撃ができていた。
あとはスライドについてこられる組織、対人で簡単に勝てないプレーヤーがいるチームと当たった時に、我慢してこのやり方を続けられるかどうかだ。
状況によってはもっとシンプルにボールを入れていかざるを得ないことも想定され、そうなった時はこの試合出番がなかったマリアーノの身体能力の高さは重宝しそう。
■守備の我慢も
我慢、という点で言うと守備もそうで、先制は今まで以上に許したくない。
失点しても相手が出てくる展開になればやりやすいが、今のマドリー相手であればより引きこもる選択をさせるのみとなるので、攻撃の手詰まりが顕著になりそうだ。
だから、この試合のように最初の本格的な攻撃でペナルティを与えるといったようなことは厳に慎まなければならない。
この場面は低い位置で奪われてからの速攻を受ける形となっての展開。こうした悪い奪われ方は今後も想定されるが、その時に数的不利でも粘って我慢の守備が維持できるかどうか。
数少ないレガネスが出てきて奪おうとするタイミングでまんまとやられており、良い教訓になったと捉えたい。
相手が出てきたタイミングでは、かわしきって速い展開、という形も作れるようになってくれば、得点は取りやすくなる。特にカゼミロが狙われるので、サポートしてプレスを剥がせれば遅攻に速攻をミックスしたよりバランスの良いチームになっていける。
今はかわして再度攻撃を作る、というスタンスのようなので、さっさと縦にボールを運ぶような形も多く見てみたいところだ。
■前線の変化、中盤の奮起
ベイルが1得点、ベンゼマが2得点と、前線の得点が伸びているのは良い傾向。少なくともこのレベルの相手に対しては、ロナウド分の得点はカバーできそうだ。
ロナウドがいなくなった分、中央にいる時間を増やすことで、ボールの最終的な受け手になれている。以前であればサイドに開いてボールを動かす役割だったベンゼマが、受けて叩いてからそうせずに中央に留まっている場面などは印象的だった。
アセンシオの無得点が少し話題になっていたが、彼がこれまでのベンゼマの役割を担っている格好なので、得点がないことは自然な流れだしそこまで問題とは思わない。
エリア内で仕掛けることでペナルティを誘発している点を見ても、密集しがちな今のやり方において仕掛けられる彼の存在は貴重だ。ここまで十分な働きをしてくれていると評価すべきだろう。
中盤では、モドリッチが落ち着いたプレー。コンディションはまだまだだろうが、最初の先発で問題ないパフォーマンスだった。
セバージョスも同様にボールを動かす役割で、終盤のテンポアップに一役買った。彼のおかげで終盤だれることなく攻撃が続けられたといって良いだろう。
彼らより前でプレーしてほしいのがイスコ。ルーレットはハイライト相当の価値があったが、重要なのはあのプレーがエリア内で行われたことと、その後ゴールに向かう姿勢があったこと。
彼の技術が高いことはもう分かっている。低い位置でのプレス回避は他のプレーヤーに任せて良いので、その技術をゴールに直結する場所で生かしてほしい。
途中出場ながらこの試合ではそうしたプレーエリアで仕掛けられていたので印象が良かった。ボールを触りに降りていくようだと、進歩がなくなってしまうので、これを続けていってもらえれば。
■最後に
前節に続いて4-1での勝利。ゴールを挙げられていること、またそれが前線の面々のものであることから、ここまでは予想より良い流れだと感じる。
やはり昨シーズンのような取りこぼしは少なくて済みそうなチームになっていると言って良いだろう。
代表戦明けは、アスレティック、CLローマ、セビージャ、アトレティコといったクラブとの対戦がある。
例えばアスレティックを相手に、プレス後のボール回収が問題なく続けられるかどうか。また、アトレティコに対しポゼッション主体で得点できるかどうか。こういったポイントを乗り越えてこれらのクラブに勝つ試合を作れれば、ロペテギの今のやり方を皆確信できるだろう。
明らかにチームは変わり、ロペテギのやり方が浸透しつつある。今後の成長に希望を持って見ていきたい。