勝ち点もなければ見るべき内容もなし。得るもののない敗戦となった。
■マドリーの先発メンバー
GK:クルトワ
DF:オドリオソラ、バラン、セルヒオ・ラモス、ナチョ
MF:カゼミロ;モドリッチ、クロース
FW:ベイル、ベンゼマ、セバージョス
46分:ベンゼマ→マリアーノ、62分:カゼミロ→アセンシオ、80分:ベイル→ビニシウス
セバージョスがインテリオールではなく1列前での起用。
■アラベスの先発メンバー
GK:パチェコ
DF:シモ・ナバーロ、マリパン、ラグアルディア、ドゥアルテ
MF:トマス・ピナ;イバイ・ゴメス、ワカソ、ブラシャナツ、ジョニー
FW:カジェリ
67分:イバイ・ゴメス→ソブリーノ、74分:ワカソ→マヌ・ガルシア、88分:マリパン→アギレガリビア
ホームでは2失点。堅守が光る。
■CSKA戦の位置付け、振り返り
アトレティコ戦後にロシアへ移動してのCSKA戦。ベストと考えられるメンバーで戦ったアトレティコ戦を終え、ミッドウィークのアウェイということで、ローテーションの機会だった。
それは、この2週間ほどの間、明らかに上手くいかなくなっていた今のやり方を修正するチャンスでもあったわけで、アウェイであるがゆえに、メンバーの入れ替えにより違う形の展開が見えると希望が持てるかもしれない試合でもあったわけだ。
にもかかわらず、休みはベイルとラモスだけ。先発はバスケス、セバージョス、ナチョ、レギロンと入れ替わったが、抜本的な入れ替えではなく、これまでの序列相応のローテーションであり、当然ピッチでのやり方も変わったところはなかった。
アトレティコ戦の後半に改善した要因の1つである、センターバックとサイドバックの間のスペースの活用も少なく、サイドに展開しては仕掛けることもなく下げて、攻撃をやり直すことの繰り返し。
守る側は早くブロックを作りさえすれば、マドリーは危険なプレーをしてこないので安心だ。
ゴールに向かうために必要なリスクを誰も取らない、自己目的化したようなポゼッションに終始して、開始早々の失点を取り戻すことさえできなかった。
■切ないほどに同じ
そのCSKA戦を経てのアラベス戦。
セバージョスの起用に新奇性はあったものの、構成はこれまで通り。CSKA戦同様、早くリトリートする相手に対し効果のあるパスや仕掛けはなし。サイドに振る、仕掛けずに戻すの繰り返しで時間を浪費した。
アトレティコ戦で見られた形も1週間で今は昔といった様相。効果的なスペースに飛び込むことさえない、足下で繋ぐだけのポゼッションが延々と続くこととなった。
4-1-4-1のアラベス。トマス・ピナの両脇はカゼミロの両脇同様急所になり得るところだ。
ここに入って、前を向くプレーヤーを作ったり、最終ラインと勝負する前線を使ったりできれば、エリア内でプレーできる機会を増やせるのだが、まずここに入るプレーヤーがいない。
幅広くピッチを使った後、中央や縦にボールが入らずに下げるだけ。縦を空ける手数をかけると、その分中央が薄く、クロスの確率を考えて上げない。いずれにしても、アラベスが嫌な仕掛けができることなく、支配率のみが高くなっていた。
「ボールは疲れない」ということは事実だが、効果的な攻撃を続けるためにはボールとともに人もスペースに入っていく運動量を割かなければいけない。
良い位置に入るランニングがなく、足下で繋ぐだけで崩せるほど楽な相手はいないし、マドリーがポゼッションすることが広く知られているのだから、相手はしっかりリトリートすることを徹底してくるわけで、より厳しくなる。
フリーランが少なく、足下ばかりになるのはコンディションの問題もあるのだろう。現状の攻撃の形で、「シュートまではいけている、入らないだけ」と本気で考えるプレーヤーはさすがにマドリーにはいないはずだ。
ボールを動かすために必要な運動量を維持できない状態で、待ち構える相手を崩しきるのは余りにも難しい。
少なくともコンディションが上向かない限りは、仕掛けのないつまらない試合が続くことになるだろうと考えられる。
■起用法から刷新を
当初、ロペテギはコンディション重視でやりくりしていると考えていた。
絶対的な主力だがW杯で疲労したモドリッチを途中交代させ続けていたことや、ベイルの取り扱いから、そのように解釈していたのだった。
しかし、現状ではそう考えるのは難しい。
明らかにペースダウンしているにもかかわらず、ベンゼマ、クロース、カゼミロといった面々は先発を続けていて、今のやり方において良い意味で異質なマリアーノ、ビニシウスは中途半端な序列で先発機会さえない状況だ。
少数精鋭でシーズンをやりきる、というのは1つの考え方ではある。
実際、ジダンは実質的にはチーム全体を使うことなく、序列上位の面々を重用してCL三連覇まで到達した。
リーガを取れなかったことを見ても、デメリットがあるのは明らかだが、それでも十分なレベルが維持できれば、少ない試合数に集中できるCLでは強みが生きることになる。
だが、それはうまくいっている時の考え方だ。
今のマドリーはそうではない。どんどん内容が悪くなっていて、ロナウド移籍の影響とか、イスコを欠いているとかといった個々の事象よりも大きな問題を抱えている。
シュートできていたところからミドルシュートのエリアまで遠ざけられ、今はそのミドルシュートできるところにボールが入ることさえ覚束ない有様だ。
これが後退でないことがあろうか。
ポゼッション主体はロペテギの身上だろうから、その転換を迫るつもりはない。
だが、4試合無得点を続けておいて、チャンスは多いが運悪く入らないだけだという説明には無理がある。
起用法においては、これまでのパターンにとらわれない思い切りで打開する必要があるだろう。
そういう思い切りがなければ、ロペテギがシーズンを戦い抜くことはないだろう。
■最後に
代表戦があって、次節は20日。レバンテをベルナベウに迎える。
解任論は盛んになっていないので、ロペテギ体制を前提とするが、それぞれ代表に招集されてからのレバンテ戦でも先発に変化がなければ辛い。
ポゼッション主体のチームにあっても、思い切りのある仕掛けができる野心が求められていると言えよう。
監督、プレーヤーともに考え方を変える必要がある。