万全、とはいかない内容ながら、アウェイで勝利。
今はこうした積み重ねが大事。
■マドリーの先発メンバー
GK:クルトワ
DF:オドリオソラ、バラン、セルヒオ・ラモス、マルセロ
MF:カゼミロ;ベイル、モドリッチ、クロース、ビニシウス
FW:ベンゼマ
69分:ビニシウス→ルーカス・バスケス、75分:ベイル→イスコ、81分:ベンゼマ→ヨビッチ
カルバハルは出場停止の持ち越しがなくなるかどうか微妙だったようで、招集はされたがプレーはせず。
ベイルが先発に入った。
■セルタの先発メンバー
GK:ルベン・ブランコ
DF:ケビン・バスケス、コスタス、アラウホ、オラサ
MF:ブライス・メンデス、ロボツカ、ベルトラン、デニス・スアレス
FW:イアゴ・アスパス、ガブリエル・フェルナンデス
75分:ロボツカ→ピオネ・シスト、82分:ベルトラン→シェイク、88分:ガブリエル・フェルナンデス→ロサダ
昨シーズンは下位に沈んだセルタ。今シーズンは巻き返しとなるか。
■互いの狙い
ボールを長く持ったのはセルタ。
マドリーは序盤勢いよくプレスに出て行ったが、技術がある中盤の4枚がマドリーの中盤のポジショニングのずれを見逃さず、うまくプレスをはがして全体を押し上げていた。
4-1-4-1の弱点であるカゼミロの両脇をいかに使うかが彼らにとって生命線で、デニス・スアレスが左サイドから絞った位置に入り、たえず脅威に。マドリーの両翼、ベイルとビニシウスはきちんと戻って守備参加しようとする意思が見受けられたが、それ以上の守備貢献を期待できる2人ではないし、攻撃の主力として出て行ったあとは、戻れる位置にいるとも限らない。
デニス・スアレスとイアゴ・アスパスのところは、試合を通じてうまく使われることとなった。
マドリーは相手の出方に合わせたリアクション主体のプレー。ジダンらしい、現実的な対応だ。
セルタが積極的にボールを持って押し上げていたのと、両サイドが速いタイプではなかったということで、その裏を低い位置から出ていくベイルとビニシウスが狙う形に活路を見出そうとしていた。
こうして互いにラインの間を狙い合う試合に。
そこで最初に狙いを成功させたのはマドリー。12分、左に流れたベイルに縦パスが入って勝負できる局面を作り、クロスを供給。ベンゼマとビニシウスが飛び込んで、最後はベンゼマが合わせ先制した。
右サイドでのベイルは、左足を使える中へのコースが切られて特長が生かせないいつものパターンだったが、斜めに走る形でマークをずらし、生きられるスペースを得ることができていた。
ビニシウスも常に2枚で見られて思うようなプレーとはいかなかったが、こうした場面でベイルの動きに合わせてゴール前に出てくる動きには好感が持てる。
60%近い支配率と左サイドの効果的な攻撃を見れば、セルタの良いシーンはもっとあってもおかしくなかった。だが、最終ラインの組み立てが良くなく、縦パスを多く入れられることはなかったのと、デニス・スアレスとイアゴ・アスパスのところ以外ではこれといったアイデアがなく、マドリーにとっては押し込まれ続ける最悪の展開とはならずに済んだ。
■問題は右サイド
マドリーの問題は右サイド。
前述の通りベイルがセオリー通りの対応で右サイドで詰まっていて、オドリオソラもそれをカバーするプレーができなかった。
オドリオソラは押し込んだところでボールを受けてもクロスに至れないことが課題。抜き切らずともボールを供給できればいいのだが、その前に引っかかることが非常に多い。この試合でも、彼から良いボールが出てくることはなかった。
こうも成功率が悪いと味方も信頼して動けなくなる。カルバハルとの差は大きいと言わざるを得ない。
しかも前半アディショナルタイムには、無用なボールロストからあわや失点という場面を作ってしまった。
VARの介入によりオフサイドが判明し、ゴールは取り消されたものの、プレーを選択する判断の悪さが攻守で目立った。技術的な問題よりも、精神的な問題も大きいのかもしれない。
左利きを右サイドで使うなら、カットインのプレーを助けるためサイドバックの支援が欠かせない。
そうしたことを考えても、攻撃性能に優れるカルバハルの地位は揺るがない。サイドバックの層は厚く、オドリオソラは今シーズン改善が見られないと厳しい立場になるかもしれない。
■モドリッチが退場
後半も当初は前半と変わらず。
試合の様相が変わったのは、モドリッチが56分に退場してからとなった。
その前にモドリッチの退場について。
まずはこれが今シーズンの今後の判定基準となるかどうか。
意図的な行為ではなかったように見えたが、プレーヤーの安全に関わる身体の部位に対するチャージ(今回はアキレス腱)は一発退場とのレギュレーションに抵触したとのこと。
このような偶発的に見える状況であっても、接触部位というプレーの結果を重く見て退場処分を下すということであれば、今シーズン退場者はかなり増えることになるように思われる。
あとは、このプレーが発生したのが、もともとやられ続けていた右サイドで、モドリッチがサイドにまで張り出してカバーに回っていたエリアということ。
前半の弱点を修正できなかったことで、こうした形に至ったということだ。
数的優位に立ったセルタだが、明確に形を変えはせず、これまで通り左を使って崩しにかかる。
マドリーとしては、対応しきれない間に混乱の度合いが増える方が危険。まだ時間も長かったことで、セルタが思い切ったやり方に転じず、助かった。
■追加点と交代策
61分にクロースのミドルシュートが決まり2点差に。
セルタの守備の足が少し止まったタイミング。年に数回あるくらいだろう素晴らしいミドルシュートがこの場面で出て、得点差としてもかなり楽になった。
マドリーはその後の交代でバスケスを投入。
1人減ったことで、バランスを崩してのプレスや攻撃をするデメリットが大きくなって、引きこもる方針が明確になった。
バスケスはこうしてサイドのスペースを埋める役割は得意なので、ここで試合が落ち着くことになった。
バスケスの序列が高く、右サイドの交代ならとにかく彼を使う、という状況は良くないが、こうして守備的な対応のために役割を限定して使うならば、利点は多い。
更にイスコを使い、ボールを持てる時は左サイドで落ち着かせられる形に。押し込まれまくるのも良くないので、左サイドから陣地回復を図ろうとしていた。
この試合ではイスコの状態が良く、マルセロとの関係でセルタの守備をかわすことができていた。
ピオネ・シストを入れ、ようやく攻撃的に変化しだしたセルタだが、2点差があるマドリーはこの形でのらりくらりのモード。
80分にはまたも左サイドから、マルセロ、イスコ、ベンゼマの関係で崩し、最後はバスケス。珍しく良い精度のシュートを決めて3点差とし、試合を終わらせた。
セルタが望むような数的優位が生きるスペースが広い展開となったのは最後の15分程度。それを生かして1点取れたのはアディショナルタイムに入ってからで、マドリーは余裕をもって試合を終わらせることができた。
■最後に
バスケス、イスコと交代策が奏功。アクシデントを乗り越えて望ましい試合展開に持ち込むことができた。
留意しておくべきなのは、終盤までセルタを抑え込んだという内容ではない点。
先制できたこと、セルタが思い切れなかったことで猶予を得てその間に追加点が取れたことが大きく、セルタの良い場面はあった。場合によっては先に2点取られていたかもしれない。
これで問題なしとして済ませるべきではない。
もちろん、ジダンの采配と運の強さは素晴らしい。アウェイの開幕戦でこうした「引きの強さ」があるのは、前回のジダン期を髣髴とさせるものがある。
課題を認識しつつも、いい結果を得たこともきちんと評価したい。
そのバランスを欠いてしまうと、継続性を失うことになる。今は結果をつないでいくべき時期だ。極端に振り切れた評価をせず、やっていきたいところ。
次節はベルナベウ。バジャドリーを迎える。