先制を許すも立て直して勝利。代表戦明けの難しいタイミングの試合を乗り切った。
■マドリーの先発メンバー
GK:クルトワ
DF:カルバハル、バラン、セルヒオ・ラモス、メンディ
67分:ロドリゴ→ベイル、76分:バルベルデ→クロース、83分:モドリッチ→イスコ
メンディ、ロドリゴが先発。お騒がせのベイルはベンチ。
■レアル・ソシエダの先発メンバー
GK:レミロ
DF:ザルドゥア、ディエゴ・ジョレンテ、エルストンド、モンレアル
MF:メリーノ、スベルディア;ポルトゥ、エーデゴーア、オヤルサバル
FW:ウィリアン・ジョゼ
CL圏内も狙えそうな位置につけている。マドリーとしてはリーガで問題なくエーデゴーアがやれているのが好材料である。
■意外な試合展開
2分にセルヒオ・ラモスのバックパスをウィリアン・ジョゼに狙われ、あっさり失点。連続無失点は5試合で止まった。
代表戦明けでコンディションが悪いと思われる中、先制されたことで暗雲が漂った。
リードされた相手にリトリートされてボールを渡され、攻めあぐねてバランスを崩しカウンターを受ける、これまで何度も見た展開が容易に想像できたからだ。
ターゲットになれるウィリアン・ジョゼがいて、ポルトゥとオヤルサバルのサイドは速さがあり、エーデゴーアは彼らを操れる。悪いボールロストを繰り返すと、彼らの餌食になるのは時間の問題だ。
ところが、意外にもマドリーのプレー強度は悪くなかった。
ボールロストの後の切り替えは最近の試合同様に速く、蹴らせた後の回収も集中してできていて、ほぼミスはなかった。
ラ・レアルは、2、3列目とサイドバックが絡むプレス回避が見事で、前半何度かカウンターのチャンスを作られた。どれかが決まっていれば流れは一気に傾いただろうが、マドリーはクルトワの好守もあり凌いでいった。
ラ・レアルもマドリーの組み立てを阻害すべく高い位置でプレッシャーをかけていたことで、爪を噛むような攻撃を続け、逆にカウンターを受ける試合になるのではないかという失点直後の予想は外れ、互いに積極的な守備で速攻を狙う展開となったのだった。
マドリーの守備で目立つのはバルベルデの出足。
彼がベンゼマと同じ高さで寄せていって、アザールとロドリゴがサイドバックを消し、カルバハルとメンディはポルトゥとオヤルサバルへのコースを見ているから、繋ぐのはそう簡単なことではない。
バランスを崩してでも寄せていくバルベルデの動きは、周りがついてこなければ無謀で、相手にスペースを明け渡すだけになるが、今は彼の動きに周囲がついていっている。
彼の出足がスイッチになっているという言い方もできるし、逆にチームもそれを想定して守備の対応をしていると言うこともできるだろう。
これがどの程度デザインされた守備のやり方なのかはわからない。推測にしかならないが、これまで通りであればジダンは、そこまで守備のやり方を作り込む監督ではないから、細かく決まった約束はないのではないか。
とはいえ、守備免除のロナウドをセンターフォワードの位置においてCLで勝った実績は確か。プレーヤーの配置によって負けづらいやり方になるようにすることはできる。
事細かに約束事を設けるやり方では、マドリーではチームの管理が難しくなる。そうではなく、効果が出る形になるようそれとなく仕向けることで、こうしたプレーを実現しているのだ。
だから、最適な組み合わせが見つからないといつまでもダラダラとした試合になってしまうが、はまればガラリとチームが変わるのだろう。
最近で言えばロドリゴの登場がそうだ。自信を失ってプレーが中途半端になっていたビニシウスと入れ替えたところ、ロドリゴは守備も周囲に合わせて行ってくれるから、バスケスに頼る必要性も薄くなって、攻撃がシンプルで良くなった。
アザールが同時期に復調してきたという幸運もあって、彼も今のところは最低限の守備をしてくれていることから、良い内容の試合が続くようになっていると考えられる。
■逆転
さて、強度の高い試合となったことで、マドリーにもチャンスが。
流れの中でシュートチャンスは多くなかったものの、速い展開になると中盤でファールをもらえる機会も増える。アザールやモドリッチのボールキープは素晴らしく、1人で
応対して前を向かせないためには足を出さざるを得ない。
こうして得ていたファールを生かし、37分にフリーキックからベンゼマが押し込んで同点。
良い位置と言えるフリーキックではなかったが、モドリッチのボールの質が高かった。ベンゼマも肩付近にうまく当てた。こういう場面で良い蹴り方ができなくても押し込めるのには、勝負強さを感じる。14節で10ゴールという結果には驚きはない。
47分にはバルベルデのゴールで逆転。
縦パスを前で奪ったバランからアザールを経由し、左サイドのベンゼマへ。ベンゼマのクロスが相手に当たったところをモドリッチが回収して、その落としをバルベルデが蹴り込んだ。
オヤルサバルに当たったボールはレミロの逆へ。シュートしたことで幸運が転がってきた。バルベルデは躍進に2試合連続ゴールという箔もつけた。
この2点目は、ラ・レアルの守備によってセルヒオ・ラモスがロングボールを蹴り、ボールを渡したところから。
ディエゴ・ジョレンテにモドリッチが寄せた時、周囲のプレーヤーはそれぞれ見られていた。バックパスではなく縦パスを選択したところを奪っての速攻で、マドリーの狙い通りである。一旦はラ・レアルが狙った通りに守備をしてボールを得たものの、その後のプレーでマドリーが上回った。
この試合のプレーを象徴するような流れでのゴールだった。
リードしてからのマドリーは下がっての守備も多く選択するように。
ボールを持って攻めることになったラ・レアルに良いところでプレーさせず、守備組織の外側でやらせることができていた。
前半は前を向いて良いところを出せていたエーデゴーアも、後半はボールの中継程度で、ライン間で受けるようなプレーを多くすることはできなかった。
■ベイル
話題のベイルは67分に交代出場。ロドリゴとの交代は、ロドリゴに無理をさせない計画通りのものだろう。
ただ、ここでベイルを使うというジダンの選択はすごい。ベイルのプレーが悪いと、最初になぜ彼を出したのかとジダンも批判されることも覚悟しての選択である。
ブーイングされることは分かっていても、ピッチに送り出す。
それは、「チームにいる限りは戦力として信頼する」ということの表現でもあり、その一方で「それだけのことをしたのだから、批判を実感しなさい」ということでもあるように思う。
ベイルにはベイルの考えがあり、それを理解した上でチームは彼を変わらず受け入れているようだった。ただ、それとは別にマドリディスタにも感情を表現する機会はあるべきで、それがないと、いつまでもこの話題を引き摺ることになる。
ジダンは今後もこうしたブーイングが続かないことを願うと述べていて、実際そうなることも危惧されるような大きなブーイングではあったが、逆にこうした発露がなければ、落としどころがなくなってしまう。
チームは受け入れ、マドリディスタはブーイングで批判した。形式的にはこれで終わりにできる。
この交代は、この後もブーイングが続くのかどうかは今後の彼のプレー、それ以外の言動による、と先に進むことができる契機を作る儀式だったと言えよう。
そのベイルのプレーはまずまず。
代表から帰ってきての試合にしては動きが良く、スピードもあって、右サイドの裏のスペースを使えていた。
74分のモドリッチのボールは彼のクロスから。ベンゼマが落としたボールをモドリッチが左足のボレーで蹴り込んだ。
ベイルの右足は、精度についてはそれほど期待できないが、それでも蹴る選択ができるコンディション、メンタリティが見て取れる。自信がない時は利き足に持ち替えがちだから、右足でクロスを上げられている時は状態が良いと思われる。
プレーはこれで良い。あとは、それ以外の面で悪評を過去のものにする姿勢を示してくれれば。
終盤はマドリーがやりたいようにプレー。ラ・レアルの攻撃に良いところを出させず、3-1で勝利した。
■最後に
チームを牽引したバルベルデ、モドリッチを休ませてクロース、イスコを入れる交代も理想的。モドリッチとクロースを入れ替えられればコンディションは維持しやすいし、ワンポイントならイスコのインテリオールも大きな問題にはなりづらい。
短い時間とはいえ、うまくやりくりしてCLに臨むことができた。
そのCLはPSGとの対戦。今のチームの力量を測れる良い機会だ。
週末はアラベスとアウェイで対戦する。