レバンテ戦で負傷交代したアザールは、その後の診断で腓骨に亀裂が入っていることが判明した。
復帰までは2か月と報じられており、その通りなら復帰は早くとも4月末である。手術を勧める声もあり、そのタイミングで完全復帰できるとは思えないことから、事実上彼の今シーズンは終了したと考えざるを得ない状況だ。
主力の負傷はもちろん痛手である。
その前提は共有した上で、今回のアザールに関しては別の考え方も提示してみたい。
アザールのマドリーでのキャリアはハムストリングの負傷で始まった。
開幕から1か月が経った第4節レバンテ戦(奇しくも今節と同じレバンテ戦である)までデビューはお預けとなったのだった。
その後のマドリーは苦しんだ。一時はジダンが解任されるのではないかと報じられるくらいまで落ち込んだ。
アザールはコンスタントに出場機会を得たが、数字としては1ゴールのみで、チームを引っ張るほどのプレーはできていない。
チームがトンネルを抜け出したのは、CLグループステージ第4節ガラタサライ戦あたりからである。
バルベルデがおなじみの中盤のトリオに食い込み始めたことに加え、ロドリゴの抜擢もあって、高い守備強度と、最前線に中盤も出ていく厚みのある攻撃を両立できるようになり、チームは波に乗った。
しかしながら、好調のチームでアザールがプレーできたのは4試合だけとなってしまった。CLグループステージ第5節PSG戦で負傷し、長く離脱することとなってしまったのである。
アザール不在の間も、チームは好調を維持した。
昨年末の3連続引き分けなど不安もあったが、リーガ最少失点というマドリーらしからぬ堅実なプレーを続け、前節まではリーガ首位に立っていた。
そこで、私たちは夢想してしまった。ここにアザールが帰ってきたらどれほど素晴らしいチームになるのだろうかと。
ところが、そううまくはいかなかった。
マルセロの起用や、イスコとの併用、バルベルデの不在など組み合わせの問題はあるにせよ、アザールのいる左サイドにプレーヤーが大きく偏り、ゴールは遠くなった。
「これまでの攻撃にアザールを上積みする」という単純な足し算にはならなかったのである。
本来であれば、主力級のプレーヤーがやってきてベストの組み合わせを探す作業は、プレシーズンとシーズン序盤に行われるべきものである。
それをシーズンの成否がかかったこの重要なタイミングで行うのは、非常に困難なミッションだ。この時期に結果を出しつつプレシーズン同様の調整をしなければならないのだから、困難さは想像に余りある。
しかし、今回のアザールの負傷により、幸か不幸かその困難な課題は実施されないこととなった。今後はアザールがいないこれまでのチームを前提に考えることとなる。
いわば、マドリーは今ようやくプレシーズンを終えたのだ。
新たな要素を組み込むことを考えず、計算が立つメンバーを動かすことを考えれば良いのだから、ある意味でジダンの負担は少ない。
12月から1月にかけて確立した、カゼミロとバルベルデの併用、メンディの登用による堅実な組織をベースに考えることができる。
冒頭に書いた通り、主戦力を欠くことは痛手だ。だが、アザール抜きでうまく成立していたチームをそのまま用いることができるという意味では、選択肢が広くなり過ぎず、やりやすくなる可能性さえある。
アザールを待ち続け、恋焦がれるのはここで終わりにして、今あるチームで前に進むと切り替える良い機会と捉え、重要な試合に臨んでほしいと願っている。