雨の降りしきるベルナベウで快勝。バルセロナに対しベルナベウでのリーガで勝つのは5シーズンぶりとのことである。
■マドリーの先発メンバー
GK:クルトワ
DF:カルバハル、バラン、セルヒオ・ラモス、マルセロ
MF:カゼミロ;バルベルデ、クロース
FW:イスコ、ベンゼマ、ビニシウス
79分:イスコ→モドリッチ、86分:バルベルデ→ルーカス・バスケス、89分:ベンゼマ→マリアーノ
マルセロの先発起用は意外。インテリオールはバルベルデとクロースの組み合わせ。
■バルセロナの先発メンバー
GK:シュテーゲン
DF:セメド、ウムティティ、ピケ、アルバ
FW:グリースマン、メッシ
69分:ビダル→ブライスウェイト、80分:アルトゥール→ラキティッチ、グリースマン→ファティ
ラキティッチがベンチ。守備時の4-4-2の形で表記しておく。
■狙い通り?
前回対戦時は、前から人につくプレスが機能した。
メッシ、スアレスに効果的にボールを供給することを妨げ、彼らを試合に参加させないようにすることができたのだった。
さて、今節はバルベルデからセティエンへと、バルセロナの監督が代わっている。
ポゼッションを好む監督とのことなので、マドリーはプレスでバルセロナの攻撃を寸断できるかどうか、バルセロナはそれをはがして前線で良い場面を多く作れるかどうか、という試合になるかと思われた。
ところが、高い位置での守備の強度は思ったほど高くなかった。
バルセロナはピケやブスケツを出発点としてサイドを使い、中央へ戻す形でスムーズにボールを運ぶことができていた。
マドリーのサイドバックが既に出ていった後や、バルセロナのサイドのプレーヤーに食いつきかけたところの裏をしばしば取られていたプレーが象徴するように、中盤より前でボールを奪うチャンスを作るほどには寄せられていなかった。
寄せが間に合わずにバルセロナにチャンスがいくつかあって、アルトゥールの抜け出しなど少なくとも3回の決定機があったのだった。
シティ戦においてエデルソンに寄せず、パスが出るのを待って受け手のところで応対していたように、シュテーゲンに対しても彼からボールが出る先をマークしていた。
ブロックを作るのであれば、前から人に当てはめてついていく必要はなく、さっさと下がれば良いのだから、このことから見えるように、マドリーは前から取りに行く意図は捨てていなかったものと考えられる。
よって、セルヒオ・ラモスの戦後のコメントには少し強がりが含まれているように見受けられる。
下がって守るやり方は、彼が言うほどチームとして明確に決まっていなかったか、普段通りのプレーが出てしまい、思うように実行できなかったと見るべきだろう。
ジダン「前半はハイプレスがうまくはまらなかったが、後半はずっと良くなった」
— 江間 慎一郎 (@ema1108madrid) 2020年3月1日
セルヒオ・ラモス 「前半はちょっとバルサにボールをあげて、少し後退すると決めた。良いか悪いかは分からなかったが、そうすると決めたんだ。そして後半にプランを変えた。相手陣地でボールを奪おう、ってね」 pic.twitter.com/HJThQiAnxy
マドリーの守備に問題があったので、バルセロナは苦労せずアタッキングサードでプレーできていた。
ただ、ポゼッションが好きな監督ということで、ここからしつこく攻撃を作り直すかと思いきや、それほどでもなかったのには少々拍子抜け。
崩しにアイデアがあれば危なかったので、ここはマドリーが助かった。
メッシ、グリースマンの周辺はさすがに密集しており、目先を変えるパスが出れば怖いところ。それがなかったので、彼らの周囲を狭くして人海戦術で可能性を消せばそれで済んだ。
■クルトワ
曖昧な守備で裏を使われたところを救ったのはクルトワだった。
股下が弱いなど、欠点を指摘する声もあるが、コースへの入り方や距離の詰め方は素晴らしい。
メッシのシュートは正面に入っていたし、アルトゥールの抜け出しの場面では駆け引きして最後にコースを消し、体に当てた。
守備が良く彼の出番が少ないに越したことはない。しかし、大きなセーブはこういう入り方をした試合を立て直す契機となる。
最後はクルトワが何とかしてくれる。
彼へのそうした信頼感が、後半の積極的な守備の実行の布石となったとも言えるだろう。
■受け手への寄せが改善
マドリーの後半の改善点は、バルセロナのパスの受け手に対する距離感である。
前半は遠かったので、サイドで容易に基点を作られた。
後半になり、受けた瞬間には確実に体を当てられる程度の距離からボールにアタックできるようになって、バルセロナが攻撃を始めようというところでボールを奪えるようになった。
安全に通せると判断していたコースが、後半になって急に厳しくなったことで、バルセロナの組み立てはかなり混乱したようであった。
収められるスアレスがいないので、ロングボールに対して前回対戦時ほどの心配は不要であり、蹴らせる分には問題なし。カゼミロやバルベルデがボールを回収し続けることができていた。
90分は持たない守備だし、結果として、前半の出来が良い餌として機能することとなったのだった。
ポゼッションを落ち着かせて計算できる攻撃を作り直すなら、ラキティッチを入れられる方が嫌だった。ブライスウェイトがいきなりチャンスを迎えていたので失敗と断じるのは難しいが、ポゼッションしたいはずの監督の最初の手としてはどうか。
マドリーは、前線にボールを届かせる前に奪いきる守備をこれまで通り続ければ良かった。つまり、守備の考え方を変えざるを得なくなる交代ではなかったのだ。
その直後、71分にマドリーが先制。
右サイドからのボールが長くなったところをビニシウスが拾い、攻撃をやり直し。クロースが受けてから、裏が空いている合図があってビニシウスがラン。
スルーパスを受けて持ち込み放ったシュートは、ピケに当たってニアを破った。
前半から左サイドのスペースを使っていたビニシウス。ボールは入っていたものの相手をはがせずにいたが、全てを帳消しにするような舞台でゴールを決めた。
形はアトレティコ戦のゴールと似ている。アトレティコ戦ではビニシウスがパサー側だったが、今回は受け手に回ってのもの。
同じ形でサイドを破れていることから、ボールを動かした後、裏を狙う形が確立されつつあるようだ。
■交代は妥当
バルベルデは最近サイドハーフのようにも振舞えるようになっている。今朝は彼の動きが良かったので、カルバハルも右サイドの一番外は任せて中央に絞ってプレーしていたほどだ。
サイドに開いていたのでエリア内でのプレーはほとんどなかったが、カルバハルやベンゼマとの関係で飛びだすプレーは効果的。足が速いのでサイドバックでも追いつくのは大変だし、体の大きさでミスマッチになる。
彼にはまだまだ可能性がありそうで、楽しみだ。
そのバルベルデに代えてバスケスは妥当な交代。その前にはイスコをモドリッチと入れ替えており、不安定要素をなくしつつ試合を閉じる意図が明確にあった。
守備強度が落ちない交代ができるのはマドリーの強み。攻撃に出ていく交代は心もとないが、リードしていると手が打ちやすい。
アディショナルタイムにはマリアーノのゴールでダメ押し。
入って1分経たずにスローインからのボールを持ちこんで決め切った。いきなり招集した彼がこうして運をつかむのは、良い時のジダンのチームらしいめぐり合わせである。
直後に試合終了。
CL敗戦の雰囲気を打ち消す結果で、リーガ首位を奪い返すこととなった。
■最後に
ビニシウスのゴールは幸運なシュートによるものだったが、彼の走る先にボールが出るようになっているということでもある。
ロドリゴの台頭やアザールの復帰といった試練が続いた後で、効率のいい受け方が継続してできるようになっているのだから面白い。ポジション争いが良く機能しているからこその彼の成長と言えるのではないだろうか。
とにかくこの舞台でのゴールの価値は計り知れない。更に進歩するきっかけになれば素晴らしい。
チームとしても良く切り替えて戦った。
最後一歩が出るかどうかというところで、ことごとく足が届いたのは、精神面の充実によるもの。
今朝は、ベルナベウの後押しを受けられるに値するチームだった。
次節はベティスとアウェイで対戦。
せっかくの勝利を次節ふいにしてはいけない。大一番に勝った後だからこそ、緩まずに臨んでほしい。