再開後無傷の10連勝を達成。優勝まで一直線に駆け抜けた。
■マドリーの先発メンバー
GK:クルトワ
DF:カルバハル、バラン、セルヒオ・ラモス、メンディ
MF:カゼミロ;モドリッチ、クロース
62分:ロドリゴ→ビニシウス、アザール→アセンシオ、84分:カルバハル→ルーカス・バスケス、85分:モドリッチ→イスコ、クロース→バルベルデ
■ビジャレアルの先発メンバー
GK:アセンホ
DF:マリオ・ガスパール、チャクラ、パウ・トーレス、キンティージャ
MF:アンギサ、モルラネス;ペーニャ、チュクウェゼ、モイ・ゴメス
FW:モレーノ
46分:チュクウェゼ→オンティベロス、ペーニャ→ブルーノ、63分:モイ・ゴメス→カソルラ、モルラネス→イボーラ、82分:アンギサ→トリゲロス
引き分けでEL出場が確定するところ。カソルラ、ブルーノの退団と引退が決まっており、感情的な部分でもモチベーションはある相手。
■守備から
互いに中盤を締めて、じりじりする試合。
ともすれば焦れて先に崩れるところだが、今のマドリーはこの展開に慌てない。先にやられさえしなければいつかチャンスは来ると、落ち着いて期を窺うことができる。
アザールは他のウイングに比べると守備強度が低い。
ベンゼマとの2トップにして前にいてもらい、守備負担を減らすのはロナウドがいた頃に習得している形で、違和感はない。
ベンゼマとアザールが限定していければ、4-4のブロックでその後を引き取って守れるため、大きな穴はできづらくやれる。
結果的には、縦にボールが入りかけたところを奪ってのショートカウンターから2点(1点はその流れからのペナルティ)を挙げたのだから、守備の狙いがはまったということ。
このところは、守備そのものの出来は良いが、得点に繋がるところまでは行けていなかったのだが、この重要な試合で前に出て奪う出足の良さが見られた。
奪ったカゼミロ、セルヒオ・ラモスのプレーはもちろんだが、その前でビジャレアルの組み立てにストレスを与え続けた前線やインテリオールの守備も忘れてはいけない。
お互いに無理に急ぐ必要はなくても、攻めるためには縦にパスを入れる必要があり、そこがスムーズにならないと違和感を抱えることになる。
マドリーはその点で先に焦れることなく、ビジャレアルが我慢できなくなるまで守備で組み立てを阻害し続けた。リーガが再開した後でやりたい形が一番良いレベルで実現した2点だった。
ジェラール・モレーノのゴラッソが決まって1点差となってからバタついたのは仕方ない。
ビジャレアルはカソルラ、イボーラといったあたりを投入し勝負をかけてきており、ここまでと同じ格好では守り切れなくなってきていた。つまり、組み立て段階で守備が介入することができなくなってきて、アタッキングサードへ進出される機会が増えてきていたのだった。
ここで凌げたのは、クルトワをはじめとする守備の奮闘と、ちょっとした運によるもの。
終盤のビジャレアルのチャンスは、どれかが入っていてもおかしくなかった。モレーノのヘディングも、技術の高さがあったとはいえ、出来過ぎとも言えるゴール。それで気落ちすることなく、前節同様水際で食い止めた集中力は素晴らしかった。
GKや最終ラインの相互の信頼感は強いように見え、ここまでやればフォローはしてくれる、最後は防げるという感覚があるようだった。
バタついて以前のマドリーに戻りかけたものの、結局は再開後はおなじみとなった先行逃げ切りで勝利。最終節を残し、3シーズンぶりの優勝を決めた。
■天の恵み
今節もそうだが、とにかく相手より先に崩れなかったのが再開後のマドリーであった。
思うようにいかないと、主に攻撃面でやりたいことが前面に出て、結局は先に失点してしまうというようなことはありがちである。
特にマドリーのように、普通にしていればある程度相手よりやれるはずのクラブが、攻撃で手詰まりになると、どうしてもそうした傾向になってしまうもの。
この未曽有のシーズンに、バランスを保ってプレーを続けられ、勝ち点を落とさなかった安定感は何にも勝る。今後を考える上でも重要な財産となるプレーで、結果を引き寄せたと言える。
再開後は、過密日程でどんどんと体力を削られていく。疲労は思考を鈍らせるから、安易な判断を取ってしまいがちとなる。
中断中、トレーナー陣がいかに綿密に再開後に向けた管理をしてきたか。当時は再開がなされるのかどうかさえわからなかったのである。管理する側もプレーヤー側も、どこかで妥協、馴れが出てしまっても責めることはできない状況だった。
その中で、再開後に相手を上回る集中を可能にするコンディションを整えた。この優勝は、そうした入念な準備が奏功した成果だ。
あまり出場機会がなかった者もいる。
例えばウイングは人材過多で毎試合誰が出てもおかしくなく、見る側には層の厚さだと映るが、プレーヤーの準備は難しい。
活躍しても次は休みかもしれないという状況で、モチベーションを維持して備え続けるのはなかなかできることではない。しかも、それを何名ものプレーヤーにさせるというのは至難の業だ。
ジダンは、そうしたことを無理なくチームにやらせることができる。
ジダンは厳しい言葉で鞭打つ必要がほとんどない。勝つための道を示せば、あとは皆自発的にその道を歩み始めるのだ。
そこにピッチやボールがあろうとなかろうと、彼が言うならばと無条件に信じさせてくれる。こうした能力は、望んで得られるものではない。ペレス会長はジダンを評して天からの恵みと言った。ジダンの力の一部は、まさにそうとしか言いようのない形で、チームに作用する。
試合中だけでなく、試合に至るまでの準備において、彼の存在が大きな力となって、ジダン自身が最も望むタイトルを手にすることができた。
■最後に
これで今シーズンの大きな目標の一つを達成。
二度とないかもしれない、難しいシーズンでここまで自律したプレーをできたことを、マドリディスタとして誇らしく思う。
最終節の後、CLまで3週間ほど。
2冠に向けては厳しい状況であるが、身体的には休みつつこの勢いを持ち込んで最後まで良い試合を期待したい。