ユベントスとの準々決勝に続き、アウェイでの第1戦で貴重なアウェイゴールを奪って勝利。先日のベルナベウでの試合のこともあり、油断大敵ではあるが、アドバンテージを得たのは事実。ドイツの地で重要な結果を挙げた。
■マドリーの先発メンバー
GK:ケイラー・ナバス
DF:カルバハル、バラン、セルヒオ・ラモス、マルセロ
MF:ルーカス・バスケス、カゼミロ、クロース、モドリッチ;イスコ
FW:ロナウド
46分:イスコ→アセンシオ、67分:カルバハル→ベンゼマ、83分:カゼミロ→コバチッチ
ベイル、ベンゼマのみならずアセンシオもベンチに置いてこの形。第1戦の入り方は徹底している。
■バイエルンの先発メンバー
GK:ウルライヒ
MF:ハビ・マルティネス;ロッベン、ハメス・ロドリゲス、ミュラー、リベリ
FW:レバンドフスキ
8分:ロッベン→チアゴ・アルカンタラ、34分:ボアテング→ジューレ、75分:ハビ・マルティネス→トリッソ
負傷者が多いバイエルン。試合中にも負傷が相次ぎ、彼らにとっては舵取りが難しい試合となった。
■変形を残しているメリット
ジダンはユベントスとの第1戦同様、イスコを先発起用。シーズン後半に機能している4-4-2を使わず、イスコを置いての形を選択した。
ユベントス戦では本格的に4-4-2に移行する必要なく3-0で勝利したが、この入り方のメリットは、こうした変形の余地を残していることにある。
後半疲れてきた時間帯にサイドに速いプレーヤーを置くと、サイドから圧迫していけるし、この試合のメンバーで言えば、アセンシオかベイルと選択肢もあった。
こうした変形の可能性があることが分かっていても、試合中に対応していくのは難しいし、その可能性があること自体が、相手にとって問題となる。
いきなり全ての手札を晒さず、試合展開を見ながら調整していくことができるということだ。
対するバイエルンは、ビダルがシーズンアウト。中盤で頑張れるプレーヤーを欠いていた。
そこでマドリーが狙い通り支配率を高くできれば、主導権を握って試合を進めることが出来たかもしれない。が、バイエルンは序盤から高い位置のプレスを徹底、マドリーは落ち着いてボールを持つことが出来ず、ターゲットが少ない前線へのボールを蹴らされ、バイエルンのポゼッションする時間が長く続いた。
そうなるとバイエルンの中盤は生きてくる。特にハメスの中央での仕事は素晴らしく、守備の間を通す楔のパスを何度も入れ、攻撃を加速させていた。
ロッベンが早々に負傷交代となったのは彼らにとって大きな誤算。前半の形では弱いマドリーの両サイドを突く役割の一人がいなくなって、チアゴが入ったことで、サイドの仕掛けはリベリが一手に担うことに。危険な仕掛けは多くあったものの、両サイドに振られる心配がなくなったのは、マドリーにとって幸運だった。
さらにボアテングも前半のうちに負傷交代。バイエルンは2つもの交代枠を早々に消費することに。
試合展開としてはバイエルンのやりたいことができていて、マドリーは良い形も作れず、凌ぐしかない前半だったが、バイエルンは交代によって形を変えることはできなくなっており、後半に向けて変形できるマドリーが挽回できる可能性が高まった状況にもなっていた。
■同点ゴールの価値
4-4-2に変形するにしても、相手に合わせるために変形するのではなく、相手に対応を迫る展開になることが望ましい。
その意味で、ほぼ何の前触れもないところから生まれたマルセロの同点ゴールの価値は単なるアウェイゴール以上のものがあった。
ハメスの縦パスにやられ、ナバスのミス(ディフェンダーのカバーもぎりぎり間に合っていたにもかかわらず、キミッヒのキックより先に中に倒れていた)で失点してしまい、そのまま行けば必要に迫られる形になる。
そうなると、アセンシオやベンゼマよりゴール前でプレーさせたいベイルをという選択肢が強くなるが、これまで何度も見てきたようにロナウドとベイルの前線が有効に機能する可能性は高くない。これでは試合展開を変えることは難しい。
いくつかチャンスを作っていたバイエルンが挙げた先制点を、一発で取り返してしまった効果もあって、試合の流れに大きく影響を及ぼすゴールになったと言える。
■アセンシオ投入が当たり
後半頭から、負傷していたイスコに代わってアセンシオ。サイドを埋めてくれるようになって、守備は安定した。
ただ、カゼミロが少し問題を抱えていて、奪うのは良いがその後の判断が遅い。彼のところでボールを持っても局面を変えるパスは出せないし、クロースやモドリッチを探している間に寄せられることを繰り返していた。
結果的にカードをもらったこともあってコバチッチと交代するが、立て直しつつあるチームの中でもうまくいっていなかったから、もう少し早く見切りをつけても良かったかと思われた。
こうしたことから、五分五分の試合展開を続けていたところ、バイエルンに致命的なミス。コーナー後の展開に詰まったラフィーニャのパスミスからのカウンターでアセンシオが決めた。
ここがイスコであれば、恐らくこういうゴールはうまれていない。交代策がこう当たるとは、ジダンもアセンシオも強い運があるとしか言いようがない。
■終盤はピンチも
ピンチはカルバハルの負傷。リベリの応対をしつつ攻撃参加するのを普通のこととして見ているが、この仕事量をこなせるプレーヤーはそういない。
ベンゼマが入り、バスケスがサイドバックの位置に下がることで処置。前線の枚数は増えたものの、それを生かすよりまずしっかりサイドの蓋をしなければならない展開になってしまった。
バイエルンは中盤に手を入れ、トリッソを投入。下がって凌ぐ選択をしたマドリーに対し、1点、できれば2点取りにいく形を作った。
カルバハル交代後の25分ほどを無失点でやりきった集中力はさすが。CLであればこれほどのプレーができる、ということを再確認できた。
ナバスも前半のミスで落ち込まず、いくつか良いセーブを見せていたし、バランとセルヒオ・ラモスの守備が素晴らしかった。
レバンドフスキとミュラーにアタッキングサードでほとんど仕事をさせず、ボールを持つのもサイドか後ろ向きかにほぼ制限できていた。
良い形は作られても、決められるプレーヤーを試合から消すことで、最後のところはやらせず。
思惑通りに進まない試合ながら、アウェイゴール2つを挙げ、勝利した。
■第2戦へ向けて
これこそがトーナメントで勝てるチーム、という印象。
試合全体としては厳しい状況だったが、失点はギリギリのところで避け、個人能力の高さを生かしてゴールを奪う、我慢強い戦いが出来ている。
第2戦に向けては、ユベントス戦の反省を生かしたい。
ユベントスとの第2戦では、マドリーが第1戦と変わらず前半をやり過ごそうとしたところ、ユベントスがサイドを制してあっという間に流れを持っていかれた。
スコアが動いた状態で試合が始まるのだから、そのスコアを踏まえた入り方をしたいところだ。
バイエルンが出てくることを想定して、守備のバランスを取りつつ、カウンター狙いを統一できれば。