万全とはいかないながらも、クリーンシートで勝利。しぶとく勝ち点を積み重ねている。
■マドリーの先発メンバー
GK:クルトワ
DF:カルバハル、バラン、セルヒオ・ラモス、メンディ
MF:カゼミロ;バルベルデ、クロース
71分:クロース→モドリッチ、85分:ロドリゴ→ブライム、ビニシウス→ミリタン
ロドリゴとビニシウスの両翼。中盤はこのところおなじみの組み合わせ。
■エスパニョールの先発メンバー
GK:ディエゴ・ロペス
MF:ビクトル・ゴメス、ダルデール、マルク・ロカ、ディダク;グラネロ
FW:カジェリ、ウー
65分:ウー→カンプサーノ、73分:グラネロ→ロサーノ、83分:カジェリ→メレンド
アウェイでは勝ち点8を得ているが、ホームで勝ち点1。苦しいシーズンとなっている。
■プレス機能せず
このところの好調を支えてきた要因の一つは、中盤を中心とした守備への切り替えの速さだ。
奪われてからの切り替えで相手を上回り、高い位置で引っ掛けることで、自分たちのペースでのプレーを実現してきた。
それを可能とした、バルベルデを組み込んだ中盤だったものの、今節はこれまでほど守備から良い形を作るに至らなかった。
1つ目の理由は、エスパニョールの中盤との人数差。
5枚の中盤に対し、マドリーは3枚とビニシウス、ロドリゴ。両翼の守備はそれほど強度が高くないから、サイドでエスパニョールの方が数的優位に立てる可能性が高まる。
そこから早めにサイドバックの裏を狙っていたこともあり、マドリーの守備がひっかける前にボールが通過してしまっていた。
2つ目の理由は、ビニシウスの復調による。
今シーズン序盤、ビニシウスはフィニッシュの部分での課題を解決できず、出場時間を減らし、他のプレーも悪くなるという負のスパイラルに陥っていた。
それに比べると、今節の彼個人の出来はまずまず。ボールを持って相手を下がらせることはできており、彼の特長は発揮されていたと言える。
ところが、そうであるがゆえに、マドリーの陣形は間延びした。
スピードのあるビニシウスが左サイドからボールを持ちあがるプレーに、全体の押し上げが間に合わない。その結果、攻撃の形は少人数によるカウンターになって、相手ボールになった直後には近い距離に味方がおらず、プレスがかかるような局面を作れなくなったのだった。
ビニシウスが縦に縦にと行けてしまうことと引き換えに、望むような守備の形を手放すことになったのは皮肉としか言いようがない。
■ビニシウス
そのビニシウスは、複数枚に見られていても縦に抜けることができていたものの、やはり最後のところでうまくいかず。
ディフェンスとしては、縦にだけ行ってくれる分には良いといったような守りで、カットインのコースは切っていた。ゴールラインまで行ってくれれば角度がなくなって選択肢を失うから、ボールを奪えなくても十分なのだ。
いくら精度が低いとはいっても、シュートまで許容する守備はないから、切り返してシュートまで行けていたのはビニシウスの良さによる。
しかし、角度がないからディフェンダーとキーパーでコースを消すことは容易だ。今節のシュートチャンスも角度がない位置からで、ディエゴ・ロペスほどのキーパーには対応しやすいシュートしかできなかった。
これでは、利き足の反対サイドにおいているメリットがない。この配置は、カットインからのシュートがあるからこそ。
そうした選択肢が持てないのならば、ビニシウスの左サイド起用そのものを再考する必要があるのではないだろうか。
■セットプレーでリードしてコントロール
思うようにいかない展開が続く中、先制はまたもセットプレーから。
コーナーが一度クリアされた後の攻撃で、バルベルデの楔をベンゼマが受けてパス、残っていたバランが落ち着いて蹴り込んだ。
アラベス戦のセルヒオ・ラモスのゴールに続いてのセットプレーでのゴール。悪い時はこういうゴールもなくなってしまうもの。これが入るか入らないかの差は大きい。
今はリードできると安定感がある。
カゼミロだけでも広いエリアをカバーできる中盤の守備にバルベルデも加わるので、最終ラインが晒される場面が少なくなって、試合を生き返らせないようコントロールすることが容易になっているからだ。
しかも、運動量が落ちてきたタイミングでモドリッチを使えるというのだから何とも贅沢。ペースダウンしてきたエスパニョールに対し、モドリッチの投入でもう一度強度を上げられた。
カゼミロの控え問題は解決していないが、インテリオールの運用はこれで良い。複数得点差がついていれば守備に不安のあるイスコも使えるから、バルベルデを下げることも検討はできるだろう。
追加点は79分。
スローインからのボールでベンゼマが抜け出して収め、裏に走ったバルベルデへ。バルベルデのクロスをワンツーの形で走り込んだベンゼマが決めた。
ここでベンゼマを孤立させず、出てきてくれるのがバルベルデの素晴らしいところ。前で時間を作ったベンゼマもさすがで、それぞれの特長が表れた得点だった。
■最後にアクシデント
これで問題なし、と思われたところ、83分にメンディが2枚目のイエローで退場となるアクシデントが。
大きくは目立たないながらも、右サイドでカルバハルと良い関わりが見られたロドリゴを下げるとともに、ミリタンが緊急出場。
さすがに残り10分を切っていたこの試合で、大きなピンチを招くことはなかったが、次節はマルセロを負傷で欠き、メンディも出場停止となって左サイドバックが不在となってしまった。
2枚のカードとも遅れていて、もったいないプレーだった。運動量とスピードがあり、マルセロの控えとしては十分な働きだっただけに残念。
ブライムは久しぶりの出場となったが、こうしたタイミングでほとんどできることはなし。このところ出場機会のないヨビッチも使えれば良かったが、この終盤10分未満では何も残せない。
彼らには消化試合のCLで相応の出場時間を与えて、良さを発揮できる機会を作るべきだろう。
左サイドバックは緊急出場となったミリタンしかいない。
次節のバレンシア戦に向けて、これもミッドウィークにテストしておかなければならなくなった。
試合は2-0で勝利。
最高の内容ではないにせよ、ベルナベウの観衆を納得させるのに必要なレベルと結果を出すことができた。
■最後に
ベティスとの引き分けはあったが、第9節マジョルカ戦以降は負けなし。
リーガのタイトルに避けなければならない取りこぼしを少なくすることができている。
バルセロナと互角にやれるかというとまだまだで、直接対決で普通にやればかなり厳しい内容を強いられることになるだろうが、彼らと競れていれば可能性は残せる。
負傷や出場停止があり、難しい事態が起こっているが、プレッシャーをかけられる位置を維持していってほしい。