難敵を相手に、前半苦労しつつも勝利。試合の中でうまく修正できている。
■マドリーの先発メンバー
GK:クルトワ
DF:カルバハル、バラン、セルヒオ・ラモス、メンディ
74分:バルベルデ→アセンシオ、82分:アザール→ビニシウス
カルバハルは問題なく出場。今節の左はメンディ。中盤ではバルベルデが先発に名を連ねた。
■バレンシアの先発メンバー
GK:シレッセン
DF:バス、ギジャモン、マンガラ、ガヤ
FW:ロドリゴ、マキシ・ゴメス
59分:フェラン・トーレス→ゲデス、60分:マキシ・ゴメス→ガメイロ、69分:パレホ→コクラン、ソレール→チェリシェフ、76分:ロドリゴ→イ・ガンイン
上位へ食い込みたいバレンシア。クラブ内部では色々あるようで落ち着かないが、現場はしぶとくやっているようである。
■最初はバレンシア優勢
バレンシアは、下りてくるロドリゴへの縦パスの意識が明確だった。早いタイミングで彼に当ててから、2列目が関与して速攻を狙う。
マドリーはロドリゴの捕捉に苦労しており、楔を入れられたかと思えば裏に抜けられ、決定機を与えてしまった。クルトワのセーブにより失点は免れたものの、この試合は苦労するのではないかと感じさせられた。
早いタイミングで仕掛けてくるバレンシアの攻撃が良かったことで、マドリーのボール回収と攻撃開始の位置は低めに。
組み立てに手数がかかるために、アタッキングサードでは整った守備組織を前に攻めることを余儀なくされた。
こうしたことから守備組織の中にボールが入らず、サイドからのシンプルなクロスを多用することに。ただ、ロナウド後のマドリーにおいてこのやり方が非効率あのは、これまで散々見てきた通り。
この試合でもベンゼマが中央に居座らないのでターゲットが少なく、バレンシアに容易に跳ね返されていた。
淡白な攻撃は、守備の効果も低下させる。
前節見られたような前からの守備を行うためには、味方が多く敵陣に入っていて密集状態になっている必要がある。
今節のように早めにゴール前にボールを入れて跳ね返されることを繰り返すと、味方が入ってくる前に相手ボールになってしまう可能性が高くなる。全体の押し上げがしづらくなるので、そうした状態を作れなくなるのだ。
ボールの出所にプレッシャーがかからなければ、バレンシアはパレホを中心として良いボールが供給できるから、ロドリゴを使って攻撃が前に進む。マドリーは低い位置からの攻撃をすることになって、というように悪循環が続くことになった。
■守備から修正
前半途中からバルベルデがサイドに大きく開き、サイドの人数を確保する修正が見られた。
エイバル戦のような斜めの走り込みは目立たず、サイドからうまく崩せたと言えるシーンはほぼなかった。それでも、高い位置でのパス交換を増やし時間を作るようになったことで、攻撃に関与する人数が増えるようになり、前述した守備の部分から改善していくことに成功。
バルベルデら中盤のプレーヤーが一枚飛び出してバレンシアの最終ラインに寄せる状態を保ったことで、バレンシアが良かった時間帯のようなタイミングでの縦パスが入れられなくなった。
守備がうまくはまった時のプレッシャーは、その後も心理的な影響を少なからず与え続ける。
守備の圧力があることを実感させることで、中盤が突出してしまい、コースがありそうな場面でも、それまでのように余裕のある球出しはできなくなり、マドリーとしては弱みを隠すことになっていた。
先制点は速攻によるもの。
バレンシア右サイドの攻撃をセルヒオ・ラモスがケアしたところで、ガメイロがバックパスをミス。拾ったボールをアザールが運び、モドリッチとのワンツーで抜け出す。ラストパスを受けたベンゼマは落ち着いてコースを狙い、シュートを決めた。
サイドを使って素早く攻めたかったバレンシアのプレーを裏返しての速攻。裏に抜けるアザールの動きが秀逸で、前節に続いてアシストを記録した。
リードしたのでマドリーはやりやすくなった。
ここまで改善してきた流れを汲み、守備から形を作ることができるようになったこととが重要だ。
■交代のあれこれと、アセンシオ復活
ジダンは残り15分ほどでアセンシオを投入。実質的にサイドでプレーしていたバルベルデと入れ替え、フレッシュにして圧力を維持しようとした考え方は妥当だ。
また、その後を見ても、アザールとビニシウスを入れ替える交代のみで、前節後半リズムを崩した反省もあってか、交代枠が増えたからといって無暗に使わないという意図もあったようだった。
せっかくリードしているし、下手にいじってポジションを入れ替えるようなことはしない、という考え方は理解できる。
ただ、バルベルデを下げてベテラン勢を残したのはもったいなかったとも言える。
前節バルベルデは10分に満たないプレー時間だった一方、クロースはフル出場、モドリッチもそのバルベルデが入るまでプレーしている。この2節で彼らを長く使ってしまった感は否めない。
イスコの負傷もあり、計算できる中盤の駒が少ないのは事実だが、そうした負傷のリスクを避けるためにも、出場時間の調整は考えた方が良いのではないだろうか。
入ったアセンシオは、その直後のコーナーの流れからゴールを決め、2点差に。
ボールがこぼれたところからのメンディの仕掛けが良く、早く難しいボールに丁寧に合わせたアセンシオの技術もさすが。
アセンシオにとってはこれ以上望めないような復帰の仕方。負傷したプレシーズンから、復帰に向けて重ねてきた努力が報われて本当に良かった。
終盤には自陣エリア前でカゼミロが奪ったところからの速攻で、ベンゼマがゴラッソ。3点差として勝負を決めた。
閉めるべきところを締めてロングカウンターに移行。バレンシアが出てきたところをやり返した。得意な形を1点目、3点目とゴールに結びつけることができた。
■最後に
序盤はバレンシアが良かったが、先手を打ったマドリーが修正に成功し、流れを引き戻した。
先制されていたら、こううまくはいっていなかっただろう。クルトワを中心にぎりぎり凌げたことが、その後の挽回に繋がった。
バレンシアがガメイロ、ゲデスと速い攻めの強化を意図したのに対し、流れを渡さずに済んだのはその前のボールの出所を抑えられたから。
守備を起点としてゴールも挙げられており、再開してここまでの2試合は良さが出た良い内容だったと評価できる。
繰り返しになるが、大前提は先に失点しないこと。
再開したばかりで試合勘がまだ怪しく、過密日程での疲労も影響する状況では、先にリードした方がこれまで以上に優位に立って試合を進められる。
幸いマドリーには、今節見られたようなゴールに繋げられる守備がある。破綻しない守備を整備することは、得点にも直結するのだ。
今後も、こうして先取点を取れるよう、守備を中心としたプレーを続けていってもらいたい。
今夜はレアル・ソシエダと対戦。
バルセロナがセビージャと引き分けたため、首位浮上のチャンスがある。以前のようにふいにしない結果を期待。