重要な試合で勝負強さを発揮して勝利。昨シーズンのガラタサライ戦のような転機になりうる。
今回のメニューはこちら。
■マドリーの先発メンバー
GK:クルトワ
DF:ルーカス・バスケス、バラン、セルヒオ・ラモス、メンディ
MF:カゼミロ;バルベルデ、クロース
64分:アセンシオ→ロドリゴ、アザール→ビニシウス、78分:クロース→モドリッチ
週末と同じ前線。インテリオールはバルベルデとクロースとなった。
■インテルの先発メンバー
GK:ハンダノビッチ
DF:ダンブロージオ、デ・フライ、バストーニ
MF:アクラフ、バレッラ、ブロゾビッチ、ビダル、ヤング
78分:バレッラ→ガリアルディーニ、ペリシッチ→サンチェス、87分:ビダル→ナインゴラン
3-5-2の形。ルカクは負傷欠場している。
互いの問題が絡み合い
インテルは3バックで、マドリーは3トップということで、同数であることを生かしマドリーは前線から人につき、プレスをかける形で試合が始まった。
必要に応じてバルベルデも前線に加わり4枚となって、ハンダノビッチまで追うことを徹底。
さすがにリーガとは違う守備強度で臨んだなという印象であった。
インテルもマドリーのこの出方は予想していたと思うが、繋いでプレスを剥がすやり方は未整備なのかもしれない。引っかかることがしばしばあって、狙い通りショートカウンターを出せそうな場面があった。
それなのにマドリーはショートカウンターがうまくいかない。
仕掛けようというところでミスが目立ち、アタッキングサードまでなかなか良い形で持ち込めなかった。
その理由の一つには、アザール、アセンシオの両翼がまだ発展途上であることが挙げられる。
ビニシウスなら、奪って彼に預ければ、とりあえず縦には運んでもらえる。
その先の精度に問題があるわけだが、それはともかく、手数を少なくゴールに近いエリアまで進むという点では有効で、昨シーズンはそれをよく使ってやってきた。
一方、アザールとアセンシオでは、近い距離でボールを動かしながら剥がしていく形が多い。
後者で速攻にも対応できるようになるのが理想なのだが、速い展開の中で相手を上回るだけのコンビネーションが実現できるまでには、もう少し時間がかかりそう。
このことから、現状では、ビニシウス、ロドリゴとタイプの違う住み分けで流れを変える起用が妥当と考えられる。
逆にマドリーの問題は、両翼の守備強度。
サイドに逃げるコースを切れないことがよくあった。
そのため、中央のベンゼマやバルベルデはそれを加味して追うことになり、結果ハンダノビッチから中央へ縦パスを通されて回避されてしまっていた。
縦に入った後、サイドに展開すれば、アクラフやヤングはマドリーのサイドバックと勝負できる。
特にアクラフは何度も持ち上がっており、「恩返し」されそうな怖さがあった。
インテルはプレス回避がもう少しスムーズであれば、前半により多くのチャンスを作れていたのではなかろうか。
インテルのプレス回避のまずさと、マドリーの速攻の拙さ、両翼の守備問題が、絶妙に絡み合った格好となっていたことがわかる。
リードするも緩さがチラリ
こうした中で先に致命的なミスが出たのがインテル。
25分、アクラフのバックパスがベンゼマへのプレゼントとなって、ハンダノビッチをかわして先制。
もちろんミスはミスなのだが、良いところにいたベンゼマのポジショニングもあってのもの。
ベンゼマはストライカーらしくないイメージではあるが、こうして相手のミスをつくゴールは割と多い。こぼれそうなところにいる、という流れを読む能力の高さを感じられる。
33分にはコーナーをセルヒオ・ラモスが頭で合わせ2-0。
ミスを突いてリードして、セットプレーで追加点というジダンマドリーらしい勝負強さが現れた。
35分、すぐにインテルが1点を返す。
バレッラのアシストが素晴らしく、ラウタロ・マルティネスがバランの前に出てシュートできた。
人はいたが、右サイドから少しずつ守備にズレが。せっかく2点リードして、しっかり守ればペースをつかめるところだったのに、緩さが出てしまった。
インテルが裏狙いへ
後半に入り、インテルはラウタロ・マルティネスとペリシッチの裏狙いの意識が高まった。
マドリーのハイプレスを牽制できる裏狙いを増やしたのは順当な対応だ。
アンス・ファティにラインと駆け引きされたバルセロナ戦を思い出される方も多いのではないだろうか。
バルセロナ戦はマドリーがそれほど前に出ていかなかったが、この試合では3バックに3トップではめにいっている。
最終ラインがついていけば裏狙いが生きるし、ついてこなければ前半のようなプレス回避からのサイド攻撃がより増やせる。どちらにしても、メリットがある変更である。
マドリーが先に交代枠を使い、両翼をビニシウスとロドリゴに。
守備に問題が出てしまう2人を下げることで、ハイプレスからプレーを始める考え方から、ブロック形成からのスピードあるサイド勝負といういつもの形へと変更しようという意図。
しかし、その直後にインテルの狙いが当たる。
後方からのパスをラウタロ・マルティネスがペリシッチへ落とし、ペリシッチはバスケスと競りながらコースをつくボレーを決めた。
わずか3本程度のパスで一気にやられてしまった。バスケスがカルバハルであればシュートの局面でもう少し厳しくやれたかもしれない。こうしたところの技術は本職と差があるようにも感じられた。
インテル、交代でしぼむ
互いに勝ち点3が欲しい試合で同点となって、その先どうするかは難しい。
どのタイミングでリスクを負うか。これという正解はないからだ。
インテルが裏を狙う形でペースをつかみ、マドリーは時間が経つにつれファールも増えていたから、どちらかと言えば先にコンテが勝負に出てもおかしくはなかった。
その意味で、順当にモドリッチを投入したマドリーに対し、アシストとゴールで結果を出していたバレッラとペリシッチを下げたのは良かったのかどうか。
形は変えず、フレッシュなプレーヤーでやりたいという意図は理解できるものの、勝ち切ろうというメッセージになるかは微妙なところだろう。
その交代の直後、80分にマドリーが速い展開を生かす。
バルベルデが持ち出し、ビニシウスを生かすスルーパス。ビニシウスはゴール前に入るベンゼマを囮にし、ロドリゴへマイナスのクロス。これをロドリゴが決め切り、勝ち越しに成功した。
基点となったバルベルデのパス、ビニシウスのクロス、ロドリゴのトラップからシュートと、素晴らしいプレーが続いたゴールだった。
残り10分となってからリードしたことで、マドリーはそれまでの攻め合いはやめ、試合を終わらせる局面へと移行した。
マドリーの守備ブロックに対し、インテルはエリクセンを使わずナインゴラン。バランスを崩さずに最後までいってくれて、マドリーは助かった。
混乱した状態を作られていたら、3点目以前のようなバタつきが出ていたかもしれない。
普通通りのやり方を残り10分受け止めれば良いのであれば、さすがに高い確率で守れる。
バルベルデ
この試合で最も重要だったプレーヤーを挙げるなら、バルベルデ以外にいないだろう。
ハイプレスのために必要な守備強度があり、その後の攻撃でゴール前に厚みももたらす、本来の良さを存分に発揮した。
彼が素晴らしいのは、そこから動いていく試合の流れに合ったプレーでチームを助けてくれるところだ。
中盤でインテルの速攻を潰す役割もしてくれるし、勝ち越し点のような攻撃の起点役も、そして終盤のブロック内での守備も・・・いつもプレーに顔を出してくれ、存在感が薄くなる時間がない。
得意なのは前半のようなプレーなのだろうが、そうでなくてもチームにとって必要なプレーをしてくれる信頼感がある。
昨シーズンよりもできることが増えた印象だ。一年前の期待を上回るスピードかもしれない。
クロース、モドリッチ、カゼミロの長所を取り入れており、コンディションも良い。バルベルデを中心としつつベテラン勢を組み合わせれば、様々な形に高いレベルで対応できる。
CLでもリーガでも、彼を中心に中盤を考えてもいいのではないだろうか。
最後に
グループBは混戦。
ボルシア・メンヒェングラートバッハが勝ち点5、シャフタールとマドリーが勝ち点4、インテルが勝ち点2となっている。
次節のインテル戦に勝てれば少し余裕はできるものの、アウェイのシャフタール戦もある。楽できる試合は最後までなさそうだ。
試合間隔が短いので、負傷には気を付けてほしいところ。
週末のリーガは、バレンシアとアウェイで対戦。
できればここでも少しローテーションしたい。