明けましておめでとうございます。2021年もよろしくお願いいたします。
本年最初の試合はホームでセルタと。
得意な試合展開となって、勝利で新しい年をスタートすることができた。
今回のメニューはこちら。
■マドリーの先発メンバー
GK:クルトワ
DF:カルバハル、バラン、ナチョ、メンディ
MF:カゼミロ;モドリッチ、クロース
74分:アセンシオ→アザール、カルバハル→ビニシウス、85分:モドリッチ→エーデゴーア、クロース→バルベルデ、89分:ベンゼマ→マリアーノ
セルヒオ・ラモスが不調のため招集外となり、ナチョが先発となった。
■セルタの先発メンバー
GK:ルベン・ブランコ
DF:ウーゴ・マージョ、アラウホ、ムリージョ、オラサ
MF:タピア;ブライス・メンデス、デニス・スアレス、ノリート
FW:アスパス、サンティ・ミナ
51分:アスパス→ベルトラン、64分:ノリート→バエサ
11月までは2勝しか挙げられず、オスカル・ガルシアからコウデに監督が変わっている。
そこから12月は5勝1分け。監督交代がブーストとなっているようだ。
組みやすかったセルタ
セルタはリトリートしてカウンターというタイプのチームではない。パスで繋いで全体を押し上げて、アスパスが仕上げるのが理想なのだろう。
ターゲットになるフォワードがいれば違うことがやれるのかもしれないが、少なくとも、この試合ではそういうやり方は見られなかった。
よって、マドリーはブロックを作っておいてセルタに出てきてもらい、カウンターを狙う形が有効となる。
これは、今のマドリーが得意とする形だ。
年末のようにボールを持つ試合だと打開ができず、クロスのターゲットとしてカゼミロも出ていき、脆弱な状態でカウンターを受けることがしばしばあるのだが、相手がボールを持ってくれて、敵陣にスペースを空けてくれていればやりやすい。
攻撃をリアクションでやれるなら、守備バランスを崩さないことを前提とすれば良く、整理も容易である。
ただ、1点目はちょっと出来過ぎではあった。
アスパスの抜け出しを生かしたところまでは、セルタの狙う形。ところが、シュートは思ったような形とならず、ナチョのクリアから展開が逆に。
クロースの左サイドへのスルーパスにアセンシオが追いつき、相手と距離を取ってクロスを供給。走り込んだバスケスが頭で決めた。
こんなロングカウンターはなかなか狙ってできるものではない。
一度セルタが攻めマドリーがボールを奪いかけるものの、自陣からの脱出に失敗しセルタの二次攻撃となったことから、より前に出てきてくれていたことで、一気に裏を突ける状況ができていたのが幸いした。
バスケスの改善、アセンシオの復調
バスケス
ところで、得点を挙げたバスケスは、ボールがクロースに渡った時点でサイドバックの位置にいた。カルバハルが絞ってノリートを埋めていた形である。
ここから、カウンターの局面になると見るや相手ゴール前までスプリントしているのだから、恐れ入る。
守備時のケアと攻撃参加を高いレベルで両立できるプレーヤーは本当に貴重だ。
ボールを持ってのプレーが改善したのではないし、クロスの精度が急に良くなったわけでもない。ただ、オフザボールが良くなったことで、カルバハル、モドリッチとの循環
がスムーズになり、それによってより良い関与の仕方ができるようになった。
もともとの長所である運動量がさらに生きるようになったのだ。
得点の場面を見てみる。
まず、相手の出方と味方の位置に合わせて、サイドをケアする守備の視点があることがわかる。セルタの2列目が中央に寄ると、カルバハルが絞ってついていくことが多く、一番外を使おうとするオラサをきちんと見ていた。
次に、マイボールになって、そこから出ていけるという判断の早さがある。クロースがボールを持った時点でバスケスは彼より後ろにいたが、ボールが落ち着いたタイミングですぐ走り出していた。
さらに、得点できるポジションが分かっていた。ベンゼマがニアに入っていたので、定石通りファーへ。アセンシオのボールの精度はもちろんだが、良い場所を理解していち早く侵入したからこそのゴールであった。
この一連のプレーで、バスケスがボールに触ったのはヘディングの1回だけである。それでも、攻守に必要な判断を素早く行うことで、重要なプレーを成功させることができた。
このスポーツにおいて「うまくなる」とは、ボールが思うように蹴れるようになることとは限らないということが、彼を見るとよくわかるのではないだろうか。
今のところ、彼を上回れる右のエストレーモは、マドリーにはいないと断言できる。
アセンシオ
一方の左サイドはアセンシオが復調気味。
しばらく利き足と反対の右サイドで起用されていたが、カットインの怖さがないのでメリットが少ない状態が続いていたところだった。
左サイドに移ったことでクロスの選択ができるようになったことが、調子が上向いてきた要因であろう。グラナダ戦でもカゼミロのヘディングでのゴールをアシストしている。
一番外を使いたいメンディとのレーンの住み分けも相性が良い。
一つ内側で縦に勝負できるし、タイミングによって中央に進出した時は、エルチェ戦のようにミドルも見せることができている。
Whoscored.comによる下図のように、ボールタッチもほぼ全ての時間帯にあり、消えることがなかった。
右のバスケスがしばらくこのままの内容なら、いずれにせよ右サイドでの出番は少なくなる。左サイドを中心にクロスもシュートも狙っていくのが、彼にとって今目指すべき形になるかもしれない。
これはアザールの目指すべき形にも近い。
メンディが確固たる立場を築き、大外で被るビニシウスが序列を下げていることと、一つ内側でプレーを完結できるアセンシオやアザールが求められることは繋がっている。
彼らのうち、より安定してこの内容を出せる方がシーズン後半に出番を増やすことになり、ビニシウスはスーパーサブで使うことになると予想しておく。
ラモス不在が結果的にプラスに
先ほど書いた先制点が5分の出来事。
早い時間にリードを得たことで、当初の引いて守るプランを徹底して試合を進めることができるようになった。
セルタが6割ボールポゼッションするも、前半のシュートはアスパスの決定機以降1回のみ。ボールを持ってもらいつつ、危険なところまではやらせない、要所を締める守備ができていた証だ。
確かにラモスがいない不安はあった。
バランは時々ひどい状態になるし、ナチョは久々の先発だったから、とんでもないことになる恐れがなかったわけではないのだ。
だが、チーム全体としてリトリートするやり方で臨み、かつ先制できたことで、彼らが単独で守らなければならない場面を増やさずに済んだ。
特に、試合に入っていかなければならない序盤に、彼らに頼るような守り方ではなく組織での対応ができたことの意義は大きい。ここでペースを掴めたため、その後のプレーにも良い影響を与えたと言える。
サイドでは、両サイドバックが中盤の位置に上がり、タピアが底に控える3-5-2の形でボールを持つセルタに対し、バスケスが頻繁に(そしてアセンシオもそこそこに)守備参加することで数的優位を確保していた。
普段ならサイドのスペースのケアも、セントラルが手広くやるのだが、4バック+バスケスが手堅くプレーすることにより、セントラルの負担が少なくなっていた。
そして、ボールを回収できたら、先制点の時のようにここからサイドバック裏へでていく形が狙い。
受ける姿勢が明確なマドリーに対し、セルタは人数をかけて進出せざるを得ず、裏には広いスペースが生まれることに。
組み立て時の最終ラインからの球出しが悪くなるのはやむを得ない点で、ここはクロースとモドリッチに頼ることになったが、それよりも守備時のメリットが上回った印象だった。
ラモスがいればもう少し前からボールに食いつく守備になっていたかもしれない。
彼個人が前に出て相手を捕まえにいくし、それにより全体のラインも高くなるからだ。
それでは、セルタのプレーヤーを引き付けることは難しく、カウンターも成立しづらくなったと考えられる。
つまり、ラモス不在による対応をしたことで、結果として試合に合った守備方法になったということになる。
こんな変化は想像もつかなかった。
2点目は狙い通り
53分の2点目は狙い通りの守備から。
ムリージョがボールを持った時、縦にパスを出すにはノリートへのコースしかなかった。
だが、結果的にカットすることになるモドリッチはデニス・スアレスについており、一見ノリートへのコースは空いているように見えたのだろう。アラウホに返す、オラサへ当てるといった手数をかけることなく、すぐに縦パスを狙ってきた。
モドリッチが引っかけたボールをカゼミロが拾い、バスケスへスルーパス。
ムリージョは前でのカットを狙ったが間に合わなかったために入れ替われ、フリーのバスケスは余裕をもってアセンシオへお膳立てした。
カゼミロが前を向いてボールを持った瞬間にバスケス、ベンゼマ、クロース、アセンシオはゴール方向へ走っていた。
ムリージョがステイしていても、4対3だったから、左横のベンゼマややや後方のクロースを経由してアセンシオまで回せれば余っていたことになる。
コースを消して待ち受ける守備を敷き、奪えたら前へ出て数的優位を得る。教科書に載るようなカウンターだった。
たまには早い交代を
セルタは2点目の直前に負傷でアスパスを失っていた。
ボールの終着点となるべきアスパスを欠いた状況で2点差となったことで、彼らにとってこの試合はかなり厳しいものに。
その後64分にノリートも負傷でピッチを離れることとなって、攻め筋をほとんどすべて失った。
この時点で、試合の決着はついたも同然だった。
それなのに、マドリーの交代は75分頃から。
フル稼働の中盤とベンゼマを下げたのは80分を過ぎてからである。
試合は既に落ち着いており、休ませたい主力を下げる選択そのものは正しかったが、タイミングが遅い。
通常、CL再開までの間にコンディションを維持する必要があるのが1月。普段よりも過密日程でやってきた今シーズンはなおさらそうだ。
離脱していたアザールを、少なくとも実戦投入できる状態にはしておきたいし、クロースとモドリッチは現状を維持できるようバルベルデと使い分けるべきだ。
ベンゼマやバスケスについても同様で、先発でローテーションできないなら、交代のタイミングを早めることで調整していくべきではなかろうか。
石橋を叩いて渡る慎重さは勝ち点を落とさないために重要だが、大量点でどうみても安全という試合を作るのが難しい現状では、そればかりだといつか限界を迎えてしまう。
サブが心もとないからこそ、楽に休ませられる試合では主力を早いタイミングで下げる決断があって良い。
最後に
年末は不安な引き分けで終わったが、年明けはすっきり始めることができた。
アトレティコが勝ち点を落とさないのでついていくしかないが、課題はセルタのように出てきてくれる相手ではなく、明確に引きこもる相手から点が取れるかどうか。
次節のオサスナ戦はアウェイでもあるし、こうした課題の解決ができるかを見られる試合になりそうだ。