レアルマドリードのある生活

レアルマドリードの応援日記。試合中心にお送りします。

リーガ・エスパニョーラ第26節 vアトレティコ

首位を走るアトレティコとの差は縮められず。

ただ、厳しい試合を引き分けに持ち込んだ安堵感も。相変わらず苦しい内容だが、簡単に負けはしないしぶとさは続いている。

 

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今回はこんなメニューで振り返り。

 

 

 

■マドリーの先発メンバー

GK:クルトワ

DF:ルーカス・バスケス、バラン、ナチョ、メンディ

MF:カゼミロ;モドリッチ、クロース

FW:アセンシオ、ベンゼマロドリゴ

 

60分:アセンシオ→バルベルデロドリゴ→ビニシウス

 

ベンゼマが間に合って先発。アセンシオ左、ロドリゴが抜擢されて右となった。

 

アトレティコの先発メンバー

GK:オブラク

DF:トリッピアー、サビッチ、フェリペ、エルモソ

MF:コケ;コレア、マルコス・ジョレンテ、レマル、カラスコ

FW:スアレス

 

57分:レマル→サウール、64分:カラスコジョアン・フェリックス、82分:コレア→コンドグビア 

 

調子を落としているものの首位をキープ。このまま走り切れるかどうか。

 

マドリーを空転させるアトレティコ

マドリーはモドリッチやクロースが高い位置に出てプレスをかける形でスタート。

これまでもやってきた形ではあるが、序盤から継続してやろうとするのは大きな試合ならでは。テンションを高くして主導権を取ろうという意図が感じられた。

 

しかし、アトレティコの組み立ての速さがそれを上回った。

ヒメネスを欠いているがエルモソが入っていたことで、パス出しの精度は落ちていないようで、薄くなった中盤のスペースに入るスアレスに楔のパスが面白いように通ったのだ。

マドリーが出てくることを見越して、後方でのプレーも対策を練ってきたように見受けられ、守備を外してパスを縦に刺す流れがとてもスムーズだった。

 

しかも、スアレスが受けた後のサポートも速く手厚い。

コケは守備に下がっていてもボールの高さまで上がってコースを作るし、カラスコとコレア、マルコス・ジョレンテ、レマルの2列目が落としからの展開を見越して追い越してくる。

これらの動きが毎回丁寧に行われるので、スアレスは孤立しない。すぐに落として一番得意なエリア内の仕事に向かっていくことができる。

縦パスが入ったタイミングで、こうした動きが毎回既に準備できているほどなのだから素晴らしい。

 

マドリーのように3トップ+1で最終ラインに詰め寄ろうとすると中盤が薄くなるので、ラインを高く保つのが定石。

ところがそうはならず、前に出てケアするラモス役をここしばらく担ってきたナチョの動きも積極性を欠いた。

プレスが後追いになってしまっているのを認識していたから、後方としては前線についていくのは不安だったのだろう。

撤退する判断もあったと思うが、それより前にスアレスに先制点を取られてしまった。

薄くなったサイドに出たボールに一歩先に間に合ったジョレンテ、ラインで勝負できるスアレスと、彼らの長所とマドリーの失敗がこの場面で同時に見て取れる。

 

対策されて攻められず

アトレティコの攻撃がうまくいっていたので、マドリーのボール回収位置は低い。

アトレティコは先制点を得たことによって5-4-1で待ち受ける形を取ることができ、優位に立っていた。

 

アトレティコはこの形で、クロースとモドリッチのプレーの制限を行いながら、サイドでスペースを与えないように整理していた。

どちらもマドリー対策としては順当。ただこのように実現できるチームはそう多くない。

 

例えばクロースとモドリッチのところで制限するだけにとどまらず、奪いに行くような形をとるチームがあるが、これは良くない。

単純に、この2人からボールを取りに行って成功する確率はとても低いから、ということもあるし、中央へ意識が集中してしまい、マドリーの主たる手段であるサイド攻撃を消すことに人を割けないと、破綻するリスクを負うことになるからだ。

中央を空けてサイドでプレーしたがる傾向のマドリーを相手にしたとき、そこに同数を配置できるかどうかは非常に重要なのである。

 

アトレティコは、クロースとモドリッチを監視しつつ、危険の少ないプレーまで無理に締め付けないようにしているように見えた。

ブロックを作る時は5バック化してサイドには人を割いているので、ここに展開される分には問題ない。

アトレティコの思惑通り、マドリーの攻撃はサイドチェンジしてもスライドが間に合って応対されることの繰り返しとなった。

 

組織を崩せる個の不在

ここで、組織の外から打ち破れる個人がいれば、前半の様相はもう少し違うものになっていただろう。ベンゼマがサイドに出ていくのはわかっているので、そのスペースを使えるプレーヤーがいるかどうか、という点である。

守備強度を保ちつつ、こういうところに登場することで頭角を現したバルベルデのように、この特徴を生かせれば一気に主役になれる可能性があるのだが…。

 

一番残念なのはアセンシオ。

ASによれば、かれこれ6試合、枠内シュートさえないそうである。

 

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彼の魅力はゴールを狙えることだ。とびぬけて俊足なわけではないが、技術を生かして人との関係の中で前を向いてシュートコースを作れる。

それなのに、最近は大外で幅を取る役割しかしておらず、長所を生かせていない。これではスピードのないビニシウスである。

 

彼にしてもビニシウスにしても、基本的に逆足サイドで使われていることから、カットインシュート(とそこから派生する中央寄りでのプレー)を選択肢に持つことが求められるのは明らかだ。それができず、サイドバックであるバスケスやメンディばかりが内側に進出するのはもったいない。

 

この試合のように、利き足サイドでは縦に抜けてクロスの選択肢があるので、そちらに置かれればある程度できるのは当然。

その一方で、この使い方を基本とすると、中央で待つフィニッシャーを配置した方が良いということになり、自由に動くベンゼマの良さとはかみ合わないことになる。

ベンゼマありきの形に賛否はあろう。ただ、ヨビッチを諦め、マリアーノが時間稼ぎ要員以上にならないのは、少なくとも今シーズンはそういうやり方を諦めてやり続ける選択をしたからのはず。

それに適応できないのなら、今はこれ以上の成果は上がらないだろうし、エストレーモは幅取りとしてしか機能しない。

 

来シーズンの補強で形が変わるのを待つというのは、彼らのポテンシャルを考えると何とももったいない話だ。

逆足サイドで輝くきっかけを、どこかで誰かが掴んでくれればいいのだが。

 

後半に可能性が生まれた理由

後半もアトレティコの試合で、2点目が入らなかったのはとにかくクルトワの活躍による。

アトレティコはうまくゴールに迫れていたが、スアレス、コレアにあった決定機を、クルトワあと一歩のところでストップしてくれた。

点を取りに出て行って空いたスペースを使われる典型的なやられ方で、今節のアトレティコのやり方と相性が良い形で攻め込まれている。

先制点を与えてしまい、出ざるを得なくなって守備の長所を失うマドリーにとってはお馴染みの失敗でもあり、クルトワなくして耐えることは難しかっただろう。

 

このように、アトレティコの試合運びの方がうまくいっていたのは間違いない。ただ、とにもかくにも1-0で済んでいたという見方もできる。

彼らが慌てたわけではないのだろうが、スペースができて攻めやすくなったことを利用し、より積極的に攻撃を行うようになった。

きっちり抑えられて楔のパスからやられた前半とは違い、出入りが激しい展開へと変わっていったのである。

 

アトレティコには、追加点を取ってセーフティリードを得たいという雰囲気が前半よりもあったようにも見えたし、チェルシー戦で守備的に戦って失敗した形となってしまったことも影響したのかもしれない。

ジョアン・フェリックスを使うなど、守備固めに偏るのではなく攻撃的な姿勢を維持するメッセージが交代でも見て取れた。

理由は想像するしかないが、ともかく完全に攻めが詰まっていた前半とは違い、スペースを得られる可能性がマドリーにも生まれてきたのである。

 

少ない選択肢で変化をつけるマドリー

マドリーの交代はビニシウスとバルベルデ

アトレティコの変化に対応できる選択肢があるベンチ構成ではないので、ジダンがうまく合わせたわけではなく、可能な戦力を使ったということだろう。

しかし結果的に、スピードでスペースを突けるビニシウス、エリア内に入り込めるバルベルデと、状況にあったプレーヤーを投入することになったのだった。

 

戦力の都合によりサイドで使われることが多くなっているバルベルデは、本来の長所を生かすことはできていない。

それでも大外を取るだけでなく必要に応じてスペースを使う可能性は、守備の負担を増やす。彼の復帰により、中央でもサイドでも選択肢を増やすことにつながりそうだ。

 

バルベルデをサイドで使わざるを得ない状況下で、中央で攻撃にアクセントをつけているのがカゼミロ。

以前からあった突然のミドルでのゴラッソだけでなく、セットプレーでのターゲットや機を見ての攻撃参加で計算が立つようになっている。

88分、ベンゼマのダブルタッチのパスに抜け出して、出てきたオブラクを外すラストパスをベンゼマに返し同点ゴールをアシストした。

 

不在時の守備に不安はあるものの、今はそれよりも停滞した攻撃での長所が勝る。

一時期問題化したようにロナウドがいるのに出ていって留まるといった形ではなく、タイミングが良く、するする出て行って帰ってくるので負担感が少なくなっているのもポイントだ。

定位置を掴んだバスケス、メンディ、役割を変えて貢献するカゼミロ。彼らのように状況の変化に合わせて必要な仕事ができるプレーヤーは偉大である。

 

最後に

勝てなかったけれど、負けなかった。

結果を出せておりプレーの質も高い優勝候補筆頭のアトレティコに、今のチームで1勝1分けとできたのだから、悔しさよりも安堵感があるのが正直なところだ。

優勝争いからは一歩後退となったが、ここまで競ることを予想していなかったので、生き残れていること自体ラッキーと捉え、粘れるところまで粘ってほしい。

 

ベンゼマバルベルデが帰ってきたことも朗報。このまま負傷者が増えないよう祈るしかない。

幸い今週のミッドウィークは試合がない。CLも見据え、落ち着いてコンディションを整えられれば。