アウェイゴールを与えてしまったものの、悪い流れを引き戻しての引き分け。
チームの状態が厳しいことに変わりはないが、第2戦に希望をつなげることはできた。
遅くなってしまったが、今回は前半を中心に、このメニューで振り返る。
■マドリーの先発メンバー
GK:クルトワ
DF:カルバハル、ミリタン、バラン、ナチョ、マルセロ
MF:カゼミロ;モドリッチ、クロース
FW:ベンゼマ、ビニシウス
66分:ビニシウス→アザール、77分:カルバハル→オドリオソラ、マルセロ→アセンシオ、89分:ベンゼマ→ロドリゴ
3バックの形。カルバハルとマルセロがウイングバックとなった。
■チェルシーの先発メンバー
GK:メンディ
DF:アスピリクエタ、クリステンセン、チアゴ・シウバ、リュディガー、チルウェル
MF:ジョルジーニョ、カンテ;プリシッチ、マウント
FW:ベルナー
66分:プリシッチ→ジェームス、ベルナー→ハフェルツ、アスピリクエタ→ジイェフ
チェルシーも3バック。
トゥヘルが監督を引き継いでから、うまくいっているようである。
不慣れな形の理由は
マドリーはモドリッチが右に大きく開いてエストレーモの位置に。実質的には3-4-3の形としてプレーした。
4-4-2として守備時にモドリッチが右サイドに開くことは以前しばしば見られた形だが、3バックで、しかも前線に近い位置取りというのは初めてだろう。
不慣れな形であり、デメリットが気になるにもかかわらずこの選択をしたのには、それなりに理由があると思われる。
思いつく1つの理由は、カルバハルの不安だ。
復帰直後のカルバハルは、単純にコンディションの不安があった。
恐らく途中交代は織り込み済みであっただろうし、出場可能な時間でやれる範囲のことをやってほしいという先発起用と考えられる。
また、彼は3バックでのプレーに慣れていない。ファーストチョイスのカルバハルがいないからこそ、3バックがここまで使われてきたのである。
その彼が帰ってきて、3バックにそのまま当てはめてうまく回るかどうか。少しケアが必要とみて、右を手厚くしようという意図があったかもしれない。
2つ目は、主導権を握りたいという意図だ。
3バックで来ることが概ね明らかだったチェルシーに対し、3トップとして同数で寄せていくことで、主導権を握りたかったのかもしれない。特に序盤に強度を高めてプレーすることで圧力をかけられれば、その後やりやすくなる。
負傷者が出ており、プレーする面々も万全なコンディションではない状況では、この選択は賭けだ。
エネルギーを使ってうまくいかなければ、相手を大きく利することになる。万全でないのならきちんと受ける方に集中するのが定跡だろう。
そこで逆に出ていくことでチェルシーの意表を突き、修正するまでに時間を使わせる意図だとすれば、この状況の中あえて不慣れな形を取ったことも理解できる。
今回はリバプールの立場に
結果として、この試みはうまくいかなかった。
マドリーは前から常に寄せていくほどの強度を維持できず、前は出ていくが後ろはついていけないという典型的なまずい形に。
チェルシーはそのスペースをカンテ、プリシッチ、マウントがうまく使うことで早い攻めを実行できていた。
特にカンテは圧巻。
守備の局面で良いポジションを取っていたかと思えば、攻撃に転じてもポジショニングやボールの持ち上がりで味方を助けていた。
2列目に入る彼らが前を向けることで、早い攻めでクルトワを脅かすことができていたのだった。
そして、うまく寄せられなくなった場面でリュディガーからプリシッチの裏狙いのボールがはまり、アウェイゴールを許すことに。
前から出ていこうとして、イマイチうまくいかず中途半端になったところで、フリーのパサーに正確に裏を狙われる。
どこかで見た構図ではないだろうか?
そう、つい先日、リバプールに対しマドリーがうまくプレーした第1戦の前半と似た形である。
今回はマドリーが出ていってやられる側に回ることになってしまったのだった。
得られた教訓
入り方がまずく、クルトワの出番が多くなって、アウェイゴールの与え方はまずかったものの、ベンゼマのゴラッソで追いついたことで、幸運にも第2戦に希望を繋げられる内容となった。
だから今後に向けての教訓と捉えられるのは、カルバハルの3バックでの起用はもったいないということと、モドリッチを張り出させることで得られるメリットは少ないということだ。
カルバハルは、右サイドの広いスペースを任せられるプレーヤーだ。
万全なら攻守ともに一人で役割を果たしてくれる存在で、彼と同様の使い方ではオドリオソラも右サイドをカバーできず、苦しんでいる。
ところが、3バックでは、サイドに様々な人が顔を出してくる。センターバックが持ち上がってくることもあるし、インテリオールもトップもスペースに出てくる。彼らと役割を分けて関わりながらバランスを作っていくプレーが求められているのだ。
多くの役割を与えて一人でやってくれという使い方ではうまくいかないが、役割を限定して味方との関係を生かしてプレーすることが得意なルーカス・バスケスが右ウイングバックにはまったのは偶然ではない。
逆に、4バックの形で右サイドを手広くカバーしてきたカルバハルにとって、この形は適応が難しいのだろう。
もちろん使い続ければどこかで適応していくのだろうが、彼の良さを生かす形にはなりづらいだろうというのが現時点での印象だ。
モドリッチの使い方は、このメンバーで右サイドに置けるのが彼しかいなかったという点はあるにしても、もったいなかった。
上述の通り、チェルシーは2列目がうまくライン間で受けていてプレスはうまくいかなかったし、何よりクロースとの距離が遠くなったことで、組み立てのレベルが落ちた。
リバプール戦では、プレスを続けることは厳しいという印象を早い時間に与えることができていた。
この試合では、はめてマイボールにできる自信を与えてしまった。自信を持って押し上げてこられるとやはり難しくなる。
3トップとなったことでビニシウスの裏狙いもゴールに直結する位置とはならず、チェルシーの選択はさらにしやすくなっていたこともある。
このように、バランスを考えると、攻守ともプラスよりマイナスが大きいという結果を得られた。
引き分けで、選択肢をつぶすことができたと思えば、まあ納得できるだろうか。
落ち着いた後半に
1-1とはいえ苦しんだこの前半から、後半は落ち着いた試合展開へ。
リードは得たままにしておきたいチェルシー、2点目のアウェイゴールは与えたくないマドリーと、互いの思惑はあったにせよ、前半の悪さを考えればよく試合を静かにさせたと言えるだろう。
特に組み立ての対応が良く、狙いが定まらないままにチェルシーにやられていた前半に比べると、無理せずキープするようになったことで慌ただしい展開とはならなくなった。
このことにより、攻撃面だけでなく、守備面でも改善が見られた。
間延びしないことで勝算の少ないプレスを減らし、相手に出てきてもらって受けることができるようになったのだ。
マドリーがやりたい形は後半の方。
この形を基本として、相手の出方によってリバプール戦のようにビニシウスを生かすような速い攻めを目指すか、押し込んでクロスでベンゼマやカゼミロを狙う攻めを目指すか選べれば良い。
良かったチェルシーに3枚替えをさせたのだから、対応を強いたと言っていいだろうし、第2戦に向けてはやはり奇を衒わずに行った方がいいと思われた。
アザールは難しい
途中出場したアザールについては、良く分からないというのが率直な印象だ。
プラスになる可能性もあるが、ここまで彼なしでやってきた組織にうまく合わない恐れもあり、不確定要素だ。
起用することで得られるメリットとデメリットが概ね把握できていれば、それに合わせた起用法を考える余地はある。だが、どうなるのかわからないというのではそうして組み込むことも難しい。
余程のことがなければ、途中から流れを変えるべく使うのが無難ではなかろうか。
もちろん、来週までに怪我をしていなければ、の話だが。
最後に
カルバハルを失ったマドリーは、3バックで後半のようなプレーを目指すことになる。
マドリーとしては、チェルシーの出方に合わせてプレーしたい。スコアレスでは敗退なので、できるだけ早い段階で ポイントを見抜き、チャンスを多く作れれば。
コンディションは悪くなる一方だが、せっかくチャンスがある状況となったので、望みを持ってイングランドへ行きたい。