レアルマドリードのある生活

レアルマドリードの応援日記。試合中心にお送りします。

ラ・リーガ第4節 vセルタ

非常に怪しい立ち上がりだったが、終わってみればアンチェロッティらしい得点の多い結果に。陣容から想像がつく通り苦しかった守備をカバーして余りあるほどに、攻撃陣が結果を出せている。

 

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今回はこんなメニューで振り返ることにする。

 

 

 

■マドリーの先発メンバー

GK:クルトワ

DF:カルバハル、ミリタン、ナチョ、ミゲル

MF:カゼミロ;バルベルデモドリッチ

FW:アザールベンゼマ、ビニシウス

 

66分:アザール→カマビンガ、79分:モドリッチ→アセンシオ、ミゲル→マルセロ、89分:ビニシウス→ロドリゴ

 

南米から帰ってきた面々は通常の序列通り先発に。ベンゼマを休ませるかもしれないとの報道もあったが、こちらも通常通り。

ベルナベウ帰還となる試合の意味合いは大きく、メンバーを落とすことは避けたかったのだろう。

 

■セルタの先発メンバー

GK:ディトゥーロ

DF:ウーゴ・マージョ、ムリージョ、アラウホ、ガラン

MF:タピア;ブライス・メンデス、デニス・スアレス、セルビ

FW:イアゴ・アスパス、サンティ・ミナ

 

46分:タピア→ベルトラン、52分:ブライス・メンデス→ソラーリ、63分:セルビ→ノリート、サンティ・ミナ→ガリャルド、89分:ムリージョ→アイドー

 

セルタはここまで勝ちなし。

 

不安定な組み立て、セルタは狙い通り

アラバがおらず、左サイドバックは若いミゲル。昨シーズンにトップチームで見た限り、技術がないわけではなさそうだったが経験値が少ないのはいかんともしがたく、組み立ての不安は大きかった。

さらにクロースが継続して不在なので、サイドチェンジで大きく局面を変えるというより、同じサイドで継続する形が多く見られた。

 

4分にいきなり先制を許した場面は、カゼミロがチャレンジしたところで前にこぼれる不運はあったものの、発端はミゲルの中に戻すパスのミスから。

ベストの形とは違うこれらのポイントと、前から追ってくるセルタの狙いがぴたりとかみ合ってしまった格好だ。

 

セルタはその後もサイドバックにボールが入ったところで積極的な守備。

こういう守備はもともと狙っていた形だったように思われ、しかも得点できたのでよりエネルギーをもってやっている印象だった。

後述する前からの守備の問題もあり、セルタのやり方に対処する形でモドリッチが低い位置に下がってくるのは後半になってから。

それまでやりたいことをできていたのはセルタの方だったと言っていい。

 

マドリーはこの後も、カゼミロとカルバハルのパスミスで危ないショートカウンターを受けていて、マドリー後方は精度を欠いていた。

失点には繋がらなかったが、危険なパスミスが何度もというのは尋常ではない。経験のなさで処理できるミゲルだけではなかったのだから、全体として何か狂いが生じていたのだろう。

 

前半の守備の考え方

マドリーの守備時の形は、アザールが前に残り、ビニシウスが左でバルベルデが右の4-4-2が基本。そして前から人についていくので、実際には4-2-4となっていた。

追いかける展開になったとはいえ、リスキーな形である。

 

そして実際、薄い中盤で前を向かれて、アスパスに楔を入れられて一気に攻め込まれる形がしばしば。

セルタの中盤の縦パスの意識は高く技術もある。楔を落として三人目が出ていく形が統一されていたから、最終ラインは何度も個人で対応しなければならなかった。

守備陣の個人能力を120%引き出すことになる、ジダン期にはあまりなかった「これぞマドリー」という負担のかかり方だ。

 

さらに大きな問題となったのは、流れの中でこの形に戻れずに守らざるを得なくなる場面。

前半は基本形に戻ることが徹底されておらず、しばしばポジションを入れ替えた状態で守備することになっていた。

 

中でもバルベルデが前残りしてビニシウスとアザールの両翼の形が一番怖かったのだが、2失点目はこの形から。

ベンゼマがディトゥーロ、アラウホと追ったところで前に出られていたので、アザールはアラウホを見るか下がるかを選択しなければならなかった。ところがここが曖昧で、アラウホもウーゴ・マージョも見ておらずスペースも埋めていない状態に。

ウーゴ・マージョは、ブライス・メンデスが下りてきて開けていたスペースでアスパスが落としたボールを受け大ピンチ。最後はセルビに決められてしまった。

 

前に4枚いても、成算なく追うことや、ポジションにいるだけの守備が重なっては意味がない。

それどころか、デメリットが大きくなることがよくわかる場面だった。

 

また、4-2-4で前から行くことにより、中盤は前線を支える必要が出てくる。

もちろん、前線の守備を捨てて諦める方法もあるのだが、そこまで割り切った対応はせず。危ないとわかりつつも前の動きに全体としてついていったようであった。

そうなると、モドリッチが前目で前線の下支えをし、カゼミロが最終ラインの前で頑張るという分担になって、モドリッチが組み立てのサポートまで担うことは困難に。

リスクのある形で前に人数をかけたことが、両方の失点の大きな要因となったのだった。

 

後半いきなりの同点ゴールと守備修正

マドリーの1点目は、バルベルデがいたからこそ。

クロースとモドリッチの組み合わせなら、インテリオールがエリア内でファーにいることは考えられない。

 

そして後半開始早々にミゲルが汚名を返上するアシストでベンゼマがヘディングシュートを決め、同点で後半を戦うことができるようになった。

前半にやってしまった分を後半で取り返したミゲルのメンタリティは素晴らしかった。落ち込んで消極的になることなく、終盤までプレー。こういう気の強さがあるプレーヤーは見ていて楽しいものだ。

 

さて、同点になった後の後半は、マドリーが守備を修正。

まず、前半ほど前から追わなくなった。そして、得た時間でアザールを前残りさせる形に戻して守備をスタートするようになった。

 

これらの修正によって、前半のようなやられ方は避けられるように。

相変わらず謎のパスミスは散見されたが、セルタがポゼッションする流れで守備組織として失敗し、ピンチになった場面は少なくなった。

 

マドリーがやり返し

マドリーの守備の修正によるもう一つの効果として、セルタがボールを持って攻める傾向になったことが挙げられる。

4トップで中盤が薄いなら前半のように攻めれば早い展開でゴールに迫れるが、ポジションを埋めるようになったマドリーに対しては、全体を押し上げ、手数をかけての攻撃を選択するのが妥当だったろう。

 

そこでマドリーは前半のパターンをやり返す。

54分、ベンゼマセンターバックを引き出す形でポストプレー、ビニシウスは空いたスペースに。ベンゼマのスルーパスをもらった後、落ち着いてゴール隅に蹴り込んだ。

 

縦パスで最終ラインのディフェンダーを引き出され、サイドバックもいたものの、ビニシウスの動きに反応できる位置を取れなかった。

セルタの2点目のような縦パスに食いついた人のスペースを使う形で、ついに逆転に成功したのだった。

 

守備を締めつつ追加点

リードを得たので、アンチェロッティは前残りして計算できないアザールを下げ、カマビンガを投入。守備の引き締めを図った。

 

バルベルデが先発しているこういう時間帯に、イスコやアセンシオしかいないのとカマビンガが使えることの差は大きい。

カマビンガを先発に食い込むことはまだ先かもしれないが、途中で使うことを考えると選択肢は多く、色々な形で出番を掴みそうだ。

 

しかも、72分にはモドリッチのシュートのこぼれ球を押し込んでいきなりのゴールも。

フォワードでさえ、ヨビッチのようにこうした運に恵まれず苦労するプレーヤーもいるのに、こうしたバタバタした試合の終盤、守備を気にする時間帯で使われての得点だから、彼には運を引き寄せるものがあるとしか言いようがない。

彼の前に道が開けていく様を目にしているようであった。

 

87分、カウンターの場面でビニシウスがドリブルで勝負しペナルティをゲット。

ベンゼマハットトリックをプレゼントして、完全に勝負を決めた。

守備にシフトしつつ守り切るのではなく、得点を重ねるところがアンチェロッティのマドリーらしい。

前半はセルタに苦しめられたものの、結果的にはベルナベウ帰還にふさわしい見て楽しい試合となった。

 

ビニシウス

ビニシウスは、ドリブルの脅威をそのまま残しつつ得点の場面を確実に仕留められるようになってきている。この勢いでどこまでいけるか、とても楽しみになってきた。

 

彼がやった得点後に客席に飛び込むセレブレーションは、このコロナ禍、普通に考えればただの愚かな行為である。

しかし、観客とともにベルナベウに帰ってきたことをこれほど強烈に印象付けられることは他にない。

どんなプレーよりも、この試合を象徴する場面になったのだ。

 

そういうことを自然にできる明るさは、このご時世特に得難いものになっている。

セルヒオ・ラモスロナウドが示していたようなものとは違う形で放たれる前向きなエネルギーをもって、彼がマドリーを引っ張っていくことになるのかもしれない。