連戦の中、ローテーション可能な相手とミッドウィークに対戦。
アンチェロッティの選択は思ったよりも大胆で、結果を出しつつ休みを取らせることもできた。
■マドリーの先発メンバー
GK:クルトワ
DF:ナチョ、ミリタン、アラバ、ミゲル
MF:カマビンガ;アセンシオ、バルベルデ
60分:カマビンガ→ブランコ、72分:ロドリゴ→ルーカス・バスケス、アセンシオ→イスコ、80分:ベンゼマ→ヨビッチ、ナチョ→セルヒオ・サントス
カルバハルの負傷を受けてナチョが右に。メンディ、マルセロが依然離脱中の左はミゲルとなった。
カマビンガは初先発。
前線の両翼はロドリゴとビニシウスのブラジルコンビ。
■マジョルカの先発メンバー
GK:レイナ
DF:サストレ、バリエント、ガヤ、オリバン
MF:フェバス、バタグリア;久保、イ、ラゴ・ジュニオル
FW:ホッペ
46分:久保→ババ、59分:ホッペ→プラッツ、フェバス→アントニオ・サンチェス、ガヤ→ジャウメ・コスタ、76分:ラゴ・ジュニオル→エンブラ
昇格組のマジョルカ。久保の在籍により、日本でまた少し注目されている印象。
前節からかなりメンバーを入れ替えており、この試合で無理しないとの選択と見受けられる。
序盤で流れは決まり
3分、ガヤが味方のパスをトラップミス。
スリップもしてしまったところをベンゼマが奪い、冷静にファーへシュートを決めた。
簡単そうに見えるがファーストタッチがうまく、これによりシュートまでの流れがスムーズになった。
マジョルカとしては、長い時間粘れたらチャンスと捉えて主力を投入することも考えていたかもしれない。
しかしこの失点によって、勝ち点獲得への道筋は険しくなった。
マジョルカの組み立てが不安定で技術的にも高くないと見て、マドリーの前線は積極的にプレス。
相変わらず組織立っていたわけではないが、この試合はそれでも十分な効果が上がっていた。
マジョルカが組織的に押し上げてこられないので、中盤の守備負担は軽くなり、積極的に前に出ていけるように。
3人ともエリア内まで入れるプレーヤーだった組み合わせにぴったりの展開で、マドリーは強みをより生かせる。
これにより、試合の流れは概ね決まった感があった。
24分、ビニシウスの突破から、エリア内に侵入していたアセンシオが押し込んで2点目。
直後、イの素晴らしい突破により失点を許すも、29分に縦パスを受けたベンゼマの落としをアセンシオが持ち込んで3点目。
さすがに、この試合のマジョルカに3点取られる雰囲気はなかった。
動く中盤とセントラルのパス
中盤の3枚はカゼミロ、クロース、モドリッチの組み合わせとは違い、それぞれ流動的に動いていた。
概ねのポジションはメンバー表記の通りであったが、主力組の3人のように形を維持して組み立てに加わろうというプレーではなかったのだ。
そのため、彼らがいないスペースでアラバやミリタンが積極的なパスを選択できるようになっていた。
マジョルカがセントラルからのパスコースを消すことは難しい。
そこを消すためには中盤の面々を離すことになり、彼らにボールを持ち上がられることになるからだ。
前からの守備でこの両方に対処するためには、最終ラインにプレッシャーを与えつつ中盤も監視する人数をかける必要がある。
早々に失点してしまい、マドリーのプレスに四苦八苦していて押し上げられる機会が少なかったマジョルカが、その選択をする余地はなかったのだった。
考え得る対処としては、出し手のところを何とかするのではなく、受け手をケアする形だろうか。
受け手の役割はベンゼマが多くを担う。中央のスペースを狭くして、彼がサイドに出ていく形は許容すれば、3点目のようなやられ方はしなくなる。
サイドに追いやっても、ビニシウスとの連携での裏狙いなどの危険なパターンはあるから万全ではないが、手数をかけさせることができれば、守備が成功する確率は高まる。
この試合を見て、マドリーに対しては、前から追うよりも後方で対処することを選択するクラブが増えるのではないだろうか。
バランスを取ったバルベルデ
アセンシオは後半に3点目を挙げ、久々の先発出場で大きな成果を残した。
中へ持ち込む形で決めた3点目は、利き足の反対サイドに置いたアンチェロッティの狙いが当たったもの。
エリア内への侵入、上下の動き、カットインと、彼にやってほしいプレーができ、それがことごとく成功したと言っていい。
その分控えめなプレーだったのはバルベルデだ。
彼の場合、利き足サイドの右の方が縦に出ていく得意なプレーが見られる。普段と勝手が違う左サイドでは慣れない部分もあったのだろう。
ただ、私はそれよりも、彼が中盤のバランスを考えていたからだと見ている。
アセンシオの長所は攻撃にある。
また、カマビンガも上下に動いてプレーしたいタイプだ。
さらに言えば左ラテラルのミゲルもまだ若く、サポートが必要なプレーヤーである。
バルベルデは、カマビンガに代わって低い位置に顔を出すことが頻繁にあった。
彼も中盤の底に留まるわけではなかったのだが、スペースをついて一気に出ていくプレーもなかった。
低い位置で捌いてバランスを取るプレーは彼の長所ではないが、バルベルデがこのように普段よりも慎重に振舞うことで、危うい組み合わせのバランスを維持したのだった。
発展の可能性はあり
このように考えると、この3枚の同時起用は全員の長所を発揮できるものとは言い難い。
悪い言い方をすれば、アセンシオが右サイドで輝き、カマビンガがある程度自由に動けた分、バルベルデが割を食ったことになる。
この試合は相手の出方やミスにも恵まれ、そうしたことを考える必要なくプレーできた。
だが、普通ならこうはいかない。
カマビンガが空けたスペースを埋めるのに苦労したり、アセンシオの守備負担の軽さによって枚数が足りなくなったりする状況は容易に考えられることだ。
皆が流動的に動き回るのは面白い。
だが、そんな中でも低い位置を基本として下支えする存在は欠かせない。
美しい攻撃で全盛期を迎えた頃のバルセロナも、ブスケツが常にピボーテで支えていたのだ。
彼のような役割なくして、インテリオールより前のメンバーによる攻撃的でスムーズな動きは成り立たないのである。
例えば、カマビンガやブランコがカゼミロのように後方で守備的に振舞うといったような整理がつくなら、こういう組み合わせが考えられないこともないだろう。
ただ、まだまだ彼らは経験が不足している。
特にマドリーは、底で支えてくれるプレーヤーがいることを前提に非常に攻撃的に動くチームだ。
底で支えた存在として、カゼミロ以前ではマケレレやシャビ・アロンソが思い起こされるだろうが、彼らがカバーするスペースは広大で、激務だ。
今のカマビンガやブランコに、この仕事を90分任せるのは難しいと言わざるを得ない。
よって、少なくとも現状においては、この試合の組み合わせはローテーション以上のものにはなり得ない。
その領域を超えるのは、カマビンガやブランコがカゼミロのようなプレーをできるようになった時か、アセンシオがインテリオールの守備負担を受け入れつつ攻撃でも輝ける運動量と賢さを身に着けた時だろう。
この試合の内容と結果によって、その遠い目標に届く可能性を感じることはできた。
後はこれからの試合での出場機会で、彼らが可能性を大きくしていけるかどうかにかかっている。
最後に
過密日程の中、モドリッチを使わずに済んだのは大きい。
後はベンゼマをいつ休ませるか。絶好調なだけにタイミングは難しいが、どこかで休みを取らせるべきだろう。
ヨビッチにも監督交代の効果はあるのかを見てみたい。
今週末はビジャレアルをベルナベウに迎える。
ミッドウィークはCLシェリフ戦。こちらもベルナベウでの試合となっている。