最近の課題は前半と、前からの守備である。
そこそこの出来にはなっていたのに、先制は80分を過ぎてから。勝ったのは何よりだが、なかなか数字に結びつかないもどかしさがある。
その原因は何なのかを考えていきたい。
■マドリーの先発メンバー
GK:クルトワ
DF:カルバハル、ミリタン、ナチョ、メンディ
MF:カゼミロ;モドリッチ、クロース
FW:アセンシオ、ベンゼマ、ビニシウス
60分:カゼミロ→バルベルデ、81分:アセンシオ→ロドリゴ、88分:モドリッチ→セバージョス、ビニシウス→カマビンガ
アラバの代役はナチョ。あとはいつも通りである。
■ラージョの先発メンバー
GK:ルカ・ジダン
FW:オスカル・トレホ、グアルディオラ
65分:バレンティン→シス、73分:グアルディオラ→ファルカオ、ベベ→イシ、85分:アルバロ・ガルシア→シジャ、オスカル・トレホ→エンテカ
最近はルカ・ジダンが先発しているよう。しかしラ・リーガで先発した5試合ではいまだ勝ちなし(1分のみ)。
マルセロ退団後の左サイドバックと噂のフラン・ガルシアは先発。
ポイントの確認
前半の出来と前からの守備については、試合前の会見でアンチェロッティが考え方を述べている。
前者については以下の趣旨のことを述べている。
疲れてくるはずの後半は盛り返すことが多いので、前半の出来が悪いのはフィジカルの問題ではないとの話だ。
これは、ローテーションがあまりされないという昨今の指摘を踏まえ、コンディションが落ちていることを否定したのだろうと思われる。
説明は難しい。フィジカルの問題ではない。なぜなら、もしそうなら前半うまくプレーできず、後半もうまくプレーできないからだ。ところが、後半はとても良いのが通常なのだ。
また、後者については次のように述べている。
下がって守ることで連勝したが、当初アンチェロッティ自身が今のチームの長所と語っていたカウンターを脅威とすることができなくなってペースが落ちた、という分析だ。
これは典型的な「勝っている時にやり方を変えない」というやり方だが、今年に入ってペースが落ちて早2か月。そんなに長い間放置していたというのも考えづらく、パリで下がって受けた結果、何もできなかったショックによるところも大きいように思われる。
エスパニョール戦で負けた後に低い位置で守るようにし10連勝したが、低い位置で守るとカウンターをすることが難しくなる。ボールを持っていない時に、ブロックを作るけれども、より高い位置でプレスをかけて試合をコントロールできるようにすることを考えている。
早い時間に相手にプレッシャーをかけ、奪ったらベンゼマとビニシウスを中心としてショートカウンターでゴールを奪う。
改善が成った時のイメージはこういったもので、PSGを迎えるまでにいくらかでもそのきっかけは掴んでおければ、というのがこの間のラ・リーガでの課題なのであった。
糸口は見いだした
このラージョ戦では、こうしたチームとしての課題を踏まえたプレーができていたように思う。
クロース、モドリッチが積極的に前線に参加してラージョのボールにプレッシャーをかけ、奪ったらシュートまでいく狙いは見て取れた。
この形で序盤から決めるべきシュートチャンスを作れており、きちんとゴールにできていれば、ミッション達成!と胸を張れる試合になっていた。
実際には終盤までゴールがなかったことで、「やっぱりうまくいかなかった」という印象になってしまいがちだが、少なくとも解決の糸口は見いだせたと評価すべきと考える。
試合が進むにつれ、ラージョがプレスをかいくぐれる機会が出てきて、速攻を受けることになっていたのは確か。
ただ、完璧に前プレスをはめ続け、相手を混乱させて得点するまでにマドリーがガチガチにできるかというと、そうは思えない。
「あれ?チャンスありそう?」という感じである程度出てきてもらえる環境にして、時に個人能力で相手の速攻を捌き、スペースがある状態で攻撃する方が得点にはつながるのではないか。
CLではそのままやられる恐れが強くなるが、強いクラブ相手だと、先日のPSG戦で見られたようにボールを持つ時間がチャンスの数に全くつながらない現状がある。
前からボールを取りに行く姿勢を持ち、それで引っ掛けることを目指しつつ、どの程度やらせるかを微調整するのが今のチームには合っているように思う。
そういう路線になっていけば、バルベルデやカマビンガを中盤に組み込む形も見えてくるし、世代交代も進んでいくのではないだろうか。
レベルアップできるかアセンシオ
だからこそ、アセンシオの決定機逸は痛かった。
プレーぶりが数字に結びつかなかったことで印象が悪くなって圧力が強まると、見つけた糸口を手放し迷路で彷徨うことになってしまいかねない。
チームの流れを変えるゴールになっていたのではないかと思ってしまう。
当然、彼個人としてももったいない。
右足で蹴らされた場面は致し方ないにしても、カゼミロが奪ってからのプレーで中央で受けた形は、右サイドに配置された左利きが中央に入ってきてのおあつらえ向きの場面。
こういうボールを平然と決められれば、一発屋的な評価から変わっていくのだが。
フランスからエンバペがやってきたらビニシウスが右サイドに回るから、ビニシウスと競れると期待できるものを見せないと、確実に2番手以下になってしまう。
負傷からのカムバックは素晴らしかった。
だが、今はもう一つレベルアップした確実性が必要だ。
ビニシウスを生かす選択肢を
落ち着いてアシストを記録したビニシウス。
狭いスペースで利き足で受ける工夫があって、速いだけが魅力ではないことを見せてくれている。
それはそれで嬉しい進歩なのだけれど、彼の裏狙いが最近継続的に使われていないのが気になる。
「まずは彼のスピードを生かしたい」というのがアンチェロッティの考えで、シーズン序盤には最終ラインから一発で狙うボールが見られていた。
最近のラ・リーガの試合ではそうした狙いがほとんど見られない一方、PSG戦の前半には苦しければとにかくビニシウスという時もあって、両極端である。
低い位置でボールを持つことになった時にビニシウスを生かす選択肢は、多く持っていてほしいところだ。
最後に
とにもかくにも勝ち点3を得て、ラ・リーガではリードしている状況を維持。
CLまであとはラ・レアル戦のみ。
ベルナベウでの試合なので、ここでチームも観客もいい感触を得て雰囲気を作っていってくれれば。