難しいアウェイ。
毎年勝ち点1でもやむなしと思う相手だが、ローテーションしつつ結果を出した。
■マドリーの先発メンバー
GK:クルトワ
DF:ナチョ、ミリタン、リュディガー、メンディ
MF:カマビンガ;バルベルデ、セバージョス
FW:アセンシオ、ベンゼマ、ビニシウス
73分:アセンシオ→モドリッチ、83分:ビニシウス→ロドリゴ、85分:セバージョス→クロース
ナチョが右ラテラル。カマビンガがピボーテに配置されたため、セバージョスもチャンスを得ている。
■アスレティックの先発メンバー
GK:ウナイ・シモン
DF:デ・マルコス、ビビアン、パレデス、ユーリ
MF:ベスガ、オーイエル;ニコ・ウィリアムス、サンセット、ベレンゲル
FW:イニャキ・ウィリアムス
67分:サンセット→ムニアイン、オーイエル→アンデル・エレーラ、ベレンゲル→グルセタ、76分:デ・マルコス→レクエ、86分:ベスガ→ラウール・ガルシア
サポーターの声援を受けるホームではとにかく厳しい相手となるチームである。
組み合わせは悪い
アスレティックは身体能力に優れ、接触を厭わないプレーヤーが伝統的に多い。
技術が高くないわけではないのだろうが、しっかり走って接点で負けないことを繰り返して優位を築いてくるイメージだ。
彼らに対し、マドリーはモドリッチとクロースを休ませ、チュアメニ、アラバ、カルバハルは引き続き不在。相手を引き籠らせず自陣に誘い込む組み立てに不安を抱えている。
これができていないので、ビニシウスを主軸とする攻撃陣の特長を生かせていないし、もっと悪ければ、バルセロナ戦のようにそもそもリズムさえ作れないレベルとなってしまう。
こうして見ると、彼我の組み合わせとしては非常に悪い。
ただでさえ変更が多く連携がままならなくなる恐れが強いマドリーに対し、アスレティックに前からプレスに来られると苦しくなる。
幸いボールを運べないほどではなかったが、効果的な形は多く作れず。
対するアスレティックは、縦に仕掛けて流れが切れてコーナーを取っても良いというようなプレー。
縦に勝負するたび、セットプレーのたびにサポーターが盛り上がるので、徐々に気圧されてしまうのが新しくなってもサン・マメスの怖いところである。
中盤の配置変更による効果
しかし、マドリーは配置の変更によって先日からの流れよりも少しスムーズになっていた。ピボーテに配置されたカマビンガは、対人の守備とともにこれまでよりシンプルな配球ができていて、良いリズム。
自分で運べるがゆえに、インテリオールでは持ち過ぎる場面が見られることもあったのだが、一列下がって仕事が限定されたことにより、やりやすくなったように見えた。
さらに、年明けから出番が増えているセバージョスが徐々にコンディションを上げている。
この試合においては代役としては十分な働きで、詰まりそうなところを彼の力でかわす場面も見受けられた。
例えば、カマビンガとバルベルデのインテリオールだとタイプが似ていて、うまく回らないのではなかろうか。
これまでの印象だと、カマビンガが周りに合わせてプレーしすぎて彼の良さが消えてしまいそうだ。
モドリッチとクロースほどではないにせよ、セバージョスとバルベルデの組み合わせは相互に補完しながらプレーすることができていた。
また、右ラテラルのナチョも渋く活躍。
カルバハルのような攻撃能力はないが低い位置での保持への関与は安定感があった。出場機会がほとんどないのにこうした役割をこなしてくれるのは、本当にありがたい。
こうした中盤の配置の修正とナチョの対応力によって、アスレティックの圧力は受けつつもスーペルコパの時よりはましな状態に。
前線の力を生かす形とまではいかないながらも、早い時間の失点はせず互角の展開で試合を進めていった。
前半のうちに先制
マドリーの先制は32分。
右のバルベルデのクロスは長くなったが、中央に進出していたアセンシオが何とか残し、ベンゼマが左足で精度の高いボレーを決めた。
バルベルデが右サイドに出て行けるようになったことによって、彼が張り出してアセンシオが中央に進出する変化が生まれてのゴールだ。
現有戦力では、右エストレーモはサイドに張るというよりも柔軟に動くタイプばかり。バルベルデのプレーエリアの広さがあれば、この場面のように動くことは今後も考えられる。
バルベルデがインテリオールに戻った後のスタイルとして参考になりそうな場面であった。
以前も書いた通り、負傷者が多く層が薄い現状では、後半に点を取りに行く交代をすることは難しい。
前半のうちにリードを得られたことでもちろんプレーはしやすくなり、さらに出場時間の管理も考えやすくなった。
スコアレスで60分ごろから主力を投入せざるを得なくなるのと、リードして試合を締めるために使うのでは強度も違う。久しぶりに戦力を温存できそうな展開に。
ビニシウス、柔軟さを
リードを得てやりやすくなったはずのビニシウスは、アスレティックらしい厳しい守備で対応され、数字に残る結果は出せず。
ダンス騒動以来ヒールになっているのはやむを得ず、それを貫くのであればプレーで黙らせるしかない。この点については、些事に関わらない図太さがもっと必要だ。
こうした精神的な問題は別にすると、プレーとしては、ドリブル主体ではなくエリア内でワンタッチゴールを決める狙いに切り替える時間がもっとあっていいかもしれない。
ミドルサードからドリブルで勝負するので、守備側としてはファールで止めておけばOKということになるし、ファールも込みで流れを切ってリズムを寸断するのはアスレティックの得意な形だ。
エリア内で危ない守備はできないのだし、攻撃陣にとってはゴールを挙げることが何よりの薬。ゴールに直結しない位置で厳しい守備を受けて消耗するのはもったいない。
もちろんこれは状況に応じてのこと。
現状ではメンディの攻撃面での寄与がほぼないし、ビニシウスが左で運ぶのがメインの手段となっているから、彼がやらないとチームとして苦しくなるのは確かだ。
それでも、この試合のようにリードしている時は、柔軟に考えてみてもいいのではないだろうか。
それこそ、相手が出てきてくれるのでバルベルデが彼の仕事を担うことも考えられる。
得点はあまり挙げないドリブルだけのプレーヤーにならず、もう一つ先の役割へのステップを見据えてほしい。
主力組で締め
追加点こそなかったものの、先手を打って交代枠を多く使い強度を上げてきたアスレティックの攻めをしのぐマドリー。
こういう相手には対人能力が高いリュディガーは生きる。ウィリアムス兄弟らアスレティック攻撃陣に接点で勝って、危険な場面の手前で処理することができていた。
そして、残り30分を切って交代で出てきた主力組が試合を終わらせにかかる。
モドリッチで中盤の安定感をさらに高め、残り10分を切ってからロドリゴとクロースを使い石橋を叩いて渡る。
その二人が関与したカウンターが89分に決まって勝負あり。
ロドリゴのパスが後ろに行ったが、クロースが体をうまく使って得意のコントロールショットの形に持ち込みゴラッソ。
バウンドしているボールをダイレクトというだけでも難しいのだが…
終盤のアスレティックは怖かったが、2点差になって安心。
結果的には良い試合運びで勝ち点3を得た。
最後に
出場したプレーヤーの多くが良いイメージを残し、苦しい1月の状況を変えられるきっかけにもなり得る試合となった。
木曜夜にコパデルレイのアトレティコ戦、日曜には19節ラ・レアル戦と、試合間隔が短いのは相変わらずで、身体的なコンディションの向上は難しいと思われる。
しかし、こうした試合があると精神的には上向いていくもの。
CL再開を見据えて、うまく士気を高めていってもらえれば。