移籍市場が開いているのものこりあと数日となり、獲得とともに現有戦力の整理もあわただしくなってきた。
■イジャラメンディ
イジャラメンディに関してはイングランド方面の関心がシーズン中から伝えられていたが、オフになって古巣であるラ・レアル、レアル・ソシエダへの帰還が報じられるようになった。
イジャラメンディが選んだのはその古巣。当初は帰還には消極的だと報じられていたが、慣れた土地とクラブで再起を図ることとなった。
今シーズンはレンタルで、来オフに移籍金1600万ユーロプラスインセンティブで最大2000万ユーロ程度が発生する形と報じられている。
イスコと並びスペインの若手有望株をトップチームに組み込もうという彼の獲得は、ペレス会長の肝煎りだった。ソシエダをCLに押し上げた彼を獲得し、同郷の先輩シャビ・アロンソの後釜に据えようとしたのだった。能力の評価はもちろん、スペイン人であるということが、クラブにとっては大きな意味のあることだった。
違約金満額の4000万ユーロ程度(それより少ない3200万との報道もあり)を支払ったという事実は、国内の移籍ということもあるが、プレーとともにそうしたピッチ外のもろもろの期待の表れだったといえる。
しかし、イジャラメンディにはタイミングが悪かったのかもしれない。
シャビ・アロンソの壁は高く、彼の在籍中はそれを越えることができないままで、その後にはクロースがやってきた。彼もまたペレス会長のお気に入りの一人であり、アンチェロッティからの信頼が厚かったこともあって、ポジションを奪うに至らず。アンチェロッティのシステムではピボーテが一人しかおらず、その一枠を争うのは厳しかった。
ただ、彼にもチャンスはあった。
思い出されるのは、’13~’14シーズンのCL準々決勝第2戦のドルトムント戦。
ホームでの第1戦を3-0と勝利し、大きな試合ではあるものの、アウェイでの第2戦は余裕を持って進められる展開のはずだった。
本来のポジションではないインテリオールとしてながら、イジャラメンディは先発。後がないドルトムントの攻めを落ち着いていなしながら時間を進めたい試合にも拘らず、不安定なプレーでチームを落ち着かせることがなかった。しかも、チームを窮地に追いこむこととなった2失点目の基点となってしまい、結局後半頭でイスコと交代することとなってしまった。
落ち着いてより良い選択をすべきところで、そうではないプレーをしてしまうのは致命的で、マドリーのようなクラブでプレーする準備ができてないように見られることとなった。
ベニテスが監督となり、より慣れたポジションでプレーできる可能性はあった。しかしながら、カゼミロもポルトを経て台頭し層は厚く、出場機会が少ないままになることが明らかなことから、以前から移籍の可能性が高いと報じられてきて、彼はこのタイミングで帰還を選択した。
マドリーでは残念な結果となったが、継続的に起用されれば復活は十分可能。古巣でキャリアを取り戻せることを祈っている。
■コエントラン
コエントランは、モナコへ1年間のレンタル移籍となった。
PSGのディーニュがローマ、モナコのクルザワがPSGとサイドバックが移籍したことから、枠の空いたモナコに移籍する形。
彼に関しては負傷が全てだった。
マドリーへの移籍は、モウリーニョと同じメンデスが代理人であるためだろうと多くの人に言われ、マルセロと左サイドバックのポジションを争うのではなく、不可解な中盤での先発起用など、政治色の濃いイメージ。プレーの面でも攻守ともにぱっとせず、マドリーが好む攻撃的サイドバックであるマルセロを上回ることはできないままであった。
そうしたイメージを払拭し、この1、2シーズンは、マルセロより守備で計算できるサイドバックとして一定の信頼を得てきたところだった。
それでプレー時間が増える・・・はずだったのだが、負傷が続いた。
大事な試合や、マルセロが離脱したタイミングで起用できる状況にないことが往々にしてあり、彼にとってはチャンスになりそうな試合を何度も逃した。
マドリーでの4年間で100試合出場という実績は、マルセロがいることを考えても寂しい数字。負傷さえなければもっとできることはあったのではないだろうか。
レンタル終了後にマドリーがどう取り扱うかは、モナコでコンスタントにプレーできるかにかかっている。まずは怪我なくシーズンを戦って欲しい。
■ルーカス・シウバ
昨シーズン、モドリッチをはじめ中盤の負傷が相次いだため冬の移籍市場で獲得。穴を埋めるかと思われたが、アンチェロッティには信頼されず、リーガ8試合、CL1試合の出場に留まった。
今シーズンはダニーロが加わり、EU外枠が埋まることから移籍は確実視されていた。マドリーが将来的な戦力と考えるならば、二重国籍を取得するためスペイン国内のクラブにレンタルさせるはずだが、数多くあると報じられていたオファーのうちどれを選ぶかはプレーヤー側に委ねられたそうで、国外のマルセイユへのレンタルとなった。
こうした経緯を考えると、今のところマドリーは来シーズン以降すぐに戦力とすること考えていないように見える。
だが、イジャラメンディのところで触れたように、移籍先で信頼され、一気に頭角を現し戦力として帰ってきたカゼミロのような例もある。国籍を考えると難しい決断だっただろうが、マドリーを良く知るミチェルが率いることとなったマルセイユへ送り出したのは、成長して帰ってくることを期待してのものだろう。
来シーズン、EU外枠であっても戦力としたいと思えるようなプレーヤーとなってくれれば。