マドリーの開幕戦は、久々にプリメーラに戻ってきたスポルティング・ヒホンとアウェイでの試合。
■マドリーの先発メンバー
GK:ケイラー・ナバス
FW:ヘセ
55分:ヘセ→ハメス、71分:イスコ→コバチッチ、83分:ダニーロ→カルバハル
先発は報道通り。右サイドバックはダニーロ、ベンゼマのいないセンターフォワードの位置にはヘセが入った。
■スポルティング・ヒホンの先発メンバー
GK:ピチュ
DF:ロラ、ルイス・エルナンデス、ベルナルド、イスマ・ロペス
MF:カルモナ、セルヒオ・アルバレス、ナチョ・カセス、ジョニー
FW:ゲレーロ、サナブリア
71分:ゲレーロ→ムニス、77分:ジョニー→メネンデス、85分:カルモナ→ラシッド、
まずは残留が目標。エル・モリノンの熱気は変わっていなかった。
■プレシーズンから実戦へ
マドリーの形は、プレシーズンで定番だった4-2-3-1から守備時に一人(この試合ではロナウド)をトップに動かして4-4-2に変形するもの。
プレシーズンでは、高い位置で奪う守備がどの試合も継続して見られ、攻撃の質はこれからだが、それに繋げるための守備が整備されていきそうな様子だった。
では、初の公式戦ではどうだったか。
クラブの差は歴然たるものがあるが、スポルティング・ヒホンは組み立てできちんと繋ぐ意識を持っていた。中盤のプレーヤーの足元の技術が高く、セルヒオ・アルバレス、ナチョ・カセスのピボーテを中心に、きちんとパスコースを作り正確に繋いでいた。マドリーのプレスはその繋ぎの前に後手を踏むことが多く、空振ってカウンターを受けることが多かった。
クラブの規模から言えば、プレシーズンで対戦した各クラブの方が明らかに上だが、プレシーズンマッチと実戦の違いは大きい。リーガらしい繋ぎから、空いたスペースを使って早くシュートに持ち込もうとするスポルティング・ヒホンに対し、思ったよりもプレスの効果はなかった。
マドリーの攻撃は、アンチェロッティ期から明らかに変化しつつある。
ボールを奪ったらできるだけ早く縦に運ぼうとする意思が見え、ボールを回収した後はどのプレーヤーもまず縦に出そうとしていた。それが詰まった時にペースを落として攻撃を作る、といった優先順位。
そのため、互いに攻め合う時間帯が何度もあった。
これはマドリーとしては望ましい展開ではない。スペースがある状況で攻撃をすれば得点のチャンスはあるが、同様に攻撃を受ける時は怖い。ディフェンスに当たって入るような事故が起きないとは限らないからだ。
マドリーとしては速い攻めを見せつつ、ある程度はボールを持ってリスクを軽減しながら攻撃を作りたかった。そうならなかったために、序盤の時間を費やすことになり、スポルティング・ヒホンには自信を与えることになった。
■大きすぎるベンゼマ不在の影響
遅い攻めとなった時のマドリーは、アタッキングサードにかなり人数をかけていた。そうなった時はスポルティング・ヒホンも退いて守るので、ピボーテも高い位置でボールを扱うような状況。そこからワンツーを狙ってイスコやロナウド、マルセロ、ダニーロなどがワンツーでエリア内に進入しようとする。
この時の問題は、ポストに入るプレーヤーがはっきりしていないこと。
みなエリア付近で何かしようとするので、狭い範囲に敵も味方も多くおり、あまりにもスペースがなかった。さすがに技術は高いのでそれでも何か起こせそうな場面があるにはあったが、狭すぎて難易度が高かった。
誰でもポストに入るといえば聞こえは良いが、逆に言えば中央で軸になれるプレーヤーが明確にならず、何となく流れの中で中央に殺到してしまっていたということ。
この攻めを見ると、ベンゼマの不在を痛感する。
ヘセの努力は認めるとしても、彼は自分が生かされるタイプのプレーヤーで、2列目を生かすことに長けてはいない。プレースタイルとしても、もともとサイドのプレーヤーなのもあって、サイドに進出することが多かった。そのこと自体は必ずしも悪いことではないが、その代わりに中央で味方を楽にできるプレーヤーがいないので、うまくいかない。
ベニテスは新たな9番を探してはいないと言ったが、ベンゼマが復帰しても負傷や出場停止などの際にどうするかという問題は残ることになる。
確かにいくらか運が足らず、プレーの正確性の問題だった場面もある。だが、この問題を改善しようとしないならば、同じように格下相手に勝ち点を取りこぼすことが増えるだろう。
ヘセはタイプが違いすぎるのだから、あまり固執せず、中央で周りを生かせるフォワードをチームに加えるべきだ。
■良いチームだったスポルティング・ヒホン
格下のクラブが時間が経つにつれて運動量が落ち、後半になって決壊し大量失点してしまうのは、よくある展開。
そうした形でマドリーがペースを握れるかと淡い期待をしていたが、熱い応援を続けるスタジアムに押されたこともあってか、スポルティング・ヒホンのプレーレベルは落ちないままだった。
後半になりロナウドやベイルがスペースを使えるようになっていったのは確かだが、最後はやらせてもらえなかった。ピチュのポジショニングも光っており、良いシュートがあっても落ち着いてセーブされていた。
マドリーの不甲斐なさはあったものの、スポルティング・ヒホンの充実ぶりは称賛に値する。
終盤はマドリーが押し込む時間が長く続いたが、その時は前半からの攻撃をある程度放棄してまずはブロックを作ることに専念しており、チームとしての意思統一がきちんとなされていた。その上に運動量と、リーガらしい技術の高さがあり、レベルの高いチームだった。
この出来が維持できれば、少なくともホームのエル・モリノンでは上位陣も楽な試合はさせてもらえないだろう。
■妥当な結果
結果はスコアレスドロー。
ベイルのヘディングが入っていればとも思うが、スポルティング・ヒホンにも大きなチャンスがあり、勝ち点1は妥当な結果だ。
ベイルのトップ下起用については、ボールタッチの機会が増え、シュートに繋がりそうな場面がそれなりにあった。足元の技術というより身体的な能力を生かしたいプレーヤーであるし、当然中央は守備に絞られることが多いので、使わなければならないのであればサイドでプレーに窮するよりはまだましになる可能性は見せたといえるだろう。
ただ、それも今後の出来による。使われるからには、コンスタントにゴールに絡んで欲しいポジションなので、自身がしっかりゴールを挙げられるかどうか、周囲を生かせるかどうかを見ていきたい。
たまに決まるであろうゴラッソよりも、そうした仕事ぶりが見えるようになってくればと思う。
ベンゼマは次節から最低でもベンチには入れそうな状況。中央の攻撃が整理されて落ち着けば、サイドも生きてくるし、奪われた後の守備も効果が出てくるだろう。ベンゼマが先発して、攻撃とそこから繋がる守備が改善されることに期待。
だが、ベンゼマ不在時を考えると、フォワードの獲得は必須であり、繰り返しになるがそのことは書いておきたい。彼がいないだけで質が落ちるようでは、他のプレーヤーの質も選手層も意味がない。適切な補強を望む。
次節はベルナベウでベティスと対戦する。