ジダンの監督就任以降、客足も戻りつつあるベルナベウ。この試合も7万人超えとなった。
■マドリーの先発メンバー
GK:ケイラー・ナバス
DF:カルバハル、ペペ、バラン、マルセロ
MF:モドリッチ、クロース;イスコ
46分:ベイル→ヘセ、60分:イスコ→ハメス、65分:ベンゼマ→コバチッチ
負傷で大事を取ったセルヒオ・ラモスの他は、前節と同じメンバーが並んだ。
■スポルティングの先発メンバー
GK:クエジャル
DF:ロラ、ルイス・エルナンデス、メレ、イスマ・ロペス
MF:ジョニー、セルヒオ・アルバレス、カセス、メネンデス
FW:ハリロビッチ、ゲレーロ
46分:ハリロビッチ→エンディ、61分:セルヒオ・アルバレス→ラシッド、73分:ゲレーロ→サナブリア
残留に向けた戦いとなるスポルティング。
■イスコとベンゼマ
前節はモドリッチとクロースの前にイスコが入り、ラインの間を動き回ってボールを受けることで攻撃を動かし、そこからサイドへと展開していく形が見られた。今節もイスコの動きは同様。ラインの間でボールを引き出しながら、前線まで出て行ったり低い位置まで降りてきて組み立てを助けたりしていた。
足下のうまさはマドリーでもトップクラスで狭いところでも受けて捌ける彼が、神出鬼没に様々なところに顔を出すことで、マドリーの攻撃は大きく改善している。
ベンゼマも前節に比べスムーズにボールを受けに降りて来ていた。イスコがサイドに出るなどしていない時は彼が中央で受ける役割を担っており、少しずつ補完関係が出来て来ているように見え、前線に張り付いていることが多かったベニテス期とは全く違う質のプレーになっている。
彼ら2人の動きでマドリーの中盤の組み立てが修正されつつある。
いかに優れたプレーヤーといえども、モドリッチとクロースだけが孤立していては何も出来ない。彼らからうまくボールを引き出し、時に低い位置でのボール回しを助けるようなプレーヤーがいてこそ、本来の能力が発揮できる。
スポルティングは4-4-2で守っていたが、モドリッチとクロースはさほどプレーを阻害されなかった。
クロースが最終ラインに下がるお馴染みのプレス回避をしていたが、ペペ、バランとの4人はあまり大きく動かずにプレスをかわせていた。アンチェロッティ期にはサイドバックの陰に隠れる形があったが、強いチームで前線からのプレスが速い相手と戦う際に、ジダンが彼らにどのようなプレスの回避策を示すかが気になるところだ。
イスコは左サイドを中心に動き、マルセロも高い位置で絡むので、左に守備を寄せて右に振る得意の形が機能。クロースは安定して高い精度でボールを送り、ベイルとカルバハルが拾いスペースを享受できていた。
ベニテス期の閑散とした中盤からのサイドチェンジとは意味合いが異なり、ディフェンスにスライドや集散を強いていて、効果的な形になっている。
■守備への切り替えの改善
高い位置での守備も前節よりスピードアップしており、失敗も少なかった。
イスコの献身もさることながら、前線の3人もかなり集中して攻守の切り替えをしており、高い位置を取っている両サイドバックも参加してすぐに寄せることができていた。
また、最初のチャレンジがかわされた時の次の寄せも速く、スポルティングに息つく暇を与えなかった。カットしてスローインになった際は戻ってブロックを作るといった切り替えもはっきりしており、統率が取れていた。
スポルティングは、高いラインの裏をハリロビッチが取れればチャンス。何度か良い形でボールを持て、可能性は感じる仕掛けを見せていたが、散発。マドリーのプレスをかいくぐるだけのプレーは見られなかった。
想定よりマドリーの切り替えが速く、対応できなかったのかもしれない。
マドリディスタとしても、これほど早く守備を整えられるとは思っていなかった。
どういった攻撃を志向するか、ということはジダンの現役時代を考えれば想像がつくし、攻撃面でらしさが出てくるとは考えていたが、そこからの守備についても、コンパクトにして速く奪う方向性をきちんと打ち出している。
アンチェロッティ期には同様のことができていたのだから、能力としてやれるということはわかるが、扱いが難しいプレーヤーたちをその気にさせたというところにジダンの就任効果が現れている。
■最高の前半
こうした攻守の改善が見られ、前半はまさに完璧と言って良い試合運び。
7分にベイルがコーナーをヘディングで決めると、9分にはロナウドが追加点。ベンゼマのパスは理想より後ろにずれ右足は使えなかったが、反転して左足でボレー。素晴らしいコースに決めた。
さらに12分にはベンゼマがバイシクルで決め、18分にはカルバハルのグラウンダーのクロスにロナウドが合わせ、10分あまりで4得点を挙げた。
41分にはイスコの美しいアシストからベンゼマが決めて5-0とし、完璧な前半を締めくくった。
BBCの技術の高さはもちろんのことではあるが、彼らに効果的にボールを供給し続け、失敗してもすぐに奪える形ができていたことが大きな要因。
また、ベイルが落ち着いてプレーできていること、ロナウドも集中している様子であることも重要で、不安定な時期を過ごした前半戦とは打って変わってチームとしても個々のプレーヤーとしても落ち着いて士気を保っているからこその内容。
グラナダ戦のように釈然としない大量点といったことはなく、ベルナベウも喝采でチームのプレーを称えていた。
■控えの奮起を
こうした試合の後半、省エネの意味もあって大きくペースを落とすのはよくあること。
見ている側としては前半の続きが見たいところではあるが、今後を考えれば当然の判断でもあり、この試合では好調だったベイルが負傷交代を余儀なくされたことから、1失点したことも含め後半の内容が薄かったことは、やむを得ないものと考えている。
それよりも、ベストメンバーでここまでやれる、というプレーを見せた前半をより評価したい試合だ。
ただ、気になるのは控えとなっているメンバーが、どこまで先発のプレーに迫れるかというところ。
この試合ではヘセ、ハメス、コバチッチが途中から出場したが、まずまず可能性を見せたのはヘセくらい。右サイドで何度か良い形でボールを持てており、利き足サイドであることもあってベイルよりえぐるプレーができそうだし、中へ入ってシュートという形もありそうではあった。
あとの2人は存在感なし。
ハメスはアップを指示通りにしていなかったと報じられているが、それを差し引いてもイスコのような献身ぶりはなく、中盤でぱっとしないプレーに終始。パスで能力の高さを見せていたのに、それ以外の部分でもチームに貢献しようという意欲が感じられなかった。
もちろん、チーム自体の動きが悪かったことももちろん影響しているだろう。だが、ジダンが監督となり、先述したイスコのようなプレーが求められ評価される状況で、かつ彼もそのポジション争いをする権利があるにも関わらず、プレーの幅が変わらないならばもったいない。
60分からの出場は当初の予定通りであると思われ、うまくいけばイスコを脅かせるのだから、得意ではないプレーにも取り組んでいってもらいたい。
コバチッチも本来のポジションではないサイドでプレーし、試行錯誤はあるだろう。だが、技術の高い中盤のプレーヤーとなれば、先発の3人とはメスに次ぐのが彼だ。モドリッチやクロースが出場できない時は彼に出番があると思われるので、早く新しい体制に慣れてくれればと思う。
今節では出場機会のなかったその他のプレーヤーも、今後どのように新しい監督のチームに組み込まれていくのだろうか。
今のところ、技術の高いプレーヤーでボールを持ちつつ、守備への切り替えを速くしようというのがジダンの考えであろうから、そういうタイプではないプレーヤーの処遇には不安は残る。
せっかく良い再スタートとなったのだから、できるだけ多くのプレーヤーを計算できるようにし、チームの層もうまくつかっていきたい。アンチェロッティ期のように実質13,4人程度で回すのは厳しすぎるのだ。
良い競争がもっと起こることを期待したい。
■好スタート
ジダン監督となって2試合で10得点1失点。
相手に恵まれた日程ではあるにせよ、内容の伴った良いスタートとなっている。ベルナベウを早々に味方につけられたという点で、この2試合は大いに意味のあるものになった。
今後しばらくは余裕のある日程、相手が続くので、その間にうまく基盤を固め、CLを含め強い相手との対戦に備えていってもらいたい。
次節はアウェイでベティスと対戦する。