CLが開幕。マドリーは史上初の連覇を目指す。だが、その大きな目標を語ることも難しいほどの初戦となった。
■マドリーの先発メンバー
GK:カシージャ
DF:カルバハル、バラン、セルヒオ・ラモス、マルセロ
MF:カゼミロ;モドリッチ、クロース
67分:ベイル→ルーカス・バスケス、68分:ベンゼマ→モラタ、77分:クロース→ハメス・ロドリゲス
ベンゼマが先発。カゼミロとマルセロも帰ってきた。
■スポルティングの先発メンバー
GK:ルイ・パトリシオ
MF:アドリアン、ウィリアム・カルバーリョ;ジェウソン、ブルーノ・セーザル、ブライアン・ルイス
FW:ドスト
70分:ジェウソン→マルコビッチ、73分:アドリアン→エリアス、89分:ブライアン・ルイス→キャンベル
下馬評としては3番手のスポルティング。グループステージ突破を目指す。
■何もなかった前半
前半はとにかく退屈な出来。
前線の動きが乏しく、後方からのパスの出しどころが少なかったため、ボールが前に進まなかった。
支配率はスポルティングを上回るものの、アタッキングサードでの良い場面は数えるほどで、決定機などなく、何も起きなかったといっても良いほどだった。
結果論とはなるが、途中出場のオサスナ戦を経て先発に復帰したベンゼマ、一度先発してこの試合に臨んだロナウドと、復帰直後のプレーヤーを2人並べたことは完全な失敗だった。
運動量がなく、危険な位置でボールを触れないなら、いかに能力が高いプレーヤーを出しても意味はない。せめてベンゼマはもう1試合途中交代で様子を見ることとし、コンディション的に問題のないモラタに動いてもらった方が良かっただろう。
前線で動き回り奮闘していたのはベイル。サイドから何とかしようと試みていた。だが、彼もボールの精度を欠く場面が多く、最後のところを合わせきれないまま。
ベイルだけでは、モドリッチやクロースが出しどころに困るケースが多く、攻撃のリズムは作れず、ましてスピードアップして崩すようなことができるような状況ではなかった。
もちろんスポルティングの奮闘も見逃すべきではない。
士気が高く、序盤からボールを良く追っていた。マドリーがプレスに引っかかることはなかったが、それでも丁寧にプレスをかけ、マドリーの時間を削いでいった。
■大幅な変更なしで
こうした展開では、格下の方が相手のペースに慣れていくので、時間の経過とともに心理的に優位に立つことが多い。
それを断ち切るためには、ハーフタイムは絶好の機会となる。試合の中で精神的にリセットすることはできないが、ハーフタイムでは落ち着いて話をすることができるし、場合によっては選手交代もしてしまえる。
ところが、後半のマドリーに大きな変更はなかった。
例えば、ベンゼマは、オサスナ戦でのロナウド同様、60分前後出場させることを目指していたと思われるが、明らかに動きの悪かったので、後半頭からモラタを使う選択肢はあった。また、中盤は動かしづらいものの、自分で持ち上がれるコバチッチを投入してしまうということも考えられただろう。
だが、ジダンはそうした大幅な交代はせず、出場しているメンバーの改善に期待した格好。
それはそれで、送り出された方は信頼を感じるものだし、まして先発したのは、何も問題なければ今のチームのベストメンバー。もう少し様子を見ながら、プレーヤー自身による変化を期待するのは、考え方としてはあり得るもの。
モウリーニョであれば2人くらい選手交代していてもおかしくないような前半であっても、プレーヤーに任せ改善を促すのがジダンのスタイルということなのだろう。
マドリーにとって酷だったのは、いずれにせよ決断を下したハーフタイムを終え、後半が始まってすぐにスポルティングに先制を許したこと。
ゴリゴリとボールを前に運ばれてしまい、こぼれたところをうまくファーに決められた。力強いドリブルではあったが最初のエリア侵入の時点での守備が軽かった。
マドリーは前半の悪い内容の代償を払い、スポルティングは頑張りが報われることに。こうなると、耐え忍んで粘ってきた側はより一層勇気付けられる。
後半がほぼ全て残っているので、時間はまだあると思ってしまうが、得てしてそれも怪しい。リードしたらより一層はっきりプレーするようになるし、精神的な優位もあるからだ。
「あと40分ある」と思えるのは、それまでに良い内容のプレーをしていた時で、エンジンがかからないまま前半を過ごしたチームが、そこから立て直すのは容易なことではないのだ。
それでもマドリーは大幅な変更をせず、同じポジション同士の交代でギアチェンジを図る。
強いて言えば77分のクロースとハメスの交代が一番リスクを負ったもの。このような比較的保守的な交代策は、ジダンがアンチェロッティから受け継いだ要素のように思う。
68分にベンゼマがモラタと代わってからは、コンディションに問題のないモラタがよく動くようになり、ようやく前線が面白くなってきた。
スペースができてきて、入れ替わりの激しい試合になってきたことはスポルティングにとっては不利な要素。さすがに疲れも出てきて、巧手の切り替えが難しくなってきていたように思う。
残り10分を切り、スポルティングは終わりを意識して最後のひと頑張り。マドリーは単調ではあるもののクロスを入れてエリア内のプレーを増やしていった。
そんな中、88分にロナウドがエリア前の位置でファールを受ける。前にディフェンダーが多いこともあり、ロナウドのプレー選択は下げるパスだったから、スポルティングとしてはもったいないファール。
このフリーキックをロナウドが直接決めて、マドリーがようやく得点を挙げた。
ロナウドにしては珍しく巻いて落とす蹴り方。思えば、昨シーズンのボルフスブルク戦で壁の間を抜けて決まったフリーキックも、それほど強い無回転を意識した蹴り方ではなかった。また、デシマのシーズンのバイエルン戦での壁の下を抜くフリーキックも思い出される。
プライドが許さない部分もあるのだろうが、こうした蹴り方の方が特に距離が近い場面では、柔軟な選択をした方が良いだろう。強いフリーキックがズドンと決まるのは素晴らしいが、それを狙って一向に入らないより、とにかく入るフリーキックを見たい。
土壇場で追いついたマドリー。残りはアディショナルタイムのみであと1点、という場面。これで同点で終わらなかったのはすごい。
残りはあと数プレーというところで、ハメスのクロスにモラタが頭で合わせた。
ハメスは、交代起用に応え、ぴたりと合わせるボールを送った。この場面以外でも、良く走り相手ボールを追っていたのが印象的。こうしたプレーが続けられればチャンスは増えるだろう。
モラタも値千金のゴール。復帰してきたベンゼマに先発は譲ったが、逆にコンディションの良さを際立たせる動きを見せて、最後にはゴールを挙げた。少なくとも現状においてはモラタの方を見たいと思わせるには十分な内容で、それに劇的なゴールもついた。まだシーズン序盤だが、チームでの序列を考えたくなるような結果を出した。
スポルティングは88分の努力が6分で水泡に帰した。少なくとも勝ち点1には値する戦いぶりだったが、最後まで粘りきれず。彼らのグループステージでの戦いは面白いものになりそう。アウェイでの試合は注意して臨む必要がありそうだ。
■層の活用を
マドリーは幸運な勝利。
先発組の凡庸さから、選手層を生かしてローテーションした方が良いと気づけた点は、良い教訓になった。無理に使い続けるより、ほどほどに休ませながら良いパフォーマンスを引き出していきたい。
ジダンはそうした起用をしてもプレーヤーを抑えられる人物。その強みを利用しない手はないだろう。
今後の日程も過密である。
日曜日にアウェイのエスパニョール戦があり、ミッドウィーク開催のリーガでは水曜日にビジャレアルをベルナベウに迎える。
控えは信頼できることが明らかになったので、特定のプレーヤーに無理をさせず乗り切っていって欲しい。