難しいアウェイ、しかも悪天候の中粘って勝利。
■マドリーの先発メンバー
GK:アレオラ
DF:カルバハル、ミリタン、セルヒオ・ラモス、マルセロ
MF:カゼミロ;モドリッチ、クロース
FW:ベイル、ベンゼマ、イスコ
67分:ベイル→ロドリゴ、80分:モドリッチ→バルベルデ、89分:イスコ→メンディ
バルベルデがベンチとなって、おなじみの中盤とイスコが先発。
■アラベスの先発メンバー
GK:パチェコ
DF:マルティン、シモ・ナバーロ、ラグアルディア、ドゥアルテ
MF:ワカソ、ピナ;ビダル、リオハ
FW:ルーカス・ペレス、ホセル
60分:リオハ→バーク、76分:ピナ→ポンス、82分:ワカソ→マヌ・ガルシア
招集リスト記事で触れたとおり、ホームでは2失点のみと、彼らにとっては勝ち点が計算できるスタジアムになっている。
パチェコ、ホセルと、マドリーに縁のあるプレーヤーが先発。
■プランB、機能せず
PSG戦で良かったイスコを先発起用し、バルベルデをベンチに置いたマドリー。
バルベルデ台頭以降は、彼とクロースかモドリッチという組み合わせでスタートしていたので、GSの大一番を終えて彼を休ませた形。しかし内容は、バルベルデ台頭以前の、今シーズン序盤のものへと逆戻りしてしまうことになった。
この中盤だと、ボールの回収位置が低く、前線が孤立してしまうことは以前から触れてきた通り。
その前線に任せて点を取ってきてくれるなら良いのだが、低い位置へ下がってボールを触りたいイスコ、裏抜けにボールが合うことがほとんどないベイルという両サイドでは期待薄である。
PSG戦ではトップのすぐ下でプレーを継続できたイスコだったが、そのプレーエリアの維持も中盤の下支えがあってこそ。攻撃のスタート位置が低く組み立てに手数を要する状況だと、下りてくるし中央に絞るから、バランスを崩すことになっていた。
こうなると、強度の高いアラベスの守備が効果を発揮する。
アラベスにとって危険ではないエリアでやりあう分には問題にはならないから、ファールもやむなしの強さで寄せられて、リズムを乱されることとなった。
PSG戦のように、アタッキングサードに入るあたりでマドリーがプレッシャーをかけ続けることができれば、ショートカウンターの可能性を握り続けられる。
そうすると、アラベスにもそうした形を望まないよう強いられたのだが、それができなかったことで、守備からの効果的な攻撃も作れなかった。
これは、このメンバーを見て危惧された通りの展開である。
課題はプレーそのものよりも、良い時の形を保てないローテーションを選択しなければならないことにあったと言うべきだ。
バルベルデを休ませることが前提なら、彼抜きでも前に出ていける中盤のプレーヤーを置くか、リトリートしてロングカウンターを狙うやり方に変更するべきだった。
とはいえ、バルベルデの代わりになれる中盤のプレーヤーはそもそも現有戦力にいない。また、ロングカウンターができるビニシウスも先発で使うほどの信頼を得られておらず、交代出場したロドリゴも無理に起用せず大事にしたいようで、駒がなかった。
つまり、自信をもって「プランB」と銘打てるほどの戦力はないのだ。
こうしたやりくりを必要とする時期は今後も出てくる。
その時に計算できる戦力がいなければ、取りこぼしが増える恐れが強まるし、リーガの可能性を減らすことに繋がる。
図らずも、戦力の整理の必要性が見えた前半の内容となった。
■こういう時のセットプレー、2点目は良い時の片鱗
こうした厳しい試合においてセットプレーで点が取れることは非常に大事。流れの中でうまくいかなくても、もぎ取るしたたかさがあった。
うまくいかないシーズンは、流れのまま得点も挙げられず、勝ち点を落としてしまいがちだ。セットプレーでセルヒオ・ラモスが決める、そればかりでは立ち行かないが、そうして乗り切れることは、チームのしぶとさとして評価したい。
そのセルヒオ・ラモスがエリア内で肘を出してしまい、65分にペナルティで追いつかれるも、69分に再び勝ち越し。
PSGには得点直後にやられたが、この週末は、入れられた後にやり返すことに成功した。
勝ち越しゴールは、パスが相手に渡ったところをベンゼマが寄せて蹴らせた後をクロースとマルセロが奪ったところから。
左サイドを使ってから右へ展開、モドリッチのクロスをイスコが合わせ、こぼれたところをカルバハルが押し込んだ。
この2点目の場面は、最近の良い形。
相手ボールにプレスして奪うこと、エリア内に複数のターゲットがいることがそうだ。
ここまで下がりがちだったイスコが、左サイドでのパス交換の流れでゴールに近い位置に入り込んでおり、ワンツーの形を作るフリーランで縦に出ていたカルバハルもそのままエリアに入っていた。
最終的にはカルバハルのゴールになったが、最初に飛び込んだイスコが望みたいプレーをようやくしてくれたことで生まれたゴール。
もちろん高さはないが、ディフェンスには応対しない選択肢は当然ない。低い位置で数多くボールに触るよりも相手に与える影響が大きい。こうしたところに入っていくプレーが続けられれば、彼の評価もまだまだ変わり得る。
終盤は安全策。
バルベルデで中盤を締めた後は、メンディを左サイドバック、マルセロをその前に移す交代と、守り切る選択を明確に。
うまくいっていればビニシウスに少し自由にやらせて自信を掴ませるといった選択もあり得た。それも避けたことに、この試合はうまくいかなかったというジダンの割り切りが見て取れるのではないだろうか。
セルヒオ・ラモスのゴール、その後のペナルティと、彼の「劇場」とはなったものの、同点直後に突き放し、最後は凌ぎ切って勝利を得た。
■最後に
勝ち点を失っていておかしくない試合となったが、何とか勝った。こうした経験もチームをより強くするだろう。
PSG戦まででベースが出来上がってきたことは確認できた。今後はそこから積み上げていくことになる。
現有戦力でも、後半のイスコのようにチームにとって必要なことをしてくれる変化があれば、うまく組み込める可能性は出てくる。
プレーの質を保ってローテーションできる戦力があと数名いれば、やりくりはしやすくなるだろうとは思うが、必要な放出も含め、年明けに検討されることになるだろう。
次節はエスパニョールをベルナベウに迎える。