CL決勝トーナメントがいよいよ始まった。
グループステージを首位通過したマドリーは第一戦をアウェイのローマで迎える。
■マドリーの先発メンバー
GK:カシージャス
FW:ラウール、ニステル
エインセが先発し、それに伴ってセルヒオ・ラモスが右、トーレスが左サイドバックに入った。
ディアラが中盤の底に一枚で配置され、菱形。ラウールとニステルの2トップ。
■ローマの先発メンバー
GK:ドニ
FW:トッティ
トッティのワントップだが、ジュリ、ペロッタ、マンシーニらが絡んでくる、いわゆる「ゼロトップ」の形。
マークしづらい飛び出してくる選手をどう守るか、またはそれ以前にトッティに簡単に納めさせないようにすることがポイント。
■孤軍奮闘のロッベン
最近のマドリーは序盤の攻めが形になることが多い。
7分、トーレスとのパス交換で左サイドを突破したロッベンが低いクロス。グティが合わせたシュートをラウールがコースを替えてゴール。
貴重なアウェイゴールを挙げた。
序盤にいい形ができることが多いのが最近のマドリーの傾向ならば、その良い流れを持続できないのも同じく最近のマドリーの傾向。
ロッベンが確かに何回か良い形を作ってはいた。24分のクロスも良く、ラウールが決めていればアウェイで2点取れていたことになったが・・・
良い位置でボールを受けたときのロッベンは、怪我に悩まされていた時期を忘れさせるようなプレーを見せた。
が、今日のマドリーの起点はまさにここだけ。
ロッベンとともに期待したかったグティが良いプレーを出来ない。
菱形のサイドは彼の居場所ではないし、中央に絞ってもローマの守備がいい。パスが守備網にかかることが多く、彼にとっては苦しい試合。
ベンチに置いたバティスタと補完する形であればよかったのではないか。
守備で流れを作ったローマは24分、マンシーニのクロスのこぼれ球をピサーロが決めて同点。
ゴール前ではマドリーの選手が5人ほど、ローマの選手が2人だったが、その後さらに2人が追いかけてきていた。そのうちの一人のピサーロの前にボールが転がっていった形。
ローマはトッティにボールが渡ると、一気に押し上げてきて、この場面のように、2列目の選手とデ・ロッシ、ピサーロまで絡んでくる。
前半は1-1。ボール支配率はマドリーの55%。シュート数はローマ5本(枠内3本)、マドリー10本(枠内)2本。
■初志貫徹のローマ 理想的ゴールシーン
後半開始時点で両チーム交代はなし。
ローマはトッティを信頼し、しっかり守ってトッティを狙うことに意思統一されている。マドリーの攻撃がロッベンからしか怖くないので、比較的楽だっただろう。
57分、トッティへのパスともクリアともとれるような浮き球を競ったエインセが、ボールをそらしてしまう。トッティが前を向いた時には2対2。
左から斜めに入ってきたマンシーニがパスを受け、カシージャスをかわしてゴール。
素早い攻めで逆転を許した。
アウェイゴールを挙げたとはいえ、追いかける展開に替わりはないのだが、シュスターは交代枠をなかなか使わない。77分になってようやくロッベンとディアラを下げ、ドレンテとバティスタを投入したが、遅かったと思う。
79分ドレンテのクロスをニステルがシュート、ポストに当たるという場面があったが、ゴール前を固められて二次元で突破できないと厳しいのは、ベティス戦同様。
バティスタも見せ場を作れず。
試合はこのまま1-2で終了。ボール支配率はマドリーの60%。シュート数はローマ8本(枠内4本)、マドリー19本(枠内3本)。
支配率とシュート数を見ればわかるように、ボールはいくらでも持たせてくれるが、ゴール前ではしっかり守られている。終盤は時間に追われたせいもあってミドルシュートが増えたが、どれも可能性を感じるものではなく、ローマとしては「打たれても構わないシュート」がほとんどだっただろう。
リードされた時に(かつ相手がしっかりリトリートした時に)、どう打開するかについていまだ解決策がない。来月5日の第2戦、というより今週末のリーガまでに、何らかの形を作ってくれればいいのだが・・・
また、累積警告のため、次節セルヒオ・ラモスが出場停止。ディフェンスラインの組み合わせも検討しなければならない。
■シュスターへの2つの疑問
1.なぜ4-3-3を放棄したのか。
今シーズンマドリーが好調だったのは、3トップとし、高い位置で自由にプレーさせたロビーニョがチャンスメイクと得点を挙げること、両方で活躍したから、と言っても過言ではない。
変更前の4-4-2では、サイドハーフに近い位置で、攻撃力を生かせていなかったし、もう片方のサイドではグティやスナイデルが苦労していた。
3トップとしたことで、ロビーニョの攻撃の役割が明確になって、グティやスナイデルがはっきりと中央でプレーでき、バティスタの攻守両面の能力を活かすことができたのだと考えている。
ところが、ベティス戦、このローマ戦と、2トップに戻して臨んで失敗している。
確かに怪我人が多いことで、修正しなければならない点は多かっただろう。が、3トップを維持できないほどではない。
3トップ時に見られた効率的な攻めは鳴りをひそめ、ボールを持っても攻め手がない、シュートは打っても遠い、苦しい体勢など、非常に非効率的になってしまっている。
CLだからと堅実に行くならば、ディアラ、ガゴの併用もそうだが、そもそも布陣をいじらない方が実を取れるように思うのだが・・・
2.遅い交代はなぜ。
マドリーが交代枠を使ったのは77分だった。既に後半も半分過ぎてしまっている。
この試合ではグティが苦しい状態だったし、そもそも追いかける展開だったので、何か変化を付けた方がいいのではないかと思って見ていたが、シュスターは交代をずいぶん我慢した。
一つの可能性として、このまま1-2で終わっても構わないと考えていたこともあり得る。だが、それならば、ディアラは下げなかったのではないだろうか。
1-2もやむなしならば、ディアラではなく、グティとバティスタの交代など、そのまま置き換える交代の方があり得るように思う。
私には交代の時間と枠の使い方がかみ合っていないように思う。
追いかける展開なので、同点を狙うならば、もう少し早い時間帯で交代を考えて良かったはずだ。もう少し早い段階ならば、この交代はある程度納得できる。
逆に、「1-2とはいえ、アウェイゴールを挙げた、ホームで何とかする」という発想ならば、時間は70分過ぎであっても、上記のようにグティとバティスタを入れ替えるなど、守備に負担をかけない手段が妥当だろう。
最後の交代枠をつかってラウールかニステルを下げなかったことが、抵抗の意思表示だとするならば(あり得る交代の仕方はそれくらいだっただろう)、早い時間に同点を狙う交代をして良かったと思うのだが、シュスターには何か意図があっての遅い交代だったのだろうか。