ベルナベウでの今シーズン最終戦。
■マドリーの先発メンバー
GK:ケイラー・ナバス
DF:ダニーロ、バラン、セルヒオ・ラモス、ナチョ
MF:クロース;コバチッチ、アセンシオ
FW:ハメス・ロドリゲス、モラタ、ロナウド
61分:ハメス・ロドリゲス→カゼミロ、モラタ→ルーカス・バスケス、72分:コバチッチ→モドリッチ
このタイミング、この対戦相手でしっかりローテーション。なかなかできる選択ではない。
■セビージャの先発メンバー
GK:セルヒオ・リコ
DF:パレハ、カリッソ、ラングレ
MF:クラネビッテル、エンゾンジ;メルカド、クローン・デリ、ビトーロ
FW:コレア、ヨベティッチ
46分:パレハ→モントーヤ、89分:クローン・デリ→ベン・イェデル、コレア→ディエゴ・ゴンサレス
4位は確保できそうなセビージャ。コパではマドリーを下している。
■ローテーション、拮抗した内容
ローテーションを行ったジダンの判断はかなり勇気がいる。ミッドウィークに延期分のセルタ戦が控えており、日程が詰まっているのは確かだが、この終盤、1試合1試合が非常に重要なタイミングで、カゼミロ、モドリッチ、ベンゼマといった面々を使わないとは思わなかった。
この選択を可能にしているのは、ひとえに控えの面々の準備の良さ。モラタは継続して結果を出しているし、ハメスも良い状態にある。
特筆すべきは中盤だろう。アセンシオは完全に重要な戦力になっていて、この構成でイスコも使わなくて済むという層の厚さ。守備の不安はあるにせよ、コバチッチがバランスを取ってくれるので、メンバーの名前から想像するよりもずっとまともな形になっている。
この試合でも、コバチッチのバランス感覚は非常に優れていた。
クロース周辺の低い位置の守備が怪しければ下がって、低い位置での組み立てにも顔を出すし、前線へのボール運びもする。最近同じような仕事の幅の広さを見せてくれているイスコより守備面で頑張れる点と、ボール運びが直線的で速いので速攻につながりやすい点がタノプレーヤーとの差になっている。
脇役でありながら、攻守問わず様々な局面に登場してくれるので、欠かせない存在と言える。
アセンシオも、当初はサイドの位置の方がスピードが生きるかと思っていたが、最近はインテリオールの位置で起用されても存在感を出していて良い。
プレスにつぶされずに耐え得る身体能力がついており、彼もまたスピードを生かした持ち上がりができるため、守備側からすると面倒なプレーヤーになりつつある。
サイドのプレッシャーがない位置でスタートするだけではなくなったところが、彼を起用しやすくなったポイントと言えるだろう。
試合は、セビージャが細かくボールを繋ぐのに対し、マドリーが受け止めつつ攻撃の機会を探る展開に。
マドリーの中盤も良いが、セビージャの繋ぐ意識と技術の高さはさすが。無理につっかけてくることが少ないため、良い形でボールを奪うことが出来ず、拮抗した内容となった。
アトレティコ戦でもそうだったように、こうした試合展開ではセットプレーが変化のきっかけになることがしばしばあるもの。
10分、エリアすぐ外でアセンシオが取ったフリーキック。セビージャが壁を作ろうとし始めたくらいのタイミングで、後方から上がってきていたナチョがそのままの流れでボールをシュートしてプレーをリスタート。セルヒオ・リコも準備しておらず、グラウンダーのシュートが難なく決まって先制に成功した。
セビージャは完全に油断していた。ボールがリスタート可能なポイントに静止していたのに、それを誰も気に留めていなかった。プレーが止まってからポイントをずらす意図でちょっとボールを蹴ろうが、ボールを手に持ってリスタートまでの時間を確保しようが、リーガならさほど厳密にカードが出ることはなく、そうしたプレー(プレーという言葉が適切かどうかはさておき)は頻繁に見られるもの。
この場面では、そうしたプレーはなく、ファールの後、ボールを置き去りにしたまま遠ざかってしまった。それを遠くから上がってくる間に見逃さなかったナチョの観察眼が抜け目ない。
この1点で大きく試合が動き出す。互いに攻撃に傾くようになり、守備が手薄な状態で行ったりきたりするように。
セビージャはヨベティッチのシュートの場面が前半の大きなチャンス。枠外だったが、ナバスは良く反応していた。これ以外の場面でも良いところで落ち着いたプレー。一時期の悪い状態は脱したようであった。こうしてシュートが飛んできた方が、ナバスはリズムを取りやすいのかもしれない。
2点目はマドリー。23分、速い攻めからハメスが持ち込んでシュート。セルヒオ・リコが防いだが、こぼれたところにロナウドがおり、難なく押し込んだ。
■失点しても
2点リードしたマドリーだったが、49分に失点。
セビージャにアタッキングサードで上手くパスを回され、最後はヨベティッチ。フリーでシュートさせてしまい、コースを狙った美しい軌道のシュートを決められた。
なかなか無失点では終えられない。先日のグラナダ戦、CL準決勝第1戦のアトレティコ戦と無失点で抑えたものの、その前の無失点となると第29節のアラベス戦、更にもう一つ前は2月18日の第23節エスパニョール戦までさかのぼる。約3か月で僅か4試合しか無失点の試合がないことになる。
皮肉なことに、失点後の対応、特に精神面の落ち着きは経験により増したようにも思う。リードされたのでなければ慌てることなくプレーできており、ばたついて失敗を重ねることが減ってきている。
アトレティコ戦でも最後のところは踏ん張っていたし、そうした経験を重ねて、試合運びは落ち伝できるようになっている印象。
この試合では、ローテーションしていたこともあってか、60分を契機にさっさとハメスとモラタを下げ、カゼミロ、ルーカス・バスケスを投入。しっかり守るメッセージが送られた。
カゼミロが入ったことでクロースがインテリオールの位置に移り、中盤の形が変化。長いパスで攻撃を展開するというよりは、アタッキングサードに出て行ってより近い位置から危険なパスを遅れるようになって、攻撃も作りやすくなった。
更にモドリッチを入れ、中盤を中心としてチームを作り変えた格好。これが奏功する。
78分、左サイドで飛び出したクロースがえぐってマイナスのボール。ロナウドが左足でダイレクトシュートし、ニアの上隅に決まった。
アセンシオからサイドに出すような素振りもありつつ、そのままより危険なコースへと侵入したクロースのランニングが見事。ロナウドも左足ながらさすがのシュート技術だった。
更に84分、今度はナチョの折り返しをクロースが合わせて4点目。ダイレクトでファーに流し込む技ありのフィニッシュで試合をきめた。
クロースがこの位置に出て行けたのは交代で高い位置にポジションを変えたから。
ジダンが珍しく交代でいい変化を見せた。守備を整えるのだ第一義であったにせよ、中盤の役割を変えたことがうまくはまった。
■後2試合、勝ち点4
いろいろな形でゴールを挙げ、4-1と快勝。もっと苦労する相手だし、実際立ち上がりは五分五分だっただけに、ナチョの機転でリードを得たことが大きかった。
ベルナベウの最終戦を良い結果で終え、残りは2試合。セルタ、マラガとアウェイの試合が続く。勝ち点4、1勝1分以上の結果でリーガ優勝となる。
タイトルのプレッシャーもあるだろうが、これまで通りの戦いを期待したい。