代表戦明けのアウェイでのアスレティック戦で引き分けは十分。そう思いつつ、勝ち点3が取れたという悔いも残る試合となった。
■マドリーの先発メンバー
GK:クルトワ
DF:カルバハル、バラン、セルヒオ・ラモス、マルセロ
MF:クロース;セバージョス、モドリッチ
FW:アセンシオ、ベンゼマ、ベイル
46分:セバージョス→カゼミロ、61分:モドリッチ→イスコ、75分:ベイル→ルーカス・バスケス
セバージョスが先発。代表戦後ではあるが、それ以外はローテーションなし。
■アスレティックの先発メンバー
GK:ウナイ・シモン
DF:デ・マルコス、ジェライ、イニゴ・マルティネス、ユーリ
MF:ベニャト、ダニ・ガルシア;スサエタ、ラウール・ガルシア、ムニアイン
FW:イニャキ・ウィリアムス
54分:ムニアイン→カパ、76分:イニャキ・ウィリアムス→サン・ホセ、81分:ベニャト→ミケル・リコ
アウェイでは特に大変な相手となるアスレティック。ここまで1勝1分だが、サン・マメスでは数字はあまり参考にならない。
■プレッシングへの対応
アスレティックは前線からマンツーマンでの守備。
セバージョスが入っていたことでボールを失わない確率は上がっていたが、それでもプレス回避に手間はかかる。低い位置での仕事にエネルギーと人員を割くことになって、アタッキングサードで厚みのある攻撃を続けることができなかった。
中盤へのマークが厳しいので、前を向けずに下がりながらのプレーが多かったのがアスレティックの守備の厳しさを物語る。
アスレティックの人についてくる守備を逆手にとって、マドリーは中盤とセンターバックが入れ替わってボールを運ぶ形を作っていた。
だが、持ち上がった後にセンターバックがどの程度攻撃に関与し続けるのか、そもそもどこまで持ち上がって良いのかといったことが整理されていない印象で、前半はポジションを崩さない程度の位置で中盤にボールを渡していた。
これは、持ち上がりによりプレッシングの第一波をかわした後に攻撃を中盤でやり直すことを意味する。
アスレティックの陣形立て直しにも時間を与えることにもなって、攻撃が停滞することになった。
こうした守備でポゼッションを阻害されるのは今シーズン初めての経験だ。
危ない奪われ方はさほど多くなかったものの、この強度のプレスへの対応がうまくいったとは言い難い前半の出来は課題と捉えるべきだろう。
マドリーの守備も、ここまでの数試合では奪われた後の速いプレッシングが見られていた。
この試合でも同様に追っていたが、ポゼッション時の位置が低くなりがちだったこと、そもそも代表戦明けでコンディションが余り良くなかったと思われることから、前線が孤立して追うことがしばしば。
プレスが機能せず、下がってブロックを作る時間帯が長かった。
そうなると余計にアスレティックのプレス回避に労力を使うことになるという悪循環。
代表戦明けというタイミングもあって、打開が難しい試合運びとなった。
これまでのように押し込んで攻撃を継続できない中、32分にムニアインのゴールで先制を許す。
良い縦パスでスピードアップされ、エリア内に殺到されてのゴール。アスレティックのやりたいようにやられ、追う展開となって更に厳しさを増すことになった。
■バランとカゼミロ、ボールを運ぶ
後半頭からセバージョスに替えてカゼミロ。
下がって守備をせざるを得なかったことから、守備のバランスを取ることを目指しての交代と考えられる。
前半は整理がつかなかったボールを運ぶプレーヤーの役割は、ビハインドになって大きくなった。
ついてこないなら、モドリッチやクロース、サイドバックにボールを渡すことなくアタッキングサードまでそのまま侵入。ゴールに直接つながり得る局面まで関与するようになった。
監視が厳しいモドリッチやクロース、セルヒオ・ラモスではなく、そうした仕事を得意としないバラン、カゼミロが半ば放置されるような形となったので、彼らが積極的にポジションを崩してボールを運ぶように。
守備の改善を図って入ったカゼミロが返って自由を得たというのは面白い。
コバチッチがいればこうした役割でもっと攻撃に寄与することができたかもしれないと思ったが、彼だと前半のセバージョス同様に見られてもいたはず。
ある程度まで放しても良いと思えるプレーヤーだからこそ得られたスペースなのだろう。
■交代は当たったが・・・
前半よりマドリーは高い位置に進出できるようになったので、攻撃は徐々にこれまでのやり方を取り戻した。押し込んでサイドへ展開するボールが増え、両サイドバックがお馴染みの良い位置でフィードを受けられるようになっていった。
これに対しアスレティックはカパを入れてサイドの守備強化を図る。
モドリッチとイスコの交代はコンディションを考慮してのものかと思われる。
クロースよりはタイプの近いこの2人のこうした交代はこれまでより頻繁に行われるのかもしれない。
ただ、モドリッチのプレー自体は悪くなかったのも確か。こうした交代を機械的に行うと要らぬ軋轢を生むことにもなりかねない。我々に見えないところでロペテギとコミュニケーションがあってのことであれば良いのだが。
交代直後にイスコが得点。サイドでスペースを得て、ベイルのクロスに頭で合わせた。このようにエリアに入っていくのならモドリッチよりはイスコ。結果的にはこの交代は当たった。
追いついて、勝ち越しを狙いたいところで、最後の交代がベイルとバスケスの入れ替えだったのは残念。
ロペテギは「準備していた交代をした」と述べていたので、当初の想定通り交代枠を使ったと取れる。コンディションを考えればそれも1つの解だ。
だが、杓子定規な取り扱いに映るのも確か。消極策で試合を終えた雰囲気になってしまうのは、チームを取り巻く環境としても良くない。勝つチャンスがあるところでそれを掴みにいかないかのような印象になってしまうと、今後のチーム管理に支障が出ることにもなる。
特に交代策は目に見えやすい。もちろん明らかに問題が生じているなら対処する必要はあるが、マドリーではうまくカモフラージュしてやった方が良いかもしれない。
皮肉にもアスレティックは前線のスペースで頑張っていたイニャキ・ウィリアムスを下げて、サン・ホセを投入。さすがにバランやカゼミロを放置しすぎて問題が起きていたので、ここに手当てしてきた。
結果論にはなるが、攻撃に比重を置いてマリアーノでフィジカル勝負に出るといったようなやり方でも良かった。
■最後に
アセンシオが抜け出した場面など、決め切れればというシーンがいくつかあって勝ち点3を逃したと言えるが、一方で前半の出来を考えればよく勝ち点1を拾ったとも言える。
アスレティックの守備に対し、後半のようにボールを運ぶ整理がはじめから出来ていれば、試合全体を通じたチャンスの数は増えていただろう。
リトリートして守る相手に対しポゼッションで圧力をかけ続ける形は、これまでの3節である程度見えた。
今節は積極的にポゼッションを阻害しにくる守備への対処という点で、良いレッスンになったのではないだろうか。
この両方への対応が身についてくれば、ロペテギ体制においても幅広いやり方で相手を攻略していけるようになるだろう。
まだまだ発展途上である分、改善の道筋が見えたことを前向きに捉えたい。
ミッドウィークでCLがスタート。ローマをベルナベウに迎える。
週末のリーガもベルナベウ。エスパニョールとの対戦。