レアルマドリードのある生活

レアルマドリードの応援日記。試合中心にお送りします。

マドリー不振の原因と将来を推測する(後編)

前編はこちらから。

前編では、今オフの補強の状況と、モウリーニョの契約延長について振り返った。

今回は、もう一つの事例を取り上げた上で、まとめることにしたい。

■人事

先日、マドリーとスペインを代表する選手の1人であるイエロをスポークスマンにするようモウリーニョが求め、ペレスはこれを却下したとの報道があった。

モウリーニョは、LFPUEFAに影響力があり、不利な日程や判定について批判できるスポークスマンとしてイエロの名前を出したとされる。イエロはマラガで職に就く前に代表での仕事もしており、もちろん偉大な選手だったこともあって、適任だと考えたとされる。

しかしながら、ペレスは前回の会長時代にイエロとデルボスケを切っており、その関係が修復されていないため、この要請を却下したとのことだった。

イエロの登用に関して大きく報じられたのは、これくらいの内容。

日程や判定へ圧力(表向きは単なる不満だが、これはどう考えても圧力だろう)をかけることについて、クラブの援護が足りないとモウリーニョが考えているとの報道はしばしばされているが、このイエロの件はそれが表面化したものとも言える。

考えたいのは、以前モウリーニョGM的役割に就くために、バルダーノをあっさりと切ったのに比べ、クラブの人事にモウリーニョの意見があまり採用されなくなっているのではないか、ということだ。

カスティージャとトップチームとの関係についても、モウリーニョはたびたび不満を表明しているが、かといってカスティージャのやり方にモウリーニョが直接手を出せるような状況にはなっていっていない。それどころか、トリルとの契約は延長されてさえいる。

つまり、クラブはモウリーニョの意向に常に沿う決定をしていない、少なくとも以前よりしなくなったように見える。

■簡単にまとめ

ここまで3つの事例を見てきた。

今オフの補強の顛末、モウリーニョの契約延長、そしてクラブの人事。

ディレクターの立場もある監督が契約を延長しながら、オフの補強はモウリーニョの希望通りとはならず、クラブの人事でもやりたいことができないとしたら、どんな感情を持つだろうか。

クラブのサポートを得られないのは個別の案件についてだけではなく、自身の立場全体についてなのではないかと疑念を持つことは、十分に考えられる。

あのバルセロナからリーガのタイトルを奪ったのに、そして初めて長期に1つのクラブで仕事をしようとしているのに、クラブはやりたいことをやらせてくれない、と。

であるならば、大きな勲章であるCLに集中して、これを勝ち取ったら次の職場、理解ある職場へ移ろうと考えることに、なんら不思議はない。

偶然にも、彼が戻りたいと以前から公言しているかの国のクラブは、暫定監督を繰り返し置き続けており、帰還するとなれば多くのファンが、そしてクラブも彼の味方になるだろう。

また、もう1つのクラブも勝利は重ねているが内容に乏しく、そろそろ代替わりが起こってもおかしくはない。

延長した契約に、これらのクラブに移る場合の違約金を免除するような条文がある可能性もある。

つまり、モウリーニョにしてみれば、サポートのないマドリーはもはや長く留まるべきクラブではなくなり、成績に関わらず今シーズンで去り、新たなスタートをしたいと考える動機が多くあるということ。

ポルトインテルに続くマドリーでのビッグイヤーは、マドリーにとっての10個目のものであり、それを勝ち取った監督として去ることに大きなモチベーションはあるが、グアルディオラバルセロナを倒した実績を残したリーガにはそれほどの情熱がないのかもしれない。

もちろん、前回も書いたように、チームの成績はプレーの結果。勝ち負けの直接的な原因は、プレーに求められるべきだろう。しかし、監督を取り巻く状況と監督自身のモチベーションが、成績に影響を及ぼさないというのも単純すぎる。

今取り上げた3つの事柄だけ見ても、モウリーニョがやる気を失うような要素が多くあるのだ。そうした負の雰囲気がチームに伝播しないと言えるだろうか。

モウリーニョは自身を支えないクラブにうんざりしており、そのことはチームが力強さを得られない原因のひとつではないかと、私は考えている。

■ペレスの視点

これまで書いてきたことは、モウリーニョ側の視点だった。

逆に、マドリー、というよりもペレスの側からはどう見えるかを考えてみたい。

簡単に言えば、モウリーニョ白紙委任はしないという意思。

選手との契約にしても、クラブの人事にしても、モウリーニョに全てを任せては、今後立ち行かなくなるとの危機感があるのではないだろうか。クラブがということもあるが、ペレスの会長としての立場がより大きい。

以前から、モウリーニョに権限を多く与えたペレスは、彼と一蓮托生だと書いてきた。

実際、ペレスはモウリーニョがどういった監督であるか、彼と契約するメリットもデメリットも考慮した上で契約したのだし、彼を支持し続けているのだから、モウリーニョの残す結果がそのままペレスの結果となるだろう。

次の夏に行われる選挙も、対立候補がいるかどうかは今のところ定かではないが、モウリーニョの実績がペレスの実績として伝えられることになるはず。

そこで、ペレスはモウリーニョの毒を多少なりとも中和しておきたいと考えた可能性はある。つまり、モウリーニョのデメリットを、自身の汚点とならないよう処理しておくことだ。

次の監督を巡る記事で、クラブはモウリーニョのメディアへの過剰な攻撃的姿勢を不安視しており、次はそうしたことがない人物を、と書かれていたのも、全てを承認しているわけではないという意思の表れと見れば納得がいく。

モウリーニョと一定の距離をとっておけば、クラブを守ったという実績にさえなるかもしれないのだ。

例えば、イエロの問題にしても、日程や判定の批判をしたのはモウリーニョ個人であり、クラブはそれを黙認はしたが支持はしていない、クラブの大事なOBがそうした目的に使われるのを阻止した、といったように。

それで今シーズンCLを制することが出来たら大成功だ。

モウリーニョとは後腐れなく別れることができ、彼の実績だけを引っ提げて出馬する選挙では、まず間違いなく勝利することが出来るだろう。

■マドリーの将来は

このように、モウリーニョはマドリーに自身の将来がないことを自覚している可能性があり、ペレスもまたモウリーニョ後のクラブ運営について考慮している可能性がある。

ペレスの対立候補が出るにしても、彼らがモウリーニョの継続を訴える可能性は極めて低いため、いずれにせよ来シーズンのマドリーを率いるのはモウリーニョではないと考えている。

その場合の次期監督候補だが、以前報じられたアンチェロッティやレーブは、今後も大いに騒がれることだろう。

アンチェロッティは、モウリーニョほどはっきりしたものはないが、遣り繰りの上手さは証明済みだ。与えられた選手で結果を残せる形を作ることは、ミランで十分に示している。監督主導ではなく、フロントが選手を連れてくる形になるならば、選択肢としては大いにあり得る。

レーブは、ドイツ代表での実績があり、マドリーにドイツの選手が複数いることからも、そちらの路線を強めたい場合に選ばれるだろう。

大きなクラブでの実績はあまりなく、マドリーでのプレッシャーに対抗できるかどうかは争点になりそうだが、ドイツ代表の着実なステップアップを見る限り、長いスパンで任せれば良いチームを作れそうな監督だ。

それ以外に、ラウールやイエロ、デルボスケといった人物を呼び戻そうとする勢力が出てくると思われる。

デルボスケ以外に監督の経験はなく、急進的な考え方と言えるが、こうした考えも常にテーブルの上にあった方が良い。

整理すると、来シーズンはモウリーニョ後をどうするかという、他のクラブが大いに悩んでいる問題を解決するシーズンとなる。

選択肢としては、これまでの路線の継続、多少の成績低下は容認する長期路線、クラブの原点回帰を目指す路線の3つが考えられる。

予想を簡単に書いておくと、今のところ、ペレスは非常にうまく立ち回っている印象で、望むと望まないとに関わらず、今の路線が継続されることになると思っている。その場合の監督候補の筆頭は、クラブにとって扱いが難しくなく、実績がしっかりしているアンチェロッティになるだろう。

■最後に

何度も書いたとおり、推測の多い内容になっているので、こういう考え方もあるか、というくらいにご覧いただければと思う。

いずれにしても、私たちはチームが試合に(出来るだけ良い内容で)勝ち、タイトルを取ってくれることを求めている。クラブももちろんそうだろうし、そうあるべきだ。

方法はいくつもあるだろうが、その目標は見失わないでほしい。1つの目標に向かってまとまれるクラブであって欲しいと思う。