カシージャスの立場は次第に悪くなっている。リーガでベンチが続いているからではなく、政治的な争いの元であることによって。
バルセロナ戦のマドリーの先発メンバーは、試合開始のかなり前にマルカなどによって報道されていたが、セルヒオ・ラモスの中盤での起用を的中させたメディアがあった。
ペペの中盤での起用は前例があるものの、セルヒオ・ラモスはこれまでにない起用法であり、考えられる選択肢の中では大穴の部類。それを早い段階で言い当てたメディアがあったことから、リークがあったのではないかと言われており、その犯人だと言われているのが、カシージャスだ。
事の真相は現時点では分からない。
ただ、はっきりしているのは、実績豊富なベテランとしてベンチに安住するには若すぎるカシージャスを利用した報道がされているということ。メディアにとっては、そうした選手がいること自体格好の”ネタ”であり、ことあるごとに彼の名前を持ち出すのは簡単なことなのだと思われる。
カシージャスについては、モウリーニョ以降、彼の言動を良しとしない人々とカピタンカシージャスを擁護する人々に分かれているが、今回のような報道は、下火になっていた両派の争いを再び煽るものとなった。こうした状況はクラブ、チームにとって望ましいものではない。
問題は、こうしたスキャンダルの種を抱えながらチームを維持していくのが良いのかどうかだ。
リーガを受け持つディエゴ・ロペスとCLとコパを担当するカシージャスという分担で納得させ、今シーズンを乗り切ることはもはやできそうもない。非難する勢力と擁護する勢力が彼を巡って衝突を続けることは簡単に想像でき、シーズンを戦うチームのメンタリティに大きなダメージを与えることになりかねないからだ。
冒頭に書いたように、プレーの質ではなく、彼の存在自体が争いの種だ。マドリディスタ同士が騒ぐだけならばまだ良いが、クラブ内でも派閥があり、彼が政治的に利用される恐れもある。
このまま現状を放置するならば、すっきりと移籍させた方がクラブのためにも本人にも良い。
もし、クラブとしてカピタンを留め、彼がいることのピッチ内外でのメリットを享受しようとするなら、彼を擁護するコメントを発表するべきだ。
今回の事件は、仮にリークが事実だとすれば、対戦相手に重要な情報が伝わるのを承知の上で行ったことであるから、クラブに対する完全な反逆行為と言って良い。監督と揉めたというようなこととはレベルが違う。
否定しないでおけば、残留させてもカピタンとしてのカシージャスの立場は弱いものになってしまう。残留させたいならば、彼を守ろうという姿勢を見せなければ意味がない。
また、カシージャス自身も、マドリーに残ってディエゴ・ロペスとのポジション争いをする覚悟があるのか、出場時間を求めて移籍したいのか、その意思を明確にすべきだ。「控えには満足していないけれど、愛するクラブでポジションを得るためにピッチで競うよ。」や「クラブは愛しているけれど、僕はプレーヤーとして出場機会を求めているんだ。」など、発言の少ない彼でも使える定型句はいくらでもある。
今、沈黙を守って彼が得るものは少ない。カピタンとして選手として発言が求められている。
クラブのために残留するのか、クラブのために出て行くのか。カシージャス自身、そしてクラブが熟慮する時だ。