ベティスに苦しめられつつ、珍しく3点(も)取っての勝利。
今節のポイントは次の通り。
■マドリーの先発メンバー
GK:クルトワ
DF:カルバハル、バラン、セルヒオ・ラモス、メンディ
MF:バルベルデ、カゼミロ、クロース;エーデゴーア
FW:ベンゼマ、ヨビッチ
44分:クロース→モドリッチ、46分:エーデゴーア→イスコ、71分:ヨビッチ→マジョラル
今節は2トップで、ヨビッチが先発。これも一つのテストだろう。
■ベティスの先発メンバー
GK:ロブレス
DF:エメルソン、マンディ、バルトラ、アレックス・モレーノ
MF:ギド・ロドリゲス、ウィリアム・カルバーリョ;ホアキン、フェキル、カナレス
FW:サナブリア
62分:ホアキン→テージョ、68分:サナブリア→モントーヤ、72分:フェキル→ロレン
ここまで2連勝。ペジェグリーニが率いて好調な立ち上がりだ。
■イスコシステムをエーデゴーアで
マドリーはボールを持つと4-3-1-2の形で、守備時は4-4-2。4-3-1-2はイスコシステムと同じで、イスコがエーデゴーアに置き換わった形だ。
この「1」がライン間で受けてくれれば、アタッキングサードで良い形が作りやすくなる。
イスコはそこから離れて、組み立て時のボールに寄り過ぎてしまう。それにより、低い位置でボールを持てるので支配率は高まるものの、得点に繋がりづらい形となっていたのだった。
前線と中盤より後ろが離れてしまうのである。
エーデゴーアはそこまでボールに寄っていくことはなく、メディアプンタらしい位置でプレーできていた。その点で、この形に合っていると言える。
その一方で、ライン間で決定的な仕事をすることはできなかった。
前線をはじめ、周囲との関係性はこれから構築するところだという注釈はつくにせよ、彼個人としてもまだ使い方が定められないな、というのが率直な印象だった。
4-1-2-3のインテリオールや右のエストレーモも見てみて、どの組み合わせがより良いか考えた方が良いだろう。
チーム事情から言えば、インテリオールで目途がつけば一番良い。せっかく試行錯誤するなら、少なくともその形は見ておきたい。
■ベティスのプレス、マドリーはバルベルデが存在感
チームは序盤からベティスのプレスに苦労していた。
クロースが最終ラインに下がっても、ベティスの2列目が積極的に守ってくるので落ち着かない。
自陣でのパスが多く、プレスをかわせた時にスピードアップする展開になったことは、エーデゴーアの存在感にも影響したかもしれない。
マドリーはバルベルデがいたことで、プレス回避後の攻撃の枚数が確保できていた。
先制点の場面のように、ベンゼマがサイドに出た時に中央に入ってくれるのが彼の良さだ。クロースやモドリッチでは、ゴール前に詰める役割は担えない。
エーデゴーアの存在感の薄さに相反する形で、バルベルデが長所を生かし、数少ないチャンスを決めることとなった。
ベティスはボールを持って攻めたい姿勢が明確。
カルバーリョが広いエリアで顔を出すし、フェキルとカナレスがいる2列目はアイデアを示せる。そして右サイドには重鎮たるホアキン。
ショートカウンターを狙いつつも、ボールの回収位置が低いことを苦にせず前進できていたし、サイドも中央も使える柔軟なチームという印象だった。
マドリーより相手ハーフでのパス数が多かった。良く攻めることができていたことが数字上にも表れている。
流れは良くないながらもリードを得ていたマドリーだったが、35、37分と連続して失点し、ビハインドに。
セットプレーの流れからカナレス良いクロスをあげられた1点目は仕方ない。
2点目は上がってきたカルバーリョにエーデゴーアがつききれていなかったのが残念。7人では到底守り切れないのだから、彼が戻って最低でも8人で守る必要がある。個人として、守備強度の改善が必要だろう。
■ヨビッチを擁護してみる
ベティスに下がりながら守備を強いることができてさっそく同点ゴールが決まり、後半がスタート。
68分には裏に抜けたヨビッチがエメルソンに倒され、エメルソンは一発退場となった。
ディフェンスラインの背後を狙う形が実を結んで、優位に立つことができたのだった。
さて、ヨビッチはこの場面で仕事したものの、全体としては存在感が薄かった。
ボールタッチ数は、次の画像の通りで、ベンゼマとの差は歴然としている。
久々に先発してのこの内容をどう捉えるべきだろうか。
前線にいてもプレー関与が少なくては意味がないのだから、もっと違う仕事を増やしていくべきなのだろうか。
それとも、今のやり方を保っていくべきなのだろうか。
前提として考えなければならないのは、ベンゼマのプレーは普通の9番とは全く違うものだという点だ。
ベンゼマは良く下がって受けるし、サイドにも開く。この試合でも、一列下がった位置でボールを受けて、エーデゴーアやイスコのお株を奪うように攻撃を作っていた。
彼がこれまでのキャリアで築いてきたプレースタイルはユニークで、一朝一夕に取り入れられるものではない。
その彼がベテランとなり、世代交代を見据えた時に、同じタイプを探そうというのはどだい無理な相談なのだ。
ベンゼマが担ってきた仕事を中盤に担ってもらい、前線には9番らしいプレーヤーを据える。そうしたオーソドックスな形をまずは検討すべきなのである。
ベンゼマだとエリア内に人がいないと嘆き、ヨビッチがいるとそこにいるだけと感じてしまうのは、フェアな見方とは言えない。
ヨビッチを組み込むことができていないのは、ヨビッチ個人に問題があるのではない。マドリーが特別なプレーヤーであるベンゼマに依存しているために起こっている問題なのであって、9番タイプなら誰でも似たような状況になっていたのではないか。
そう考えると、ヨビッチには「ベンゼマ化」を求めるのではなく、ストライカーとしての仕事に集中すべきだと考えられる。
ここで変節しては、ヨビッチの良さは消えてしまう恐れが強い。フィニッシュに関与できるプレーを我慢して続け、チームが本来のタイプの9番として彼を組み込んでいくべきなのだ。
■終盤は優位を生かす
終盤は、一人多くなったマドリーがベティスを押し込むことに成功。
ベティスはサナブリア、フェキルと2列目を代えて耐え忍んでいたが、マドリーに脅威を与えられる守備がなくなったため、マドリーとしてはそれまでとは全く違う意識で攻めることができていた。
決勝点のペナルティは幸運なものだった。
とはいえ、ブロックの外でボールを動かして無駄にすることなく、エリア内でプレーできていたために得たチャンスだ。
これができるとできないとの差は大きい。
良くない時は、いたずらにボールを持つばかりでチャンスを作れないもの。下手をすればカウンターの打ち合いになってとどめを刺されることもある。
最終的に必要な結果を得るためのプレーを続けることができたからこそのチャンス。
苦しい試合だったが、一人多い優位を最後は生かしたと言えよう。
ペナルティはセルヒオ・ラモスが落ち着いて決め、3-2で競り勝った。
■最後に
前節とは違う形で臨んで、難しい展開を乗り越えての勝利。チームとしては勢いがつく試合となった。
これまで述べてきたように、個々のプレーヤーやシステムについては課題があるのは確かだ。
シーズン後半にこれでは心配になるが、まだ序盤。これも一つのテストだということを忘れてはならない。テストしながら結果を残したのだから十分と評価したい。
次節はミッドウィークにバジャドリー戦。
間隔が短いため、ジダンはまた形とメンバーを変えてくると考えられる。