ヘタフェの激しい守備でリズムを作れない、予想通りの試合展開。セットプレーからのゴールで勝ち点3をもぎ取った。
■マドリーの先発メンバー
GK:クルトワ
DF:カルバハル、バラン、ミリタン、メンディ
MF:カゼミロ;モドリッチ、クロース
FW:ベイル、ベンゼマ、イスコ
71分:クロース→バルベルデ、イスコ→ビニシウス、81分:ベンゼマ→ヨビッチ
バルベルデはベンチスタート。イスコは前線ながら中央に入ってくるので、事実上イスコシステム。
■ヘタフェの先発メンバー
GK:ダビド・ソリア
DF:ダミアン、ジェネ、カブレラ、ニョム
MF:アランバーリ、マクシモビッチ;ファジル、ククレジャ
FW:マタ、アンヘル
60分:ファジル→ホルヘ・モリーナ、80分:マタ→ポルティージョ、ニョム→アマト
ELで決勝ラウンド進出を決めたヘタフェ。厳しい守備で相手の思うようにさせず、自分たちの展開に引きずり込めるチーム。
■ヘタフェのペース
ヘタフェは場所に関わらず同じ守備強度。前線から追い、中盤もボールホルダーに時間を与えない。
奪えれば最高だが、だめでもファールで継続した攻撃リズムを作らせなければ良いと、割り切ったプレーを徹底。
特に、縦パスに対して後ろ向きで受けるプレーには厳しい。危険なボールロストこそないものの、縦に入っても都度ファールで流れを切られ、良い形になりそうな手前で寸断されていた。
こうした前の守備を可能にするだけの高いラインの裏を狙えるベイルの起用は妥当。一方で、プレスをまともに受ける中盤にイスコを置く形の採用は間違いだった。
イスコが相手の間を取ってボールを受けては捌くプレーを続けて、ヘタフェのプレスをはがして一気に前進するのが理想だが、まずヘタフェの寄せの速さが上回っていた。それに対して我慢できず、イスコがプレーエリアを下げていたことで、守備を打ち破るためのカギとして機能することができなかった。
縦パスが入ったところを潰され、その手前での組み立てでも優位に立てないので、イスコシステムの悪いところがもろに出る。
一発を狙えるベイルにも良いボールが供給されないから、全体として押し下げられ、持たされる試合展開となった。
ヘタフェの攻撃はシンプルかつ直接的。サイドに出たら手数をかけずにクロスを入れてきていたし、ロングスローもしてきた。
特筆すべきはシュート意識。枠が見えたらシュートしてくるのでアクシデントは起こりうるし、怖い。チームの意思統一がなされていて、スタジアムもこれが良さだとわかっているので、ミドルレンジのシュートが枠を外してもがっかりした雰囲気が出ない。
シュートまで行けているぞ、と前向きに捉えて守備をやり直してくる、強いメンタリティが見受けられた。
クルトワの良いセーブがなければ、もっと危ないシーンが増えていたかもしれない。
全体としてはヘタフェが守備で主導権を握っていた印象。マドリーはどうゴールに迫るか、かなり手前で彼らに悩まされることになった。
■セットプレーでリード
ヘタフェの守備に問題があったのは、ディフェンシブサードでもやり方が変わらなかった点。
我慢して応対するというより、まず体で当たっていこうとするので、マドリーにとって良い位置でのフリーキックが増える。
落ち着いて前を向ける場面が少なく、攻撃陣はイライラしていてもおかしくなかったところを、冷静にプレーしてファールをもらい、セットプレーでチャンスを作ることができていたのは好印象。精神的に不安定になって得をするのはヘタフェだし、カードをもらうことにも繋がるから、余計なことをせず、よく耐えたと言えよう。
そのフリーキックから、33分と53分にバランがヘディングを決めた。バランは良いところに侵入し続け、セルヒオ・ラモス不在を感じさせず。
マドリーは辛抱していた対価を得た。
先制点の場面では、こぼれ球を拾って右足でクロスを入れたメンディのアシストが光った。プレッシャーの少ない場面だったとはいえ、逆足で精度のあるボールを蹴れるのは大きい。
こういうプレーができると、マルセロの控えとしては十分。守備面では以前から問題が少なく信頼できる状態であとは攻撃というところで、目に見える結果を出してくれた。
追う展開になると、ヘタフェはクロスが成功するか、ミドルシュートが入るかを期待するしかなくなって辛くなった。
先制まではヘタフェにメリットが大きかった守備も、マドリーがリードを得ればファールを受けて流れが切れることは問題ではなくなる。イライラして相手の土俵に乗ってしまわないよう、注意して時間を進めればいい展開に。
■ビニシウスとヨビッチは残念、バルベルデは”またも”価値を証明
難しくなったヘタフェはモリーナ、ポルティージョと前線を入れ替え、変化を狙う。
マドリーはバルベルデで中盤を強固に。疲れてきた時間帯に走り回れる彼を入れて、中盤でヘタフェよりも優位に立った。
機能しなかったイスコを下げて裏狙いでビニシウス投入も理想的。
残り10分ほどで入ったヨビッチもあわせ、なかなか結果が出せない2人が揃ったのだが、それぞれ思った通りのチャンスがあっただけに、決められなかったのはもったいない。
ただの良いプレーではなく、目に見える結果を出すことによって取り巻く環境を大きく変えられるチャンスを得られるもの。その意味で、彼らにとっては3点目であろうが5点目であろうが変わりはない。
チームとしてはこの点差と展開で十分だったが、個々人としては残念だった。
その一方で、アディショナルタイムのモドリッチの3点目の場面では、バルベルデが縦に走り切ってアシスト。良さを出し、かつゴールに直結するプレーだ。こういうプレーに関与することで、彼は自身の価値をまたも証明した。
相手をかわしてボールを進めたメンディ、縦パスを受けてうまく裏へ蹴りだしたベイルも見事で、セットプレー以外では苦しみに耐えてきた攻撃が最後に結実したといったようなプレー。
最後の最後に素晴らしい攻撃を完結させ、3-0で勝利した。
■最後に
ヘタフェのやり方は奏功していたが、マドリーはしぶとくセットプレーを得点に結びつけた。
前述の通り、ファールをうけてうまくいかないことに精神的に耐えた点が印象的。うまくいっていない時期だと、相手やレフェリーともめてカードを受けたり、自分たちも荒くなって失点したりしがちとなるもの。
こうした試合で我慢して機会を伺い続けられたことが、現在のチーム状態の良さを物語っているように思う。
アザールやマルセロといった負傷者が帰ってくるまで、今の状態を維持できれば。
ミッドウィークはスーペルコパ。今シーズンから4クラブの参加となり、サウジアラビアでの開催となっていて、負担が大きい。
バレンシア、バルセロナ、アトレティコが参加しており、相手が相手なのでそもそも楽ではないし、省エネで負けると支持を失うことにもなるから、年明け早々力を注がねばならない。
仮に優勝しても総力戦でエネルギーを使い果たしては、元も子もない。リーガ、CLどちらを考える上でも、この大会をうまく乗り切ることが重要になるのではないか。
ミッドウィークはバレンシアと対戦。勝てば週末に決勝戦となる。
そのため、リーガは18日が次節。セビージャをベルナベウに迎える。