マドリーが最も勝てない場所、ドイツでの第1戦だったが、そんなジンクスなどなかったかのような結果に。
■マドリーの先発メンバー
GK:カシージャス
DF:カルバハル、ペペ、セルヒオ・ラモス、マルセロ
67分:ディマリア→イスコ、73分:シャビ・アロンソ→イジャラメンディ、80分:ベイル→ヘセ
右サイドバックはカルバハルに。昨シーズンはレバークーゼンでプレーしており、ドイツに慣れているからということもあったかもしれない。
■シャルケの先発メンバー
GK:フェールマン
MF:ボアテング、ノイシュテッター;ファルファン、マイヤー、ドラクスラー
FW:フンテラール
59分:ボアテング→ゴレツカ、72分:ファルファン→オバシ、76:コラシナツ→フクス
リーグでは4位につけるシャルケ。年明け以降の調子は良いとのことだったが・・・
■早い時間に先制
序盤からマドリーがボールを持つ展開。
シャルケはシャビ・アロンソやモドリッチが中盤でボールを持つ時はしっかりついていたが、最終ラインまで寄せてくることはしなかった。マドリーはそれを生かし、ゆっくりと様子を見るパス回し。
無理に繋ぐことはせず長いボールも使いながら、シャルケの守備の出方を伺っていた。
マドリーは、まだまだこの「様子見の時間帯だった13分に先制することに成功。
右サイドから中央に入ってきたベイルとロナウドのワンツーがディフェンスに当たり、こぼれ球がベンゼマの目の前に。ベンゼマは出てくるキーパーを見て落ち着いて決めるだけ。
シャルケの守備も緩かったが、ベイル、ロナウド、ベンゼマの3人が近い距離でプレーできていたことはマドリーにとって非常に良かった。
得点の場面に限らず、ベイルは以前より前線の他の2人と近い、中央よりでプレーするようになっており、良い形で絡めていた。ロナウドの出場停止期間中に、ボールがより多く来る環境になっていたことが、彼のプレーに良い変化をもたらしたように見える。
まだサイドに張ることも多いが、今後も少しずつボールに触れる回数を増やし、前線で良い関係を見せてもらいたい。
21分には追加点。
低い位置でのコントロールが怪しくなったフェリペ・サンターナにベンゼマが詰めてボールを奪い、寄ってきたベイルへ。ベイルは中央に入っていって3人のディフェンダーの間を抜いてシュートを決めた。
ベイルの技術の高さはもちろんだが、高い位置で最終ラインのプレーヤーのボールの置き所のミスを逃さず奪いきったベンゼマの守備意識がこの得点のポイント。
シャルケとしてみれば、完全に崩された失点ではなかったものの、立て続けにやられたダメージは大きかっただろう。ただ、それでなくとも、マドリーの攻撃の鍵を握るモドリッチとディマリアを掴まえきれていないことが徐々に見えてきていたのは確か。
ディマリアやモドリッチがサイドに顔を出して、サイドで数的優位を作ってディフェンスをずらしていくやり方がこの試合はばっちりはまったし、前線にボールを持ち上がるタイミングも良かった。
中央にいるディマリアとモドリッチには、シャルケの守備陣はしっかりついていけていたのだが、大きく開いた時にどうするかというところが曖昧で、サイドからスタートして前線にボールを何度も供給できていた。
シャルケ守備陣は、幅広いエリアでボールを触り攻撃を作る彼ら2人に対応できていなかった。
マドリーはアウェイで早々に2点を挙げたこともあり、悠々としたボールポゼッション。シャルケは先制点以降少しの時間、最終ラインまで追うような素振りがあったが、もとの守備に戻っていき、失点後に巻き返すために守りを修正するというような印象はあまりなかった。
■シャルケの狙い
シャルケの狙いは、マドリー右サイドに寄せておいてから左に振り、ファルファンとマルセロの1対1を作り、突破や良いクロスを狙うこと。
前半から何度もスペースのある左サイドへ展開しようという形を作っていたが、サイドチェンジに時間がかかったことで、マドリーのディフェンスのスライドが間に合うことが多く、あまりうまくマルセロを狙えなかった。
シャルケにとってのもう1つ残念だったのは、内田が負傷で、本来センターバックのヘベデスが右に入らざるを得なかったこと。本職でないヘベデスは、サイドで効果的にファルファンをサポートできなかった。
もし本職の右サイドバックがタイミングよく追い越しの動きを見せていたら、マドリーの守備陣が間に合ってもずれを作れていたかもしれない。
シャルケの攻撃のもう1つの形はカウンター。
これはマドリー相手ならば、どのクラブも狙う常套手段。序盤は、カウンターでなくても少し遠めの距離から良い縦パスが入っており、スピードを上げた攻撃に苦しめられるかもしれないと思ったのだが、その次のパスがずれることが多く、マドリーは助けられた。
カウンターの場面でも、持ち上がって出すパスがちょっとずれて時間がかかる、ということが何度かあり、攻撃のスピードを維持できずに戻ってきたマドリーの守備陣がしっかり対応できるだけの時間があった。
マドリーの中盤の守備への貢献も見逃すべきではないだろう。
ディマリアは相変わらず良く走っていたし、シャビ・アロンソとモドリッチはシャルケのロングボールを多くマイボールにできていた。
相手の曖昧なボールをチャンスにさせず、彼らがボール回収をすることで長い時間のポゼッションと繰り返しの攻撃を実現できている。
これはこの試合に限ったことではなく、少なくとも2014年に入ってからはずっと安定してできていること。これが続けられる限りは、大崩はしないだろう。
シャルケの攻撃はうまくいかず、楽な展開になったマドリーが何度かチャンスを作って前半は終了。
■後半のもろもろ
シャルケが後半にやり直すとすれば、まずは守備だったはず。
出所は抑えられないにしても、前線の3人に好きなようにプレーされるのは非常にまずい。立ち上がりにロナウドへのファールがあったが、あのようにファールになっても厳しく当たって自由にさせず、フラストレーションを溜めさせるようなことはできただろう。
だが、守備の改善がないままにふわっと高い位置に出て行くだけでは、まだまだモウリーニョの遺産が残るマドリーにとって格好の場面を与えるだけ。
シャルケとしては出てこざるを得ない状況ではあったが、そのやり方がちょっと雑だった印象。
52分にロナウドがようやく決めて3-0。ベンゼマがロナウドとクロスして走りディフェンダーをひきつけ、ロナウドはマティプとの1対1を制して左足で素晴らしいシュート。
この後、攻撃の核であるボアテングが負傷により交代し、シャルケの攻撃はさらにおとなしくなった。
72分にファルファンを下げた時点で既に5-0となっており、ここで事実上白旗。
マドリーはベンゼマが57分、ベイルが69分、ロナウドも89分にゴールを挙げ、前線の3人が2点ずつ。アウェイで6点を挙げて、勝ち上がりをほぼ決定づけた。
ベンゼマのゴールの場面ではロナウドがポストに入り、ワンツーを決めたこと、ベイルのゴールの場面ではセルヒオ・ラモスが前に出てボールを奪えたこと、ロナウドのゴールの場面では後ろを向いてボールを受けたシャルケのプレーヤーに対し、ディマリアが高い位置でプレスをかけてボールを奪いショートカウンターに繋げたことが良かった。
どのゴールも、上で書いたような前線の近い距離感、良い守備から生まれたものだ。
ディマリア、シャビ・アロンソ、ベイルを下げ、イスコ、イジャラメンディ、ヘセの若手を投入する余裕を持てる試合運びは最高。期待されるスペイン人プレーヤーにこの場でチャンスを与えるアンチェロッティの交代も嬉しい。
最後にフンテラールがボレーでゴラッソを決め、カシージャスの無失点記録が952分で途絶えたのは残念だったが、第2戦をほとんど流して良い点差で終えられ、理想的な試合だったと言える。
■最後に少し
マドリーはこの結果で、第2戦の直後の週末に行われるリーガのバルセロナ戦に集中することが出来ることになった。今週末のアトレティコ戦に向けても、精神的な意味でも大きな結果。CLとリーガが絡む日程が大分楽になった。
今後のCLに向けては、出場停止で主力を欠くことになった時にどう対応するかが鍵。
特に中盤の3人はそれぞれ代えが利かない。モドリッチはイスコにという可能性はあるが、イジャラメンディは特に守備面でもうちょっと経験が必要な印象。
一番の課題はディマリアはそもそも同じようなことが出来る控えがいないこと。
彼のサイドに出て行く形や、高い位置で攻撃に参加するプレーは、危なっかしい面はあるが今のマドリーの特徴的な形だし、それと併せて守備でも走り回っており、攻守どちらかのプレーであればやれるプレーヤーはいるが、その両方をこなせるプレーヤーはいない。
この試合でも1枚イエローを貰ったが、カードを貰いやすいポジションであるし、貰いやすいキャラクターでもあるので、先を見据えて注意してプレーしてほしい。
先ほども触れたように、今週末のリーガはアウェイでのアトレティコ戦。リーガでは負け、コパでは完勝しているアトレティコと今シーズン4度目の対戦となる。
アトレティコはこの厳しい時期に少しずつコンディションが落ちてきているように見える。マドリーは状態の良さを維持してビセンテ・カルデロンに乗り込みたい。