コルネジャでのエスパニョール戦。代表戦明けのアウェイというだけで、相手に関係なく厳しい。
■マドリーの先発メンバー
GK:ケイラー・ナバス
DF:カルバハル、ペペ、セルヒオ・ラモス、マルセロ
FW:ベンゼマ
56分:モドリッチ→コバチッチ、63分:ベンゼマ→ルーカス・バスケス、74分:セルヒオ・ラモス→バラン
ダニーロとハメスの代役はカルバハルとイスコ。その他にクロースとバランを休ませ、カゼミロとペペを先発起用した。
■エスパニョールの先発メンバー
GK:パウ
DF:アルビージャ、アルバロ、シアニ、ルベン・ドゥアルテ
MF:セビージャ、ビクトル・サンチェス、ハビ・ロペス、ビクトル・アルバレス
FW:ジェラール、カイセド
46分:ハビ・ロペス→カニャス、シアニ→モンタニェス、65分:ビクトル・サンチェス→ジョルダン
ここまで1勝1敗のエスパニョール。アセンシオは出られない。
■ベニテスらしい決断
最初に書いたように、代表戦明けの試合はいつも苦しい。しかもアウェイとなればなおのことである。こうした代表戦明けのタイミングの試合はシーズンに何度かあり、ここで勝ち点を落としてしまうかどうかでリーガのタイトルが左右されることになり得る。
例えばモウリーニョ期には、こうした試合で如実に運動量を欠き、攻めあぐねて多くの勝ち点を落とした。そう考えると、とにかく勝ち点3を取ることに集中したい試合。
そこでベニテスはバランとクロースをベンチに置き、今シーズンここまでは控えに回っているぺぺと、ポルトから復帰してきたカゼミロを先発起用した。特にクロースがベンチスタートとなることは、昨シーズンであれば考えられなかったこと。ローテーションをしていくというベニテスらしい決断と言える。
■エスパニョールがリズムを掴むも・・・
先発したカゼミロとモドリッチの関係は、試合の最初はカゼミロが後ろでモドリッチが前。守備ができるカゼミロに後方を任せ、モドリッチを高い位置に進出できるようにしたいという形。それに対し、エスパニョールは高い位置から人数をかけて積極的なプレスで対抗した。
高い位置のプレスに対し、モドリッチやディマリアをサイドバックの後方まで下げてポゼッションを安定させていたアンチェロッティ期も既に過去。今のマドリーは形を維持してオーソドックスにプレスを回避しようとする。
ベストメンバーであればクロースが大きな展開で相手をいなすことができるし、いざとなれば最終ラインのセルヒオ・ラモスも精度の高いサイドチェンジが可能なので、それもありだろうが、この試合は大きな展開が得意なクロースを欠いたことから、エスパニョールのプレスが良いところまで寄せられることが多かった。
エスパニョールはカイセドがターゲットになれるので、マイボールにしたら、彼に当てることを第一に考え、その落としをサイドに展開しクロスという形。プレスに引っかかればもちろんショートカウンターも狙う。
そのカイセドは序盤から躍動。ファーストシュートはナバスが触れたが、スルーパスに抜け出されて危なかった。彼が牽引するような形で、エスパニョールが勢いを得る。
エスパニョールのプレスと攻撃に対し、マドリーは何となく受身で試合に入ってしまった。コンディション的に辛いのも明らかにマドリーなので、このままずるずる行けば後々苦しくなりそうという予感がよぎる序盤となった。
6分、モドリッチのロングボールにロナウドが反応して最終ラインの裏に抜け出し、GKを落ち着いて見てファーへ流し込んだ。
これ以前にも何度か裏狙いのボールが出ており、アンチェロッティにはなかったベニテスらしい縦に速い狙いが見えていたが、早い時間でそれが成功した。
15分にはベイルがエリア内で倒されペナルティ。ロナウドが決めて、早々に2-0とし、19分にはそのベイルのクロスにロナウドが合わせ、20分でハットトリックを達成してしまった。
全体の流れとしては、ホームのエスパニョールが良い雰囲気を持っていたが、ほんのいくつかのプレーで大きな差がつくことに。マドリーとしては願ってもない展開となった。
■大量リード後
リードを得て以降は、モドリッチが低い位置に入ることが多くなった。彼もクロースのような展開をするわけではないが、技術と経験に裏打ちされたプレーでポゼッションを安定させることができる。3点差の余裕もあってか、モドリッチが下がるようになってからは、エスパニョールのプレスは継続していたにも関わらず、後方のポゼッションはかなり楽に。
そこからのボールはベンゼマがさすがのポストプレーで繋ぐ。マドリーの攻撃に形ができてきて、余裕のあるボール運びができるようになった。
カゼミロは守備の場面で戦えるところを示してくれ、他のプレーヤーにはないものをもたらしてくれそうではある。しかしながら、この試合では細かいパスのズレが目立った。相手に奪われるほどではなくとも、スペースなのか足元なのか、右か左かというような受け手とのズレがあると、少しずつ時間がかかって守備に準備を許すことになる。
彼の技術だけでなく、周囲との関係性の問題でもあるので、今後プレー時間が増えてくれば徐々に改善されるだろうと思うが、こうした僅かなズレが致命傷となることもある。守備の良さを生かすためにも、攻撃面での改善が必要と感じる内容だった。
ローテーションによりこうした微妙なずれは抱えつつも、27分にロナウドのクロスにベンゼマが合わせ追加点。4-0として前半のうちにほぼ勝利を手にした。
マドリーは一応は攻撃時4-2-3-1、守備時はロナウドがトップに残って4-4-2の形が基本だが、この試合で右サイドのイスコが中央に入ってくることが多く、BBCの最前線となって4-1-2-3のような形になることが多かった。
そこから守備時には4-4-2に移行するはずが、大量リードの慢心もあり、スムーズにはいかなくなっていった。しかも、ベイルやイスコがプレスで突出することも多く、1つずつずれていって危なくなりかけることも。エスパニョールにマドリー左サイドを何度か突破されており、幸運にも最後が合わずに済んだというだけ。
とはいえ、守備の緩慢さは、前半のうちにこれほどの差がついてしまえば仕方ない。それだけの効率でゴールを挙げたことを評価すべきだろう。
マドリーは56分にモドリッチを下げコバチッチ、63分にはベンゼマをルーカス・バスケスに替えて休ませる。ルーカス・バスケスにとってはエスパニョールは古巣であり、拍手で迎えられた。
若いプレーヤーにはチャンスのある試合で、彼らが入ったことで多少は試合の熱が戻った。コバチッチは中盤にスペースがある展開でやりやすそう。ファールで止めるしかない良い持ち上がりを何度か見せていた。ルーカス・バスケスも右サイドで良いドリブルを何度も。
まず一人はかわせるという信頼感があった。抜いた後も慌てずにプレー選択できている印象で、今後もっと見たいと思える内容だった。
そんな中、ロナウドは61分、80分と更に2点。計5得点を挙げ、ここまでの2試合で苦労したのが嘘のよう。不調との声を一気に吹き飛ばした。
■ナバスの安定感
ただ、後半も基本的には緩い展開は変わらず。攻め合って互いに最後だけ何とかするという、中盤のない大味なやり合いが繰り返された。
最終ラインのプレーも緩慢になり、マドリーも危ない場面を迎えることに。
雑なプレーから失点してしまうと、結果は大勝であっても少し曇りが残る。こうした試合を無失点で終え、良い印象だけを得られるかどうかは、今後の試合に向けて重要なところ。
その点で、ケイラー・ナバスのプレーが意味するものは大きい。
最初のカイセドのシュートに対してもしっかり触っており、その後も俊敏なプレーで安定感があった。ジェラールの至近距離ヘディングを止めたセービングが彼のこの試合のハイライト。
セルヒオ・ラモスのミスを帳消しにして、無失点の勝利に大いに貢献した。
彼が素晴らしいのは、移籍騒動に巻き込まれたにも関わらず、精神的に安定しているように見えること。不安定なところを露呈しても仕方ないような時期を過ごしたが、何事もなくプレーし、最後の砦として守備を支えている。
マドリディスタとしては彼の姿勢に感謝するしかない。「カシージャス後」でもあり、難しいポジションであるのは間違いないが、今後も高いレベルで安定したプレーを見せて欲しい。
■CLがスタート
マドリーは6点差で圧勝。難しくなる可能性もあった試合を結果としては楽々乗り切った。
ミッドウィークからはCLも始まる。日程が詰まってくる中で、こうして余裕をもって終えられたことは必ずプラスに働くだろう。