ミッドウィークのリーガ。数字上優勝争いに参加している状況だが、平日ではさすがに空席もちらほら。
■マドリーの先発メンバー
GK:ケイラー・ナバス
MF:カゼミロ;モドリッチ、クロース
73分:クロース→イスコ、79分:モドリッチ→ハメス・ロドリゲス、84分:ルーカス・バスケス→ヘセ
■ビジャレアルの先発メンバー
GK:アセンホ
DF:ガスパール、ボネーラ、バイイー、ルカビナ
MF:トリゲロス、ブルーノ;ドス・サントス、デニス・スアレス
FW:バカンブ、アドリアン
62分:ドス・サントス→サムエル、64分:アドリアン→レオ・バチストン、73分:トリゲロス→ロドリゴ
ソルダードは不在。上位3クラブとは差があるが4位につけ、CLを視野に入れている。
■サイドへの展開の変化
前回対戦はベニテス体制末期のこと。マドリーはボールを持って攻めるものの、良い形を作れず、一方で守備が緩く序盤にソルダードに先制を許すと、その後攻めあぐねて敗れている。
今回は守備の面で大きく改善。奪われた後の前線のプレスは速く、中盤もカゼミロ、クロース、モドリッチのバランスが取れていて、クリア気味にボールを蹴らせ、それを回収することができていた。
ビジャレアルはもっと高い位置でやりたかったはず。ドス・サントスとデニス・スアレスの両サイドにボールを入れてサイドバックと勝負させたいようではあった。もちろんベルナベウでの試合なので、前回対戦同様にいけると思うほど楽観的ではなかっただろうが、それでももう少し中盤でやりあいたかったのではないだろうか。
しかし、マドリーの守備によって、恐らくプランよりもずっと低い位置で守ることを余儀なくされ、9人が自陣エリア前に退かざるを得なくなった。
守備で相手を逼塞させることには成功したマドリー。
そこまでは良いが、ここから人数をかけて守るエリア付近をどう攻略するか、というお馴染みの課題が出てくることになる。
定石は両サイドの活用となる。
クロースが底の頃は、ある程度攻めさせた上で彼やセルヒオ・ラモスからサイドへロングボールを供給して、スペースがある状態のサイドで勝負させていた。
だが、昨今はカゼミロの台頭により、クロースは本来のポジションに近いインテリオールでの起用が増えている。そのため、センターバックの間に下りることも減り、彼が低い位置からサイドへ展開して速く仕掛けることは難しくなっている。また、この試合ではビジャレアルに人数をかけて攻撃に転じることをうまく封じていたので、返って速い展開はできなくなっていた。
カゼミロが回収したボールを預かったクロースが両サイドへボールを振る形は何度も見られ、ルーカス・バスケス、ダニーロ、マルセロがサイドでボールをもらっていたが、ビジャレアルは作ったブロックを崩さずに待ちかまえているので、そこに向かって仕掛けていくことに。
右のルーカス・バスケスとダニーロのコンビは息が合っておらず、左はロナウドが中央に絞ることが多くマルセロ単独となることが多いので、しっかり待っているビジャレアルのサイドを崩すことは難しかった。少し仕掛けてみては下げて、クロースを経由して逆サイドへ、逆サイドもビジャレアルがスライドしてきっちり対応しておりまた戻す、という行ったりきたりが続くばかりで、サイドから効果的な形を作ることはできていなかった。
ただ、逆に言えば、人数をかけるか、より広いスペースがあれば状況は変わってくる。ロナウドが左サイドで良いポジションを取っていると、彼とマルセロ、モドリッチの3人で仕掛けていくことができるので、ロナウドのところに何度か良い場面ができていた。
41分の先制の場面は、奪った後の左サイドへの展開でビジャレアルに戻りながらの守備を強いた。ロナウドが仕掛けてあげたクロスはアセンホに弾かれるが、そのボールがベンゼマの元へ。ダイレクトのヘディングで押し込んだ。
スペースがあり、ビジャレアルに後ろ向きのディフェンスをさせたこと、ロナウドがサイドで勝負できたことで生まれたゴールだった。
守備は良く、ビジャレアルにほとんどチャンスを作らせない一方、そのために待ち構えられることとなったブロックに対しなかなか攻め手が見出せない展開。そんな中で少ない決定機をものにし、リードを得て前半を終えた。
■最初は落ち着き、その後ビジャレアルが変化
後半も前半に引き続き、マドリーがボールを持ちながら、シュートチャンス自体は多くない展開。立ち上がりは省エネを意識した様子も見受けられ、ビジャレアルが出てこられないのを見てテンポを落としたようでもあった。
1点差なので、ペースを落としておいて何かあったら、とも思うが、このあたりのペース配分は余裕がある。前線が攻め急ぐとか、後方がボールキープできず蹴りだしてポゼッションを明け渡してしまうといったちぐはぐな状態にならず、ペースを落とすなら落とすとチームとして意思が統一されていれば問題ないということ。
ヴォルフスブルク戦でもそうで、見ている側はやきもきする状況でも、チームが統一された判断でプレーできているうちは、コントロールできるということなのだろう。
ビジャレアルはサイドからの速攻を狙う。ドス・サントスを諦め、サムエルを入れて流れを変えることを狙い、続けてレオ・バチスタンも投入し、攻撃の形を作ろうと変化をつけた。
立て続けの交代で60分過ぎからシフトチェンジを試みるビジャレアル。マドリーの守備は前半ほどの強度は保てなくなっていくが、その分速攻のチャンスは増える。前半とは違い、得意な形で攻められるようになっていった。
69分に追加点。
右サイドでルーカス・バスケスがベンゼマとワンツー。ディフェンダーも多かったが、そのままするすると抜け出してエリア内へ。出てきたキーパーを良く見てニアを抜く精度の高いシュートを決めた。
ルーカス・バスケスは、ダニーロとの絡みが難しく、彼らしい仕掛けは少なかった。そんな中でも守備で献身的に中盤に戻っていて、チームへの貢献はしていて、好感が持てるプレー。良い突破とシュートで大きな追加点を挙げた。
2点リードの後、クロースとモドリッチを下げ、イスコ、ハメスを投入。先発2人を下げたいというところと、イスコとハメスの出場時間を確保したいという交代。控えに甘んじているものの、前節は十分なレベルのプレーをしていた2人。こういう形でも時間が与えられることが大事。ジダンはうまく時間を与えている。
76分には速攻からダニーロのマイナスのクロスをモドリッチが合わせてダメ押し。ダニーロが良くマイナスに出したし、モドリッチも前線任せにせずしっかり走っていた。
ダニーロはこういうボールが蹴れるプレーヤー。いいところは見せた。
彼の問題、批判される原因は、こういうところよりもより低い位置で当然通して欲しいパスを引っ掛けたり、展開して欲しいところでタッチミスしたりするところ。「当たり前」のレベルが高いマドリーでは、こういうところでリズムを崩すとブーイングを受けることになる。現実問題としても、そこは問題なくやって欲しいと思っているところでミスが出ると攻撃のリズムが作れないし、危ない場面を作られることにも繋がる。
精神的な影響も大きいと思うので、落ち着いてやれればもう少し違うプレーができるのではないか。大事なところはカルバハルがいるので、もう少し時間を与えつつ、期待しておきたい。
残り僅かのところでロナウドが負傷退場するアクシデントがあり、不安を残したが、試合そのものは3-0で勝利。その後の報道を見る限りロナウドも大きな負傷ではなく、CLには間に合うとのことで一安心。
■最後に
クロースのポジションが変わったことで、サイドへの展開の仕方が変わりつつある。ボールを回収する役目のカゼミロがシンプルに周囲にボールを預け、そこから両サイドへと振る形になっていて、クロースの位置もより高めになっているので、相手が出てくる前にポゼッションを回復し、サイドへと展開することになっている。
相手を逼塞させることができる分、この試合のようにブロックがきちんと対応するとサイド攻撃も頓挫することになるデメリットもある。
どこでスピードアップしてしかけるのか、今までとは違う判断が必要になってきているように思われる。
週末はラージョとのアウェイの試合。そしてミッドウィークはCL準決勝となる。
ロナウドとベイルのコンディションが気になる。まずはCLを優先して調整していってもらいたい。昨シーズンの失敗を乗り越えてもう1つ上へ進みたい。