いまだ勝利したことのないジグナル・イドゥナ・パルクでの第2節。ドルトムントもCLではお馴染みの相手になりつつある。
■マドリーの先発メンバー
GK:ケイラー・ナバス
DF:カルバハル、バラン、セルヒオ・ラモス、ナチョ
MF:カゼミロ;モドリッチ、クロース;イスコ
FW:ロナウド、ベイル
76分:イスコ→アセンシオ、86分:ベイル→ルーカス・バスケス、89分:モドリッチ→セバージョス
イスコは一応トップ下ながら攻撃時は自由。守備時は4-4-2へ変形。
■ドルトムントの先発メンバー
GK:ビュルキ
DF:ピシュチェク、トプラク、ソクラティス、トルジャン
FW:ヤルモレンコ、オーバメヤン、フィリップ
60分:トルジャン→ダフード、シャヒン→バイグル、76分:ゲッツェ→プリシッチ
国内では好調ながら第1節はトッテナムに敗れている状況。
■ドルトムントの出方でマドリーの選択は吉となる
マドリーはロナウドとベイルの2トップ。これまで何度も見てきたが、これで上手くいったという印象はない組み合わせだ。
前線で楔を受けてタメを作れ、ロナウドとベイルの関係の潤滑油となれるベンゼマを欠いての苦肉の策であり、また代表戦明けでローテーションしたタイミングで採用されるような形だったから、当然ではある。
しかも、相手が退いてくるリーガ下位ともなると、この2トップで打開するのは難しくなる。ボールを持たされる形になって、非常に苦労する傾向にあった。
では、ドルトムントの出方はどうかというと、ブンデスリーガでの好調そのままに、ホームで自分たちが主導権を握ろうとしていた。ラインは高く、ボールを持ってマドリーを崩して行こうという姿勢である。
これは、ロナウドとベイルの2トップを採用したマドリーにとって都合が良かった。
高いラインの裏やサイドのスペースを狙って2トップを好きなように走らせることが出来るので、彼らの速さが生きるし、中盤の噛み合わせではマドリー4枚に対しドルトムント3枚で、計算上中盤で数的優位に立てる。中盤で奪って前の2人に攻めきってもらうというシンプルなプランで戦えるようになったのだった。
中盤でのやり合いではさすがにドルトムントも負けてはおらず、低い位置でボールを動かすシャヒンを掴まえきれないタイミングでは良い展開もあったのは確か。
ただ、2枚を残して4-4で守ることと、そこから前線に任せる展望が見えているマドリーは、その形に確信を持てていた印象で、8人での守備は集中しており、さほど大きな破綻はなかったように思う。
同じように守っていても、その後にどう攻撃に繋げるかが有耶無耶だとこうはならない。中盤が出て行かなければ攻撃の形が出来ないのではないか、といったような迷いが出てきて、守備に緩さが生まれてしまうもの。
負傷もあって選択肢が限られていたマドリーは、ドルトムントの積極的な形により、かえって活路を見出すことになった。
■ベイル復活?
18分、カルバハルの後方からのクロスにベイルがボレーで合わせてマドリーが先制に成功。
簡単なボールではなかったが、ベイルがうまくあわせた。強く蹴ろうとせず、ミートしてコースを狙う蹴り方をしたことが良かった。このところ自信のなさが目立っていて、得てして強く蹴ろうとしてしまいがちな場面だったが、落ちついたプレー選択だった。
先制したことで、マドリーはショートカウンター狙いがより明確になった。この数試合、リーガでやられていたことをCLで自分達がやるといったような展開。
左サイドでベイルが走って、彼のクロスに中央でロナウドが合わせにいく形が最も速くゴールに迫れることになるので、そうした形が増えた。
この時、左サイドでのベイルのプレーはシンプルで良かった。どうせサイドで時間を作っても、さほど枚数が増えることはないし、返ってドルトムントのカウンターを受けるリスクを高めることになる。
であれば、スピードを生かしてサイドを突破して、ロナウドが入ってくるところを狙ってさっさとクロスを入れてしまった方が良い。2枚で崩してしまうことを前提にクロスを供給して、エリア内での場面を作ることができていた。
ベイルは左サイドがベストだろうし、右ではどうしても窮屈な切り返しが増えるので、左での起用は原点回帰で、彼を生かす最善というむきもあるだろう。
ただ、それは相手による。
先述の通り、リーガの中位以下が相手ではこれほど縦のスペースはないし、ボールを持つ展開になる中で、この試合のように可能性が限られるクロスばかり蹴ることを許容されるとは思えない。
また、チーム事情としても、ベンゼマが復帰した時に並びがこれでいいのかというところもある。簡単に左のベイルが解決策とも言い難いのだ。
もちろん、この試合でのプレーは彼にとっての突破口になり得る。重要な試合でこうしたパフォーマンスをできたということで、大きな問題である精神面にも良い影響がある。
前線のプレーヤーにとっては、ゴールは特に大事だ。それまでの悪い流れを一気に変えられる機会にもなる。
ただ、左サイド起用が全ての特効薬ではないのだということは、気に留めておく必要がある。様々な相手に対し、柔軟に対応できるようになってほしいというのが、彼への期待だ。
■追加点の後、迫られるも
50分に追加点。速いタイミングでベイルを左サイドへ走らせ、彼のグラウンダーのクロスにロナウドが中央であわせた。この試合の狙い通りの形でまんまと2点目を奪った。
54分にオーバメヤンのゴールで2-1とされると、ちょっとマドリーの守備がばたつく。ドルトムントは、ダフード、バイグルを投入、3バックの形で中盤を厚くするとともに、形を替えて更なる混乱を生じさせることを目論んだ。
ここで交代によることなく何とか凌いだことは、チームにとって重要だった。
ベンチに置いたプレーヤーを休ませる時間が長くなったし、曲りなりにも失点せずにやり過ごしたことで、ピッチに立っている面々にも自信がつく内容になった。
アウェイでこういう我慢が出来るのが、CLを連覇した実力と言えるかもしれない。
オーバメヤンのゴール後の勢いを押し留めると、76分にイスコとアセンシオを交代。交代策としては妥当。ベイルとルーカス・バスケスの交代だと前線の迫力が落ちる。ドルトムントの勢いを受ける一方になる恐れがあった。
イスコとアセンシオはこのところぱっとしていない。技術の高さで相手をかわしていて、それも見栄えがするので大きな問題とは捉えられていないが、2人とも球離れが悪くなっている。特にアセンシオは、低い位置ではさっさと周りを使ってアタッキングサードで勝負するキャラクターだったのに、低い位置でも労力を割くことになって個性が生きていない。疲労のためにプレーの判断が悪くなっているように見受けられる。
79分、前掛かりになったドルトムントの裏を突いてモドリッチのスルーパス。これを受けたロナウドがニアを撃ち抜くシュートを決めて3-1とし、概ね勝負を決めた。
2点目のあわせるゴールも今の彼の魅力だが、まだまだこうやって振りぬいてGKを上回れる。
2点差としてからは、ルーカス・バスケスの投入で守備意識を徹底し、セバージョスの投入で時間を使って試合を締めた。
■最後に
ドルトムントの出方もあったとはいえ、苦しい状況の中、苦手の地で勝ち点3を得たことのメリットは大きい。
チームを取り巻く状況を好転させ得る勝利だったといえる。
グループステージでも、トッテナムとともに2連勝。当初より三つ巴の戦いが予想されている状況で、アウェイのドルトムント戦を勝利したのは大きい。突破に向けて大きく近づけることになった。
週末のリーガはベルナベウでエスパニョールと対戦。ミッドウィークで作った良い流れを持続していきたい。