カンプノウで引き分け。惜しいとも言えるし、十分やったとも言える、評価の難しい結果となった。
■マドリーの先発メンバー
GK:ケイラー・ナバス
DF:ナチョ、バラン、セルヒオ・ラモス、マルセロ
MF:ベイル、カゼミロ、クロース、モドリッチ
46分:ロナウド→アセンシオ、68分:ナチョ→ルーカス・バスケス、84分:クロース→コバチッチ
ベイルの先発は予想していなかった。
■バルセロナの先発メンバー
GK:シュテーゲン
DF:セルジ・ロベルト、ピケ、ウムティティ、アルバ
FW:メッシ、スアレス
46分:コウチーニョ→セメド、58分:イニエスタ→パウリーニョ、89分:スアレス→アルカセル
お馴染みの面々。イニエスタは最後のマドリー戦。
■追い回して失敗、ブロックで受けて成功
序盤のマドリーはバルセロナのボールに対しプレス。
マドリーはこういうプレスをはめていけるチームではないし、ボールが出たところに寄せていく速さなので、これをかわすのはバルセロナにとっては簡単な仕事。かえってずれたスペースを使われることになっていた。
マドリーが走り回っていた10分頃までに速攻で失点し、落としてブロックを作るようになったその後から良い形で作ったブロックにボールを引っ掛けられるようになって、逆に速攻の形から追いつけたのは偶然ではない。
4-4のブロックで無理して追わず、相手が来たところを狙う守備が落ち着いてできるようになってから、今シーズンの良い時のプレーができるようになったのだった。
そこそこ攻める時間帯がある中で、右サイドに入ったベイルは存在感を示せず。
ロナウドがいなくなった後半は中央に進出し、良い形でボールを受けていたことを考えると、前半はロナウドとかぶらないよう気を遣ってサイドの役割をこなしていたのだろうと思われる。
が、それに留まっていては彼を起用するメリットはない。ポジションを争うバスケスなどとの大きな違いの1つは、アタッキングサードで流れを無視したゴールに関与できる点。
ただでさえ守備にも気を使いたいこの試合で、サイドでの仕事をさせたいならベイルを選ぶ理由はない。守備の不安定さを超えた攻撃でのメリットを示せないと彼の立場は変わらないし、チームとしても彼がいる意味がない。
良いアピールの機会だったが、前半は棒に振る格好になってしまった。
バルセロナも4-4-2の形で守備。
プレスがはまらなければバランスを取った形で守り、それをカンプノウでも淡々とできるのが今のバルセロナらしい。
1点ずつ取り合ってからは拮抗した試合展開に。同じ形で攻撃を受けるから、守備ブロックを作るのが遅れたり下手な奪われ方をしたりといったミスが出た方がやられるという状況となった。
バルセロナでは、コウチーニョもベイルと同様存在感が希薄。中盤のサイドで守備の仕事もあり、長所を生かして好きにやることは簡単ではない。
基盤が出来ているチームに組み込まれて、守備が免除されない立場となりつつ特別な価値を示すことは大変だ。状況の変化から中央に進出できるようになり、ゴールという目に見える結果を出したベイルは、まだ幸運な方だったかもしれない。
■前半の序盤を再現
前半のうちにセルジ・ロベルトが退場したバルセロナはコウチーニョを下げてセメドを右サイドバックに。
10人となったことで、マドリーが少し圧力をかけに出たが、それがバルセロナを利することになった。
前半の序盤同様、連動性のないプレスでは追い込めない。全体では1人少なくても、狭い局面では同数してプレスをかわし、できたスペースを使って速く攻めるバルセロナの形がまたできることになった。
52分のゴールはまたもそうした速い展開から。スアレスのバランへのプレーは明らかにファールだったが、見逃された。それよりも、ゴール前でメッシに良いように振り回されたことが悔やまれる。
全体としては抑えていた方だったが、ここぞというところでスペースを与えて決定的な仕事をされてしまった。
バルセロナはリードを得たので、今度は無理せず4-4で守る形に。イニエスタから守備しつつ飛び出していけるパウリーニョに代え、方向性は明確になった。
■ストライカー募集中
ここからマドリーの苦悩の時間が始まる。
ロナウドが負傷で下がっていたため、中央で最後の仕上げが出来るプレーヤーがいなくなった。ベンゼマはそういうタイプではないし、ベイルも常時ロナウドのように動くほど割り切ってプレーできていなかった。
簡単に言えば、みな中盤としてプレーしており、フォワードとしてプレーする者が誰もいなかったということだ。
CLで対戦したバイエルンも、マドリーに対しボールを持って良い形を作りつつ、ゴールを決める仕事をできなかった。
バイエルンにはフィニッシュが出来るレバンドフスキとミュラーがいて、マドリーが彼らを抑えきったと言えるが、この試合では、マドリーにはそうしたプレーヤーがそもそもいなかったのだから、同じように仕上げが出来ず攻撃が停滞するのは当然の結果だった。
ロナウドがいなくなったとたんにこうなる、というのは問題が根深い。今のチームには彼の代わりに点を取れるプレーヤーはいないことを意味するし、この大一番でそれをカバーしようというプレーヤーもいなかったということになるからだ。
中央で決定的な仕事を継続してできるプレーヤーがいないのなら、この夏はそういう補強をしなければならない。登録上フォワードはいても、ストライカーと言えるプレーヤーはベテランのロナウドのほかにいないのだから、何としてもそういう人材を確保する必要がある。
結果としてはベイルのゴラッソで追いついたが、数的優位に立ったはずの後半全てを使って決定機をほとんどつくれなかったことは、深刻に捉えた方が良いだろう。
■最後に
判定について言えば、双方に対して問題が多く、プレーのレベルに比べ、審判団がついていけていないような印象さえ受けてしまった。
どちらかが有利だったという問題ではなく、このような裁き方ではゲーム自体の魅力を減じてしまうことに危機感を持つべきではないだろうか。
個々の判定についてあれこれ語るのも1つの楽しみ方とはいえ、リーガの看板たるカードとしてそういう取り上げられ方ばかりになるのは残念だ。
引き分けで終わったのは妥当。
数的優位だったので勝ちたかったところではある。得点が計算できるプレーヤーがピッチにいれば、もっと圧力をかけられる展開になっただろうが、後半の内容では同点に追いつけたことだけで御の字とすべきだろう。
ロナウドの負傷は重いものではないのが何より。この後半を見て、彼を失うことを考えるのは辛い。
CL決勝まで、何事もなくシーズンが進むよう祈るしかない。