ミッドウィークに試合のなかったアトレティコに対し、アウェイで望外の3得点を挙げて勝利。CLへ向かう良い流れを作ることができた。
■マドリーの先発メンバー
GK:クルトワ
DF:カルバハル、バラン、セルヒオ・ラモス、レギロン
MF:カゼミロ;モドリッチ、クロース
57分:ビニシウス→ベイル、84分:クロース→セバージョス、89分:ベンゼマ→マリアーノ
現状ではこれがベストと思われる組み合わせ。
■アトレティコの先発メンバー
GK:オブラク
DF:アリアス、ゴディン、ヒメネス、リュカ
MF:トーマス、サウール;コレア、レマル
FW:グリースマン、モラタ
59分:レマル→ビトーロ、65分:コレア→ロドリ、71分:モラタ→カリニッチ
コケ、ジエゴ・コスタを欠いている状態。モラタが先発に入った。
■アトレティコの攻撃とマドリーの守備
アトレティコは4-4-2の形。以前ほどポゼッションを捨てずに攻撃を作るチームになっているようである。
その中心であるロドリがコンディション不良でベンチとなって、中央はトーマスとサウール。ここに対し、マドリーはクロースとモドリッチが突いて、組み立ての阻害を図っていた。彼らのプレー強度は素晴らしく、クロースは守りの改善を見せてくれたし、モドリッチも復調が本格的なものであることを印象付けた。
中央の組み立てが難しいと、サイドの使い方も単調になってしまうもの。
右サイドでのカルバハルとバスケスの守備は計算できるので安心。レマルに良いところを出させず、リュカにスペースを与えることもなかった。
左サイドのレギロンは若さを感じさせない落ち着いた守備で応対。コレアは、レマルよりはボールを持つことができていて、変化を付けようという意図も見えたが、レギロンの守備が破綻したという場面はほぼなかった。
また、高い位置を取るアリアスに対してはビニシウスが労を厭わず下がってついていた。これで数的同数を確保。昨シーズンまでは見られなかった両サイド同数での対応で、右サイドに比べれば不安はあったものの、押し込まれるようなこともなく、アトレティコのサイド攻撃に対抗できていた。
結果として、アトレティコにとってはジエゴ・コスタの不在が大きなダメージになったのではないか。
高い位置で基点を作れ、曖昧なボールに対しても戦えるし、クロスのターゲットにもなれる彼がいれば、マドリーの守備が彼の応対から混乱する可能性はあった。また、サイドではシンプルにクロスという選択もできただろう。
モラタは単発の裏抜けが主で、苦しいパスを収めるようなことはほぼなかったので、マドリーは中盤を中心として、対面する相手をそれぞれ捕まえることでアトレティコの攻撃を受け止めることができたといえる。
■プレスをかわす
マドリーのポゼッションに対しては、アトレティコは高い位置からのプレスを継続して行っていた。周囲との連携はまだまだとは言え、前線で追ってくれるモラタの長所もいきていた。
これに対し、マドリーもショートパスを繋いでプレス回避。狭いところに相手を寄せて抜けられれば、前線の速さを生かせるという見通しがあって、低い位置で多少苦しい場面であっても繋ごうという意図が見えた。
攻撃面でもレギロンの成長が見られた。彼にマルセロのような技術はないが、味方との距離感が良く、早い判断でボールを捌いてアトレティコの守備の一歩先に。
経験が浅い彼が狙われていたのははっきりしていたが、寄せてきたところを寸前でかわし続けていたからこそ、被ファール数が増えることになった。
このレベルで攻守に渡り堅実に役割をこなせたことでチームに与えるものは大きい。現時点でマルセロをベンチに置いているソラーリの判断に説得力を持たせるプレー内容だった。
■左サイド
マドリーの攻撃の主力は左サイドで、アトレティコのプレスを回避できたら、アリアスの後ろの広いスペースを使う算段だった。
アトレティコとしても、こうなることは織り込み済みで攻撃を設計していたと考えるのが自然で、攻撃後の守備意識として、この左サイドのスペースはヒメネス、ゴディンが素早く埋めるべく動いていた。
アトレティコとしては、ビニシウスに縦に行かれなければ攻撃を遅らせることができる。
ビニシウスが次に狙うのは、先日の記事でも触れたとおり、1つ中のスペースに入ってくるベンゼマ、レギロンといった面々へのパスで、ここをケアすれば下げる他なくなって、左サイドの攻撃は頓挫するだろう、というのが狙い。
このアトレティコの狙いがはまったのが同点ゴールの場面の奪い方で、ビニシウスが対面するヒメネスを上回ったのが勝ち越しのペナルティを得た場面ということ。
ビニシウスがアトレティコの両センターバックを明らかに上回っていたかというととうではなく、抜けるかどうかという観点で言えば抑えられていたのは確か。それでも前を向いて仕掛けられる怖さは、こういうところにある。
技術があることは大前提だが、弱気になることなくボールを受けて仕掛け続けたビニシウスの姿勢が光った2点目だった。
もちろん先制点の効果も見逃せない。
アトレティコが先制していれば、アリアスがあれほど高い位置を取り続けることもなく、ビニシウスのスペースは限定されていたかもしれないし、アトレティコが中央で苦労して攻撃を作る必要もなくなるから、守備が空回りしていたのはマドリーの側になっていたかもしれない。
セットプレーでアトレティコの守備のミスをつけ、フリーになったカゼミロが決めてくれたことで、アトレティコに難しい形を強いることができたからこそその後の展開があるのだ。
■あっさり交代
最初の交代であっさりビニシウスを下げてベイルを使ったソラーリの思い切りは見事。
元々決まっていたタイミングでの交代なのだろうが、今後の日程は考えつつ、当然この試合も大事なのに、主な攻撃ルートになっていたビニシウスを休ませる判断はなかなかできることではない。
こうした判断の肝の据わりよう、交代のカードをさっさと切っていく決断は、最近成功した監督であるアンチェロッティ、ジダンにはなかったもの。ソラーリのやり方が垣間見えるところだ。
しかも、入ったベイルが追加点を挙げてしまうのだから、言うことなし。
流れが良いといってしまえばそれまでだが、その流れを作ったのはソラーリだ。ここまではローテーションしながらうまく士気を高めつつ結果を出している。
CL前にこのような状態にまでなるとは、少し前まで想像もできなかった。
アトレティコはレマルを諦めてビトーロを入れることでサイドの改善を図っていた。
最初の交代がこのポイントというところに、陣容の苦しさが見える。中央の劣勢を押し返すことでサイドも使いやすくできればよかったのだが、恐らくはロドリのプレー時間を限定せざるを得なかったのだろう。ロドリ投入は残り30分を切ってからのことであった。
マドリーの守備は大きく破綻することなく、逆に序盤からプレスをかけていたアトレティコが先にペースダウン。マドリーはポゼッションを安定させる手を打ち、バランスを整えるだけで良かった。
アトレティコはプレスでコースを限定できず、ファールも増えて最終的にはトーマスが退場。この時点で勝負は大方決まった。
■最後に
モラタのゴールが認められていれば、後半の雰囲気は全く違うものになっていただろう。
単発とはいえ、マドリーにもオフサイドを取れない怖さがあった。グリースマンのゴールと合わせ2回やられたと捉え、最終ラインの意思統一を図ってほしいところだ。
ただ、総じて試合の流れを掌握していたのはマドリー。アトレティコの攻撃に自由を与えることはほとんどなく、強みである守備を最後までいなしつづけた。
バルセロナ、アトレティコとのアウェイの連戦を、1勝1分けで乗り切れたのは結果としても素晴らしいし、チームに与える影響も大きい。
派手さはないが、しっかり走って結果をつかむチームになりつつあると言える。まだタイトルを意識するのは難しいが、1つずつ着実に結果を積み重ねてほしい。
ミッドウィークはCL、アウェイでのアヤックス戦。週末はベルナベウにジローナを迎える。